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派遣の男性4割強・女性の1/3割強は「正規が無いので仕方なく」

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 建設業でも非正規就業者は多い。その選択は果たして

就業形態としての非正規社員に関する注目が高まる中、当事者自身の就労意識に絡み、正社員として就業を希望したが、「見合う求人が無く仕方なく」との事例が多々あると指摘されている。実際問題として、そのパターンはどれほどの割合なのか、総務省統計局発表の労働力調査の結果をもとに、就業形態の詳細別で確認する。

次に示すのは非正規社員(非正規職員・従業員)として現在就業している人において、なぜその立場にあるのか、主な理由(つまり一番の理由)を挙げてもらった結果。選択肢「自分の都合の良い時間に働きたい」「家計の補助・学費などを得たい」「家事・育児・介護などと両立しやすい」「通勤時間が短い」「専門的な技能などを活かせる」「正規の職員・従業員の仕事が無い」「その他」のうち、本来は非正規での就業を望んでいなかった(≒正規での就業を望んでいた)、つまり自分では望まずに非正規就業をしていると判断できる「正規の職員・従業員の仕事が無い」は、男性で26.9%、女性で12.3%。

↑ 現職の雇用形態についた主な理由(非正規職員・従業員)(2015年)(理由明確者限定)
↑ 現職の雇用形態についた主な理由(非正規職員・従業員)(2015年)(理由明確者限定)

この「望まずに非正規」について、非正規の就業状態の詳細によって大きな違いが生じているのでは、との意見もある。そこで非正規の就業状態につき、「パート」「アルバイト」「労働者派遣事業者の派遣社員」「契約社員」「嘱託」「その他」に細分化し、それぞれについて各上記選択肢から「現職就業の主な理由」を挙げてもらい、そのうち「正規の職員・従業員の仕事が無い」の値を算出したのが次のグラフ。男女で就業状況に大きな違いがあるため、性別の仕切り分けも行う。

↑ 現職の雇用形態についた主な理由(非正規職員・従業員)(「正規の職員・従業員の仕事がないから」)(2015年)(詳細就業形態別)(万人)
↑ 現職の雇用形態についた主な理由(非正規職員・従業員)(「正規の職員・従業員の仕事がないから」)(2015年)(詳細就業形態別)(万人)
↑ 現職の雇用形態についた主な理由(非正規職員・従業員)(「正規の職員・従業員の仕事がないから」)(2015年)(詳細就業形態別)(労働力調査)
↑ 現職の雇用形態についた主な理由(非正規職員・従業員)(「正規の職員・従業員の仕事がないから」)(2015年)(詳細就業形態別)(労働力調査)

男女共に主な理由として「望まずに非正規」の値が高いのは、派遣や契約社員。それぞれ3割前後、男性派遣社員に限れば5割に近い値。他方、パートやアルバイトでは大よそ男性が2割前後、女性は1割足らず。

元々女性よりも男性の方が「正規の職員・従業員の仕事が無い」の回答率が高いため、多くの就業状態で男性の方が高い値を示している。もっとも非正規就業者人口そのものは女性がはるかに上なため、人数で見るとパートや派遣社員などで女性の方が上との結果が出る。特にパートの女性は73万人が「望まずに非正規」な状態にある。

また今件「望まずに非正規」以外は望んで選択した具体的内容なため、100%からこの値を引いた結果が「望んで非正規」となる(「何となく非正規」「特に意図は無く非正規」も該当しうるが、少なくとも「望まずに非正規」では無い)。女性のパートやアルバイトは9割、男性は7割から8割が望んで非正規として働いていることになる。一方派遣社員は男性が5割強、女性は7割近く、契約社員では7割程度に留まっている。

今件で注意しなければならないのは、精査した選択肢「正規の職員・従業員の仕事がないから」にはいくつかの意味を内包していること。具体的には「当事者は正規社員として就業できる技能がある。しかし適切な該当求人が無い」、そして「当事者の技能ではレベルが届かず、就業可能な正規求人が無い」の2パターン。さらに当事者自身が自分の技能に関して正しく認識している場合もあれば、認識が出来ていない可能性も否定はできない。

仮に非正規の求人が正規にシフトしたとしても、今回スポットライトを当てた「望まずに非正規」な人すべてがその枠に収まる、就業ラインに達しているとは限らない。その他の希望条件とも合わせ、就業のマッチングは一筋縄ではいかないのが実情ではある。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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