新聞は信頼できるか、役割は大きいか、諸国の人に聞いてみました
メディアの多様化で情報配信の独占性・希少性が薄れ、従来型のメディアに対する価値観が揺らぎつつある。主要メディアの一つである新聞はどのような印象を持たれているのか。主要国の一般人の感想を、新聞通信調査会が2016年4月に発表した「諸外国における対日メディア世論調査(2016年実施)」(アメリカ合衆国、イギリス、フランス、中国、韓国、タイに対し、2016年1月から2月に実施。アメリカ合衆国・イギリス・フランス・韓国は電話調査、タイと中国では面接調査。調査地域は中国・タイは都市圏、それ以外は全国。回収サンプル数は各国約1000件)の内容から確認する。
インターネットとそれを扱う機器の普及に伴い、利用価値や相対的存在意義の変質の中にある新聞。調査対象国ではどれほどの信頼を得ているのだろうか。信頼なしをゼロ点、普通を50点、全幅の信頼を寄せている認識ならば100点とし、自由採点をしてもらった上でその平均点を算出した結果が次のグラフ。今調査では日本は対象としていないが、2015年9月に同調査会によって実施された類似形式による「メディアに関する全国世論調査」の結果も併記する(調査方法が異なるので参考値以上の意味は無い)。
どのような状態が「普通」かは回答者の価値観に寄るところが大きいが、すべての国で現状では普通以上の信頼は得ていることになる。もっとも欧米ではいくぶん信頼度は低め、アジア、特に日本では高めの値が出ている。新聞など従来型メディアに対する日本の信服感はかねてから知られているところであり、それが裏付けられた形。
「そこそこ、普通には信頼できる」との判断が成されている新聞だが、今後インターネットの普及がさらに進むに連れて、役割が縮小化する懸念がある。むしろ実際にはその過程にあると評して良い。そのような状況が今後さらに進行していくのか、それとも今まで通り新聞は報道に大きな役割を果たし続けるのか、新聞の未来について思うところを述べてもらった結果が次のグラフ。
新聞への信頼度が一番低いイギリスでは、役割の縮小を唱える人が一番少ない。一方で維持を回答する人もタイに続く形で少なく、「どちらともいえない」との回答が一番多い割合を示している。他国と比べて新聞への想いは複雑なようだ。「もっとしっかりしてくれ」との内面の想いがにじみ出ているようでもある。
役割は縮小化するとの意見はアメリカ合衆国やタイ、そして中国で7割前後、ついで韓国とフランスが約6割で続いている。ただしフランス・韓国では役割の維持を主張する意見も約4割おり、新聞の権威継続を想う人が一定数居ることが分かる。
日本はといえば役割縮小の回答率はイギリスに近いものの、維持の回答率はフランスや韓国すら超え、今回調査の対象国では(参考値ながら)トップの立ち位置にある。また、役割縮小の意見で強い主張の回答率が低いのも特徴的。調査手法が異なり一概には比較できないものの、新聞に対する信奉心の強い日本らしい実態には違いない。
もっとも、信頼度が低いイギリスですら、3割近くは今後も新聞が今まで通りの役割を果たすと回答している。実売数が減少しているとはいえ、新聞に求められていること、責務はこれまで同様、世界共通で大きなものに違いない。
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