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携帯電話の買い替え年数は何年ぐらいだろうか

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 多様な新機種が並ぶ携帯ショップ。買替意欲をかきたてられるが

買替年数は約4年

携帯電話(従来型携帯電話とスマートフォン双方)の進化・多様化は月単位で進み、相次ぐ新機種の登場は利用者の購入・買い替え意欲をかき立てさせる。従来型携帯電話からスマートフォンへのシフトに代表されるように、ライフスタイルをも大きく変えさせるレベルの変化を見せる動きも起きている。そこで内閣府が2016年4月に発表した消費動向調査の2016年3月実施分の調査結果を基に、「携帯電話の買い替え年数」の現状を確認していくことにする。

今件確認するのは「対象品目を回答年度(今回の場合は2015年4月~2016年3月)に買い替えをしていた場合、買い替え前の商品はどれだけの期間使っていたか」を尋ねた結果。つまり直近の買い替え実施者における「買い替えまでの年数」が示される。新規に購入した場合や、買い替えが該当時期で無かった場合は回答に加わらない。

次の値は従来型携帯電話以外にスマートフォンも含めた携帯電話全般の買い替え年数。世帯区分別では「単身世帯」と「二人以上世帯」、そしてそれを合わせた「総世帯」の3つが用意されているが、長期時期系列データが保存されているのは「二人以上世帯」(以前は「一般世帯」と表記されていた)のみ。まずは「二人以上世帯」における、買い替え年数推移。

↑ 携帯電話買い替え年数推移(年、二人以上世帯)(~2016年)
↑ 携帯電話買い替え年数推移(年、二人以上世帯)(~2016年)

長らく買い替え年数が上昇していた携帯電話だが、2012年にはじめて値が前年比で減少する動きを見せた。2013年でも減少を続けたが、これは従来型携帯電話が十分使用に耐えられる(老朽化していない)状況でも、スマートフォンへの買い替えを行う人が増えた結果によるもの。しかし2014年以降はこの減少の動きから転じて再び伸びはじめ、直近の2016年もその動きは継続し、3.8年へと伸びた。従来型携帯電話からスマートフォンへの前倒し的な買い替え需要は終わりを告げたようだ。

これを単身世帯の動向と重ねてグラフ化したのが次の図。

↑ 携帯電話買い替え年数推移(年、単身/二人以上世帯)(~2016年)
↑ 携帯電話買い替え年数推移(年、単身/二人以上世帯)(~2016年)

「単身世帯」の方が、わずかではあるが買い替え年数は長い。家族割引制度などが使えず割高となりがち、そして本体買い替えの際の出費がより「懐に痛い」単身世帯では、買い替えの踏ん切りがつきにくい、長期間使い続けようとする意図が働いたものと考えられる。最近では2012年で逆転現象が起きているが、これは多分にイレギュラーとしての動きだったものと思われる。恐らくはスマートフォンへの切り替え衝動は「単身世帯」の方が上だったのだろう。

経年変化を確認

次のグラフは「二人以上世帯」「単身世帯」それぞれの属性における、過去9年間の買い替え年数推移をまとめたもの。

↑ 携帯電話買い替え年数推移(年、二人以上世帯)(属性別)(~2016年)
↑ 携帯電話買い替え年数推移(年、二人以上世帯)(属性別)(~2016年)
↑ 携帯電話買い替え年数推移(年、単身世帯)(属性別)(~2016年)
↑ 携帯電話買い替え年数推移(年、単身世帯)(属性別)(~2016年)

「二人以上世帯」ではほぼ一様に買い替え年数は長期化していたこと、2012年から2013年にかけて発生した時期短縮の動きが、性別・世代は関係無く生じたことが分かる。iPhoneの最新機種をはじめとしたスマートフォンへの切り替えの加速が、あらゆる世代、特に急激な短縮ぶりを見せた若年層で起きたようだ。ただし2014年以降は再び男女・世代を問わずに長期化の動きが見られる。前倒し派のスマートフォン購入がほぼ終わり、従来型携帯電話を頑なに使いつつけてきた人たちのシフトが始まったようにみられる。

一方「単身世帯」ではややばらつきがあるものの、女性と60歳以上で少しずつ伸び、それ以外の属性では横ばいに推移している。少なくとも「二人以上世帯」のような傾向だった動きは確認できない。

買替をした理由は?

最後に「買い替え理由」。2008~2009年では比較的高かった「上位品目への買い替え」が2010年に落ち込み、2011年以降は再び増加の一途をたどっていた。そして2014年以降はその動きが転じ、「上位品目」が減り、「故障」「その他」が増加する動きを示している。

↑ 携帯電話買い替え理由(二人以上世帯)(~2016年)
↑ 携帯電話買い替え理由(二人以上世帯)(~2016年)
↑ 携帯電話買い替え理由(単身世帯)(~2016年)
↑ 携帯電話買い替え理由(単身世帯)(~2016年)

元々携帯電話は流行を追い求められやすい、そして技術進歩が加速度的なことで、短期間で高性能な機種が続々発売される傾向があるため、「上位品目への買い替え」の回答率が高い。2008~2009年の「上位品目」の値の高さは主に「FOMAの全面展開」と「iPhoneの日本国内展開開始」、そして2011年以降は2011年10月に発売されたiPhone 4S、そして2012年9月21日に発売のiPhone 5によるところが大きい。2013年までは年々「上位品目」を理由に挙げる人が増加したが、2014年以降は低下の動きを見せる。従来型からスマートフォンへの買い替えを強く求める層の前倒し需要の消化が進み、通常のパターンに戻ってきたと解釈すれば道理は通る。つまり、買い替えブームが過ぎた次第。今件はあくまでも「買い替えをした人における」理由比率であることに注意しなければならない。

2016年に限ると二人以上世帯・単身世帯共に「その他」の理由が増加している。理由は多々考えられるが、上位品目でも無く故障でも無く住所変更でも無いとなると、「ランニングコストの低い機種への乗り換え」がまず第一に想起される。最近はガラホや格安スマホなど、より低コストで利用できるかに重点を置いた新機種・スタイルも注目されていることを合わせ考えると、納得のいく推論ではある。

従来型携帯電話からスマートフォンへの買い替えは、携帯電話の買い替えにおいては大きな後押し(多分に前倒しの意味での)となる。しかしこの数年継続してきた買い替え期間の短縮や買い替え理由の「上位品目」の増加の動きに2014年にブレーキがかかったのが確認できたことから、これまで従来型携帯電話を利用してスマートフォンに一刻も早く買い替えたい人たちの買い替え機運は終了したように見える。

今後は数年前の値に近い形に戻り、大部分が古いスマートフォンから最新型のスマートフォンへの買い替えとの形に移行するのだろう。直上でも言及している、「運用コストの削減を目的にした買い替え」がどこまで浸透するかに注目したいところだ。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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