SNSなどのネット上のやりとりでの束縛感、子供達の心境は
高校2年生は2割が「メッセージにはすぐに返事」と考えている
昔は電子メール疲れ、そしてmixi疲れからFacebook疲れ、LINE疲れと、主に話題に登る対象となるサービスの名前は変わっていくが、インターネットを用いたコミュニケーションでは、これまでのツールと同じような対応がされているとの錯覚による、気疲れが問題視されている。メッセージを送る側は相手が24時間フル対応するものと思い込み、すぐに返事が来ないと不安になり、あるいは「返事をさぼっている」と怒りを覚えるようになる。逆に受信を確認すると、すぐに返事をしなければならないといった強迫観念を覚えてしまう。今回は少年教育振興機構が2016年5月に発表した「青少年の体験活動等に関する実態調査」(2015年2月から3月にかけて各学校(小学校は1年から6年まで各100校ずつ、中学校は2年生対象に150校、高等学校は2年生対象に150校)への調査票発送・返信による回収方式で実施。有効回答数は学校数が851、子供の回収数が18031件、保護者が15854件)報告書の結果をもとに、小中高校生におけるインターネットを利用したコミュニケーションサービスにおける、やり取り上の義務感について確認していく。
次に示すのはメールやSNS(ソーシャルメディア)経由でメッセージなどが来たら、すぐに返信をしなければならないと思うか否かについて。パソコンも携帯電話、スマートフォンも利用せず、インターネットサービスそのものを使っていない、あるいは使っていても電子メールやソーシャルメディアを利用していない人は受信することは無いので、当然「まったく無い」となる。つまりその類のサービスの利用をしているか否かも、多分に回答には影響する。
「ほとんど無い」、表現を変えればゼロでは無い人まで合わせると、歳が上になるほど割合は増加していく。ただし高頻度で思うケースに遭遇する、切迫感を覚えている人(赤系統の色合いの回答項目)は中学2年がピークで、高校生になると逆に減る。スマートフォンの所有率など利用性向は高まるものの、精神的にも成長してある程度の割り切り感を会得したり、即時返答があまり意味の無いものだということを経験則から学んだのだろう。
これを男女別に仕切り分けしたのが次のグラフ。
中学生までは男子よりも女子の方が「返事はすぐに」との考えが強い。しかし高校になると男女間の立ち位置は逆転し、むしろ男子の方が回答率は高くなる。ソーシャルメディアの利用率は女子の方が高いことから、同じような利用スタイルならば女子の方が高くなるのが道理なのだが、結果は逆。女子の方が割り切りを早く覚えているのかもしれない。
「返事がすぐこないと不安」高校2年生では2割が同意
メッセージの受信があれば、当然送信する側もある。次に示すのは電子メールやソーシャルメディア経由でメッセージを送った後に、相手から返事がすぐに来ないと不安が生じるか否かについて。相手への端末、アカウントへの着信が原則ほぼリアルタイムであることから、まるで目の前に相手がいるかのような、対面での会話のような反応を示す、すぐに相手がそれを読み解き、必ず返事をするものと錯覚してしまうことから生じる不安。もしかしたら相手は自分を無視しているのではないかとすら思いこむ。
「すぐに返信しなければ」と大した違いは無い。ただしピークは中2ではなくて高校2年。高校2年では18.1%の人が「すぐに返事がないと不安」とそれなり以上に感じている。
男女別に見ると、男子において中2から高2への上昇度合いが大きく、高2では「すぐに返事がないと不安」にそれなり以上の不安を覚えている人の割合は、女子より多くなっている。これも「返事はすぐにしなければ」と同じパターン。また、男子の上昇度合いが大きいことが、ピークを中2ではなく高2になってしまう要因のようだ。
電子メールもソーシャルメディアも相手に送信をしても、相手が即時に読み、さらにすぐに返事を返してくれるわけでは無い。メッセージのやりとりである以上、送り手はすぐに受け手になりうるわけで、理屈の上では相手の事情は痛いほどわかるはずなのだが、それでも精神的にある程度成熟し、さらに利用経験を重ねないと、その常識、暗黙の了解の部分を理解納得し、割り切ることは難しい。大人ですらその理屈が理解できない人は多分に居るのだから。
「返事はすぐにしなければ」「すぐに返事がないと不安」双方とも、ソーシャルメディアなどインターネット上のコミュニケーションにおいて、陥りやすい誤解から生じる心理上の負担に違いない。インターネットの利用に関する啓蒙の中で、コミュニケーションの際には焦る必要は無く、不安を覚える必要もないことも教え説くべきではないだろうか。
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