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「対戦ゲームなどネット利用時には実名利用は危険」を子供に納得してもらう方法

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 魔法を唱える際に必要なのは相手の……

インターネットを使ったチャットや掲示板の書き込み、対戦ゲームでのやりとりなど、目の前に当人が居ないどころか、身も知らずの人との意志疎通、交流が当たり前となった昨今。言葉を交わし合うことに対する概念の急速な変化は、人々の啓蒙・教育体制などの対応が追い付かない状態にある。さらに技術が加速度的に進化・進歩しているため、細かいルール作りをしてもすぐにその想定を超えた新しい機会が生まれ、使われるようになる。

このような状況では、特に子供達に対して、プライバシーやセキュリティの教育・啓蒙が立ち遅れている。教える側となる大人ですら把握しきれていないから無理もないのだが。さらに子供達は大人よりもネットに長い時間接する機会を持ち、好奇心は旺盛、そして世間一般の常識そのものを習得しきれていないので、大人が想定しえないトラブルを引き起こす、巻き込まれる可能性を有している。常識そのものを会得していないがため、「そのようなことをするわけがない」との大人の常識が通用しないのが、子供達なのだから。

インターネットを用いた対戦ゲームでのやり取りに限らず、コミュニケーションやチャットサービス、各種掲示板、さらにはブログなども合わせ、職業上実名を挙げた方がメリットがあり、デメリットが少ない人「以外」は、原則として仮名やハンドルネーム(ペンネーム)を利用することが好まれる。実名主義の人はさておくとしても、ストーキングやいたずらのリスクがあるからに他ならない。

実名をネット上に掲載しただけでも、他の条件と合わせて精査され、個人を特定される可能性はある。昨今では便利なツールやサービスが多数無料ウェブ上から使えるため、それこそデータマイニング的な事ができてしまう。そして特定されると、不特定多数の匿名の人達から、何らかの嫌がらせを受ける可能性が出てくる。

一方で、インターネットの仕組みや危険性はもとより、他人とのやりとりにおけるトラブルへの経験や知識が浅い子供達においては、インターネット上でのやりとりを、近所の友達との対面によるおしゃべりと同じ感覚で認識してしまい、つい実名をはじめとした個人情報を不特定多数にさらしてしまう。

昨年総務省が発表した「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への人々の意識に関する調査研究」(2015年3月にインターネット経由で実施。調査対象母集団は10歳以上の男女で合計2000人。男女比は1対1。世代構成比は10・20代と30代と40代と50代と60代以上で均等割り当て。都市規模別で仕切り分けをし、偏りが無い配慮がしてある)によると、LINEやFacebook、ツイッターなどの各ソーシャルメディアでは、大よそ若年層の方が実名で利用する割合が大きい。

↑ 主要ソーシャルメディア利用率(実名利用者)(過去1年間、2015年、インターネット利用者限定、複数回答)(年齢階層別)
↑ 主要ソーシャルメディア利用率(実名利用者)(過去1年間、2015年、インターネット利用者限定、複数回答)(年齢階層別)

幼いころからインターネットを用いたコミュニケーションに慣れ親しんでいることから、実名利用のリスクを認識していない、多少のリスクはメリットと照らし合わせて我慢できるとの認識なのだろう(ツイッターでは年齢階層別の差異があまり出ていないが、これは研究者や評論家など便宜上・職務上実名を出しても問題の無い人が多く利用しているのが一因)。

実名をはじめ、プライベートな情報はうかつに流すべきでは無い。それがクローズドなサービスの中であっても。やりとりをした相手が第三者に漏えいしてしまう可能性はゼロではないから。これはインターネットの使い方に関する勉強、啓蒙においては基本中の基本。上記で挙げたプライバシー関連の情報が容易に精査できるのはもちろんだが、蓄積性の特性から、一度暴露された情報が長きに渡り広まり続ける可能性も否定できない。

しかしこれは、人生経験が少ない、ましてや今まで生きてきた期間における、インターネットに係わる期間の比率が極めて高い子供には理解しがたい話に違いない。相手はお友達なのに何で教えちゃいけないの、といった感覚。むしろ大人の教えに反発すら覚えるかもしれない。この子供の疑問や反発に、子供の理解の範ちゅうで納得してもらう、何かよい説明方法は無いものか。

そこで用いられるのが、今件の提言。

「対戦ゲームのチャットをはじめとした、インターネット上のコミュニケーションで実名を知られると、敵にその名前を特定され、魔法で呪われてしまうから」

物語や漫画、アニメなどに登場する魔法ではしばしば、相手の実名などを用いた呪文が存在する。西遊記に登場する金角・銀角の持つひょうたんも、実名を知られると取り込まれてしまう。漫画やアニメで知られる「デスノート」も、相手の本名が分からないと使えない。

創作においては、実名は個人を特定する観点で、非常に重要な意味を持つ。これは容易に理解ができる。「ネットの向こうにいるかもしれない『敵』の攻撃を防ぐため、実名などの個人情報は出しちゃいけないんだよ」との説得は、子供にも十分理解でき、納得もしてもらえる話に違いない。

それに「実名を知られると呪われる」との説明は、あながち的外れでも無い。呪う側が悪意を持つ人、呪う行為が悪行と読みかえれば、そのまま当てはまることになるからだ。

子供への啓蒙、教示には、子供の世界・認識で理解できる、納得のいく切り口で行う必要があるのだろう。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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