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任天堂のゲーム機向けソフトの販売動向のこれまでと今を探る(2016年版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 今でもゲーム機で遊ぶ人は多い。任天堂のハード向けソフトの動向は。

対応ソフトのタイトル数の推移を確認

スマホの浸透でデジタルゲーム端末の主役を奪われそうなゲーム専用機界隈において、今なお世界的権威と実力と知名度を有する任天堂。その実情を同社各ハード向けのソフトのタイトル数から探る。

まずはタイトル数動向の年単位での動き。2001年3月末期(2000年4月から2001年3月、以下同)以降の年次販売タイトル数について、任天堂自社のみの本数と、任天堂発に加えて他社(OEM:Original Equipment Manufacturer。他社ブランドの製品を製造。この場合は任天堂以外の会社製として、任天堂ハード向けタイトルを発売すること)まで含めた本数を見ていく。なお今回記事のグラフでは、基本的に青系統が携帯ゲーム機、赤系統が据置型ゲーム機。色が薄いほど昔の、濃いほど新しいハード(向けソフト)を指している。

↑ 任天堂・発売ソフトタイトル数推移(自社のみ)(日本国内)
↑ 任天堂・発売ソフトタイトル数推移(自社のみ)(日本国内)
↑ 任天堂・発売ソフトタイトル数推移(年次)(自社+OEM)(日本国内)
↑ 任天堂・発売ソフトタイトル数推移(年次)(自社+OEM)(日本国内)

「色々と」難儀したことが推測されるゲームキューブ向けに、任天堂は一定数ソフトを供給し続けていた。それがWiiの登場でぴたりと止み、以降はWii向けタイトルが一定数出され続けている。この世代交代はニンテンドウ64からゲームキューブに移行する際にも起きているので、驚くにはあたらない。

さらにこの世代交代は、2014年で携帯ゲーム機・据え置き型ゲーム機双方で起きている。前者はDSから3DSへの、後者はWiiからWii Uへの完全な移行である。任天堂のみの年間販売総タイトル数はこの数年大きな変化を示していないことから、任天堂は半ば総力戦で3DSとWii Uの活性化に望んでいることが分かる。

一方携帯ゲーム機向けでは2006年3月末期以降3年間に渡り、大規模なニンテンドーDS向け攻勢をかけ、ハードの躍進に一役買ったことが確認できる。

↑ 任天堂・国内ハード販売動向(年次、万台)(日本国内)
↑ 任天堂・国内ハード販売動向(年次、万台)(日本国内)

任天堂発タイトルの躍進で大きくハード数が伸び、それに伴い2007年3月末期から他社OEMタイトルも伸び、全体数においてもニンテンドーDS向けタイトルが飛躍的に伸びて行く。「任天堂発」のタイトル数動向と、「全体」のタイトル数動向では1年から2年のずれがあり、「任天堂タイトルでハード数の底上げを行い市場を創り、他社が大きな市場でソフト展開を楽しむ」形に、ニンテンドーDSははまったことになる。

一方、似たような「3年プッシュ」の動きが3DSでも確認できる。だが、肝心のタイトル数がDSの時と比べて約半分の11本から12本/年に留まっている。他にも要因は多々あるが、この「任天堂の後方支援的タイトル」数の少なさが、3DSがDSほどには伸びなかった一因として考えられる。ただし直近の2016年3月末期では、単なる偶然かあるいは市場に活力を入れるためか、任天堂発のタイトル数は本体発売後では最大の15本を計上している。これがラストスパートなのか、起死回生のための策の結果によるものなのかは、来年以降の動向で明らかになるはず(とはいえ2017年には次世代機NXの発売が予定されているため、前者の可能性が高いのだが)。

任天堂オリジナル作の比率は

任天堂のソフト開発の思惑に係わる動きが良く分かるのが、毎年の販売タイトル数について、任天堂発の割合を計算した次のグラフ。例えば2016年3月末期のニンテンドー3DSにおける自社タイトル数比率は16.0%。この期に発売された3DS向けタイトル94本のうち、任天堂発は15本なので、15÷94=16.0%となる。

↑ 任天堂・発売ソフトタイトル数における自社タイトル数比率(年次)(日本国内)
↑ 任天堂・発売ソフトタイトル数における自社タイトル数比率(年次)(日本国内)

このグラフからはいくつかの法則が見受けられる。つまり「赤(据置型)が高め、青(携帯型)が低め」「ハードの発売当初は高く、じきに下がり、最後にまた上がる」。それぞれ、

・「赤(据置型)が高め、青(携帯型)が低め」

据置型ゲームは必要リソースの面で開発ハードルが高く、参入他社数・タイトル数が少なめになり、どうしても任天堂発タイトルの比率が上がってしまう。

・「ハードの発売当初は高く、じきに下がり、最後にまた上がる」

ハードの発売当初は任天堂発のタイトルを多めに出して他社タイトルの準備期間を創ると共に、ハード市場の拡大を目論み、他社参入がしやすいようにする。ハードの寿命が近付くと最後のテコ入れを行う(&他社は腰が引ける)

と読めば道理は通る。

この規則性に従えば、ニンテンドーDSは実質的に商品寿命は終わったことになる。DSはすでに後継機種の3DSが発売中のため、ソフト開発上の世代交代がなされても何ら不思議では無い。また、同様のパターンがWiiとWii Uとの間でも同時期に起きている。

前世代機とだぶる形で任天堂が双方機種にタイトルを出すのは長くて3年(ゲームボーイアドバンスとニンテンドーDSが良い事例となる)。この法則が継承され、DSから3DSへのバトンタッチは行われた。一方WiiとWii Uとの間では重複期間は正味1年しかない。それだけWii Uへのテコ入れが前倒しされたことを意味する。

また、現行機のWii Uとニンテンドー3DSは共に、末期における自社タイトル比率上昇の場面に突入していると解釈できる。2017年発売予定の次世代機NXに向けた動きを、ここからも読み取ることが可能となる。

現在進行年度(2017年3月末期)における3DSの世界全体における年間販売目標台数は500万台、Wii Uは80万台。前年度の販売実績はそれぞれ679万台・326万台であり、任天堂側では十分達成できる値だとしている。しかしタイトルの販売本数はこの数年漸減傾向にあり、競合となりうるスマートフォンの浸透はさらに進んでいる。状況は決して穏やかなものではない。

遊びの本質すら変わりつつある昨今において、現行世代機たるWii Uと3DSがどのような世界を提案し、見せてくれるのか。来年発売予定のNXはいかなるハードで、どれほどまでのサプライズを示し魅力を提供させてくれるのか。これから数年の間、任天堂にとってはまさに正念場となるに違いない。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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