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現在48%、携帯のみの世帯が間もなく半数の米国電話普及状況

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ アメリカ合衆国の一般世帯では固定電話のみは5.8%

固定電話そのものが減る動き

車載電話から小型化発展した携帯電話は、インターネットアクセス機能の実装で情報端末としての役割をも果たすようになり、それを足掛かりに多種多様なツールとしての併用もなされることで、今や日常生活には欠かせない存在となりつつある。アメリカ合衆国における世帯ベースでの普及状況を、アメリカ疾病対策予防センター(The U.S. Centers for Disease Control and Prevention、CDC)の公開資料から確認する。現状では2016年5月11日付で発表された2015年下半期の公開値が最新であり、それを反映した上で検証を行う。

まず最初は、18歳以上の大人に「自分が所属する世帯に関する電話環境」を尋ねたものの結果。「携帯のみ」に「固定電話のみ」「固定電話と携帯電話双方あり」の3つの選択肢があり、その動向を重ねたのが次のグラフ。ちなみに「携帯電話」とは旧来の自動車搭載型の小型携帯式電話、各種携帯型電話(従来型携帯電話、スマートフォンなど)が該当する。

↑ 自分が所属する世帯に関する電話環境主要選択肢回答率(米、大人(18歳以上)による回答)(~2015年下半期)
↑ 自分が所属する世帯に関する電話環境主要選択肢回答率(米、大人(18歳以上)による回答)(~2015年下半期)

2006年と2007年の間で「固定・携帯双方あり」「固定のみ」に大きな変化が起きている。これは2007年以降において携帯電話関連の項目で設問方法に変更があったのが原因。区分が変わっただけで、実情が大きな変化を起こしたわけではない。

その動きをのぞけば、固定電話は一貫して減少している。「固定のみ」だけでなく「固定・携帯双方あり」も減っていることから、固定電話の数が物理的に減り、携帯電話に取って代わられていることが確認できる。直近となる2015年下半期で、固定電話のみの世帯は5.8%でしかなく、すでに47.7%は固定電話無し・携帯電話だけの世帯となっている。

2013年以降は一時期「固定電話のみ」の世帯数減少の動きがほぼ横ばいに移行し、固定電話に固執する世帯に大きな変化は無く、双方を持ち合わせていた世帯が完全に携帯電話のみに切り替える動きのみ進んでいるようだった。しかし2015年に入ってからは再び固定電話のみの世帯も減り始めている。固定電話離れが再び勢いを増しつつあるのかもしれない。

回答者の年齢階層別で動向を確認

次のグラフは、回答年齢階層別の「携帯のみ」(固定電話無し)世帯率の推移を示したもの。

↑ 自分が所属する世帯に関する電話環境「携帯のみ」の回答率(米、年齢階層別による回答)(~2015年下半期)
↑ 自分が所属する世帯に関する電話環境「携帯のみ」の回答率(米、年齢階層別による回答)(~2015年下半期)

若年層と最高齢層の上昇率がややおとなしめな動きなのをのぞけば「回答年齢が若いほど『携帯のみ』率が高く、上昇率も大きい」傾向が確認できる。また「18~44歳の回答者世帯の過半数では、携帯電話しか電話が無い」との状態は注目に値する。「65歳以上」はしばらく過半数への到達は難しいが、「45~64歳」はあと数年で手が届くだろう。

ちなみに「携帯のみ」が過半数に達した世代のみを抽出して再構築すると、このような形となる。

↑ 自分が所属する世帯に関する電話環境「携帯のみ」の回答率(米、年齢階層別による回答、一部)(~2015年下半期)
↑ 自分が所属する世帯に関する電話環境「携帯のみ」の回答率(米、年齢階層別による回答、一部)(~2015年下半期)

25~29歳は6割に届きそうな時点から伸び率が鈍化しており、そろそろ天井に近づいている感がある。30歳以上は勢いが強めで、もうしばらく経過するとそれぞれ25~29歳、18~24歳の回答率とクロスする気配すら有している。

若年層の注目・普及度が加速度的に進み、高齢者はゆっくりと確実に普及していく状況は、携帯電話に限らず、新技術、特にデジタル系のサービスやアイテムに共通する動き。

早くから携帯電話に慣れ親しんだ若年層も少しずつ歳を重ね、じきに中堅層・高齢者の層の仲間入りとなる。そして生まれた時から「携帯電話が常識」の社会に囲まれて育った、真の意味での「デジタルネイティブ」も生まれ、成長していく。高齢層の習得、利用状況も合わせ、デジタルメディア、特に今件の携帯電話の世代間格差がどのような変容を見せるのだろうか。携帯電話の社会浸透では先進国となる、アメリカ合衆国の動向を注意深く見守りたい。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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