鉄道係員への暴力行為、2015年度は792件
多数が利用している公共交通機関の一つ、鉄道。その鉄道を管理運用する鉄道係員に対し、暴力行為を働く利用客は少なからず存在する。その事案内容を、日本民営鉄道協会が2016年7月に発表した、2015年度(2015年4月から2016年3月)に発生した駅員や乗務員など鉄道係員へ行われた暴力行為の件数に関する集計結果「鉄道係員に対する暴力行為の件数・発生状況について」から確認する。
2015年度における鉄道会社各社の、鉄道係員に向けて行われた(利用客による)暴力行為件数は792件。昨年度の800件より8件減少したが、一日あたりの平均回数は2.2件となり、高い水準が維持されている。
曜日・時間帯別では週末・深夜帯での発生件数が多い。「週末で飲酒しての帰り道」といった状況での事案発生が多いことをうかがわせる。特に金曜から日曜における、飲酒を伴った事例が顕著であったことから、報告書でもその件に関して「暴力行為の加害者の多くは酒気を帯びており、発生件数が22時以降の深夜時間帯に偏り、また週末へ向けて発生件数が増加傾向にあることからも飲酒を伴った場合に暴力行為に発展しやすいことを示す結果となりました」との特記が行われている。
事案発生時における加害者側(利用客側)の飲酒状況では、6割強が「飲酒あり」との結果が出ている。上記の値と合わせ、週末で酒を飲み気が大きくなった利用客による事象発生を想像させる。件数は前年度から増加していることもあり(2014年度は454件)、特記が行われる事由となっている。
事件の発生場所は「改札」が最多で4割近く。次いで「ホーム」が3割、「車内」が1割強で続いている。切符などを使わない無理な通過の試みやICカードの誤動作をはじめとする、改札通過時のトラブルがきっかけとなり、鉄道係員との間のいざこざ発生が容易に想像できる。改札そのもの、あるいは隣接する窓口で駅係員と客が口論を起こしている情景を、目撃した人も多いだろう。
最後は加害者(利用者)側の年齢。絶対数と全体比の算出を世代別に行っている。長期的には60代以上の比率が増加傾向にある。
高齢化に伴い人口構成比上でも高齢者比率が高まり、それと共に利用客の高齢化も起きているはず(具体的な鉄道利用客における世代構成比のデータは残念ながら確認できない)。すべての年齢階層の事件発生確率が等しいなのら、加害者側の年齢構成比も高齢者が多くなるのは容易に想像ができる。そして現実にその通りの結果が出つつある。経験を積み重ねて「分別がついている」はずの高齢者でも、若年層同様に加害者に名を連ねてしまうのは、人の業の深さを再確認させられる。
鉄道係員への加害事例は多分に「自分はお客の立場で偉い。多少の暴挙でも許容範囲」と横柄な考えを持つ人によるものもある。それが明確な意図でなくとも、潜在的なものとして持っていれば、各種暴挙につなってしまう。
しかしその考えは独りよがりのものでしかない。自分と相手がどのような立場でも、そして自分がさらに飲酒状態でも、今回挙げられた各種行為は犯罪でしかない。その事実を改めて認識すべきである。
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