老後の主な収入源の各国比較、公的年金がメインなのはどこも同じ
シニアの生活の主軸は公的年金
心身共に衰えを見せ、現役世代のような就業対価が得にくいシニアでも、日々の生活には資財の消費は欠かせない。それではその年齢階層は、主にどのような収入源を頼りにして暮らしているのだろうか。内閣府が2016年5月に発表した、高齢者の生活と意識に関する国際比較調査の最新版となる第8回調査(2015年9月から12月にかけて日本、アメリカ合衆国、ドイツ、スウェーデンにおいて、60歳以上の男女(老人ホームなどの施設入所者は除く)に対して調査員による個別面接聴取方式で実施。有効回答数は各国とも1000件強。それぞれ性別・年齢階層別・地域・都市規模などを元にウェイトバック済み)の結果から確認していく。
次に示すのは現在のシニアライフにおいて何を一番の収入源にしているか、択一回答で答えてもらった結果。厳密には「蓄財引出(預貯金などの引き出し)」は収入とは別物であるが、今調査では同一のものとして選択肢に加えている。
今調査の対象国ではいずれも公的年金を主な収入源としている人が一番多く7割前後。アメリカ合衆国では5割強とやや低めだが、その分私的年金の比率が高くなっている。なお今件はあくまでも「主な」収入源。例えば日本の公的年金における回答率は70.8%だが、これは「公的年金を収入源としている人は7割のみ」を意味しない。例えば就業収入がメインで、公的年金がサブの人もいる。
公的年金以外では就業収入の人が2割前後。ただしアメリカ合衆国は1割に留まっており、その代わりに私的年金が多め。それ以外の蓄財の引き出しや財産収入(株式運用・配当や、賃貸住宅の所有による家賃収入など)などは数%。補助的に取得している人は多数だろうが、メインとしている人はごくわずかでしかない。
日本に対象を絞り、年齢階層別に見たのが次のグラフ。
60代前半はまだ定年退職を迎えていない可能性、あるいは一度退職した上で嘱託などで再就職している事例も多々あることから、2/3近くが就業収入を主な糧(かて)としている。公的年金がメインの人は1/4程度。これが60代後半になると、就業収入をメインとする人は3割足らずとなる。見方を変えれば、60代後半でも就業を続けて生活の主な支えにしている人が1/4強もいることになる。
70代に入るとさすがに就業収入のメイン回答者は1割に減る。公的年金を主軸とし、就業者は就業収入、そして蓄財の引き出しで生活をまかなっている。補完的な観点で財産収入や子供からの援助を充てている人はそれなりにいるはずだが、メインの人は誤差の範囲。
主な収入源を国別・年齢階層別で
上位陣を占めた公的年金と就業収入に関して、国別かつ年齢階層別に仕切り分けしたのが次以降のグラフ。まずは公的年金だが、日本同様他国でも60代前半では少なめ、60代後半から回答率が高めになる。
アメリカ合衆国では全体に値が低めだが、これは上記の通り私的年金をメインとする人が多いため。また就業収入の回答率も日本同様に、高齢層ではむしろ日本より高い傾向がある。そのアメリカ合衆国をのぞけば、70代に入ると8割以上が公的年金をメインとして生活している。
就業収入では、60代前半の時点で一番値が高いのはスウェーデンで2/3超。日本がそれに続き6割強。次いでアメリカ合衆国の5割強、ドイツの1/3強と続く。歳を重ねるに連れて減少していくのはどこの国も同じだが、ドイツでは60代後半、スウェーデンでは70代前半で事実上ゼロに等しい状況となるのに対し、日米では年上でもなお「就業収入が主な収入源」と回答する人が一定率存在する。特にアメリカ合衆国では80代に入っても前半で8.1%、後半以降でも4.9%もの人が該当している。
各国の傾向の違いはそれぞれの国の制度や就業スタイルの違い、高齢者の就業に対する社会の認識の差異の結果によるもの。高齢者の生活様式を他国との比較で確認する際に、留意しておくにこしたことはあるまい。
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