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火力は石炭・石油・天然ガス、水力、そして原子力…主要国の発電量を電源種類別で確認する

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 石炭による火力発電所

電気は色々な形に変換しやすいエネルギーとして重宝され、現代社会には欠かせない存在。その電気をいかなる種類の電源から生み出すのかは、国家戦略の上でも重要な話。主要国の現状を確認していく。

今件記事に関して一次資料となるものはIEA(国際エネルギー機関:International Energy Agency)が毎年発行している「ENERGY BALANCES OF OECD COUNTRIES」と「ENERGY BALANCES OF NON-OECD COUNTRIES」。電技事業連合会などが発行している「原子力・エネルギー図面集」の最新版(2016年発行)において、2015年版(データの中身は2013年分)のものが掲載されているため、今回はこれを元に精査を行う。

今グラフは電気の発電様式を主要な発電方法、具体的には石炭・石油・天然ガス(以上火力発電)・原子力・水力・その他に区分し、それぞれの発電「量」(瞬間時の能力を示した「能力」ではない)を総計電力量比で示したもの。

↑ 主要国の電源別発電電力量の構成(2013年)
↑ 主要国の電源別発電電力量の構成(2013年)

・カナダ、ブラジルは水力発電の比率が高い。自然をフルに活用できる環境を有効に活かしている。特にブラジルは約7割が水力で占められている。

・イタリアには原子力が無い。国策による結果。

・イギリス、イタリア、ロシアなど欧州地域は天然ガスに寄るところが大きい。

・中国やインドなどの新興国では石炭傾注度が高い。

・フランスでは3/4を原子力に頼っている

これらの特徴に関して、それぞれの国のエネルギー事情が大きく反映されたものとなっているが、例えば

・イタリアは1987年に脱原発政策が国民投票で決定してから、原発ゼロを貫いている。現在では方針転換を二度繰り返し、結局原発ゼロは継続。

・フランスはエネルギー面でも独立独歩的な政策を現実のものとするため、他国に関与されにくい原発を促進している。一時的に大きな方針転換が行われる可能性が出てきたが、現在ではその動きも沈静化している。

・中国は電力の3/4を石炭から得ているが、これは石炭が安価で経済性に優れているから。ただし環境面での負担も大きい

などが挙げられる。それらが電力量構成にそのまま反映されている。また以前欧州情勢で話題となった、西欧諸国とロシアとの間におけるパイプライン供給でのガスをめぐる駆け引きなども、このグラフを見ながら考察し直すと、なるほど感を覚えることができる。

ちなみに石油のほとんどを輸入に頼っている日本だが、電力発電用としての比率は今回取り上げた国の中では最大値を示している。これは2011年3月に発生した震災とその後の政情的混乱により原発の稼動が止められ、不足した電力を火力発電所で補うための結果によるものである。

↑ 主要国の電源別発電電力量の構成比率変化(2012年→2013年)(一部)
↑ 主要国の電源別発電電力量の構成比率変化(2012年→2013年)(一部)

これは今回直近となった2013年の値と、前回年の2012年の値を比較したものだが、日本で原発の停止により原子力の割合が前年からさらに削られ、その分を石炭で補っている状況が一目で分かるグラフとなっている。また、いわゆる再生可能エネルギーなどが含まれる「その他」は、日米中共にそれなりの値を積み増ししているのが興味深い。

当然のことながら電気そのものは目に見えることは無く、コンセントにも「原材料は●×です」と書かれているわけではない。発電の原材料で電気の質に違いが生じるわけでもない。インフラがしっかりと安定的に整備されている中で日々を過ごせる、「当然のように繰り返される日常」、そのインフラを絶えず支えている関係者に感謝をしつつ、電気が作られた「素」に想いを馳せることをお薦めしたい。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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