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1箱20本入りなら13本近くは税金…たばこ税の推移を確認する

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 多様な種類が販売されているたばこたち。課せられている税金は

数年おきに論議に登り、実際に引上げがなされるたばこへの税金。そろそろまた話が盛り上がりそうだが、現状ではどれほどなのだろうか。JTが毎年公開しているアニュアルレポートを元に、過去の推移を合わせ確認していく。

次に示すのはたばこ1本当たりの従量税推移。今件グラフは時期(横軸)の区分については、等期間の間隔では無く、何らかの事象に合わせての区分(税率の変更など)となっていることに留意する必要がある。また2016年4月の主要銘柄の値上げは税率の引き上げによるものでは無いため、今グラフには反映されていない。

↑ たばこ税推移(円)(1本当たり)(従量税)(消費税含まず)
↑ たばこ税推移(円)(1本当たり)(従量税)(消費税含まず)

現時点では2014年4月の消費税率引き上げが最後の関連する税率改正のため、それが最新のデータとしてグラフに収まっている。他方、今グラフでは消費税は計上されていないため、2014年4月とその前の仕切りである2010年10月(たばこ税大幅引上げ)との間には、変化は生じていない。

また1989年3月までは別途従価税が併課されており、今グラフでは反映されていないため、大きく税額がアップしたように見える(うまく調整が成されており、実際にはたばこ1箱単位での税負担率に変化は無い)。

それではこの税負担で、購入者はたばこ1箱でどの程度の税額を納めていることになるのか。それを算出したのが次のグラフ。オーソドックスな銘柄のマイルドセブン(メビウス)(マイルドセブンは2013年2月以降メビウスに名称が変更されている)を例に挙げ、一つ目は「販売価格の何%が税金に該当するのか」、二つ目は「販売価格と、税負担部分・それ以外の部分の金額」の図になる。

↑ マイルドセブンの税負担率(消費税含む)
↑ マイルドセブンの税負担率(消費税含む)
↑ マイルドセブンの価格と税負担部分推移(円)
↑ マイルドセブンの価格と税負担部分推移(円)

1989年4月に消費税が導入、1997年4月・2014年4月に消費税の増税があったこと、そして2016年4月の収益基盤の強化目的の値上げをのぞけば、いずれもたばこに直結する税率・税制の変更に伴う負担率の変移が示されている。一時期をのぞけば税負担率は漸増、そしてそれに伴い税負担額・価格も増加している。

他方、直近の2016年4月の値上げでは税率は変わらず価格が上昇したため、税負担は微少の変化に留まり、税以外の部分が大きく増加。結果として税負担率は減少している。現在ではメビウス1箱を吸うと、そのうち約278円は税金。ひと箱20本入りならば13本近くは丸ごと税金という計算。

なお二つ目のグラフの緑色、「税以外の部分」がすべてJT側の利益では無いので注意してほしい。販売店のマージンがあり(10.00%)、残りがJTの売上となる。

↑ たばこ1箱あたりの定価の構成(メビウス・440円の場合、円)
↑ たばこ1箱あたりの定価の構成(メビウス・440円の場合、円)

そして「JTの手取分」から人件費、材料費など多種多様な経費がのぞかれ、はじめて利益(場合によっては損失)が計上される。今件のようなグラフを挙げると、「税金が取られるとの話だが、それでもメビウス1箱で119円もの”利益”があがるのではないか」とする誤解釈による意見がしばしば寄せられる。そこであらかじめ言及しておくことにした。「売上」と「利益」は別物であることに、十分注意してほしい。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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