携帯電話とパソコンとテレビと…子供達の「自分専用」端末の所有率
スマホは中学5割、高校はほぼ100%
かつてはテレビ、そして今ではパソコンや携帯電話は、子供にとって身近で影響力の大きな情報取得ツールである。それらツールの「自分専用」としての所有率はどの程度なのだろうか。金融広報中央委員会「知るぽると」が5年おきに実施している、小学生から高校生を対象にした金銭に係わるさまざまな問題を対象にした調査「子どものくらしとお金に関する調査」の公開結果を元に確認していく。
最初に示すのは、直近の調査結果となる2015年分の、携帯電話、パソコン(回答者区分によってはタブレット型端末も合わせて設問文に掲載されている)、テレビ、自分の部屋に関する所有率。家族から借りて利用する場合や、家族と共有のものは含まれない。自分の部屋ならば兄弟姉妹と共有の場合は該当しない。テレビの場合は居間で自分専用のテレビを持つ事は想定しにくいので、多分に自分の部屋に設置されていることが想像される。
小学生は従来型携帯電話の所有率が高いが、それでも3割程度。中高生になると値は減少し、代わりにスマートフォンの所有率がグンと上がる。中学生では5割、高校生では9割5分が自分のスマホを持っている。
「子供のパソコン離れ」と最近語られているパソコン。「自分専用の」としては小学生は1割足らずだが中高生では3割程度。タブレット型端末も含まれているのが気になるが、タブレット型端末は多分に家族共有での利用となるので、さほど計上されてはいないと見てよいだろう。
テレビは小学生で1割前後、中高生でも2割前後とさほど多くない。他方、自分の部屋は中高生に限るが7割強と、ほぼ3/4に届いている。
5年単位の変化をたどる
続いて経年変化。「子どものくらしとお金に関する調査」では今回発表分も合わせ、都合3回・5年おきに調査が行われている。過去の調査では項目が省略されている部分もあるため、ある程度の経年値の抽出が可能なパソコン(+タブレット型端末)、従来型携帯電話、テレビについて、その動向を確認していく。なお空欄の部分は該当項目の調査が無かったことを意味する。また2010年以前は実質的にタブレット型端末は無くパソコンのみと見て良い。スマートフォンは2015年にはじめて登場した項目で、それ以前は回答そのものが無いので比較は不可能。もちろんそれぞれの回答値は無回答者を除いた再計算を施している。
まずはパソコン。
2005年時には小学生の対象項目調査が無かったのは残念だが、2010年と2015年を比べると、明らかに所有率が減っている。他方、中高生はタブレット型端末が含まれるのも一因ではあるが、大きな上昇を示している。今件はあくまでも「自分専用」であり、家族との共有は除外されているが、パソコンを家族の監視の下で、あるいは共有として使うのは色々と使いにくい実情を思い起こせば、実質的なパソコン利用率は、自分専用の端末がある場合に限るとした方が良いかもしれない。
ともあれ、少なくとも所有率に限れば、中高生では「パソコン離れ」は起きていないことになる。ただし使用頻度に関する言及は無いので、どれほどの時間を費やしているかはまた別の問題ではある。持っていてもほとんど使わない、インターネットへのアクセスの多分はスマートフォン経由、そのようなライフスタイルは容易に想像できる。
続いて従来型携帯電話。2010年分まではスマートフォンの項目が無かったので、項目では単に携帯電話と記載されている。
小学生は2005年時点では回答項目が無かったので空白だが、2010年から2015年にかけては上昇。防犯意識の高まりが反映されている。他方、中高生では2005年から2010年にかけては多少の上昇を示しているものの、2015年には大きな減少が起きている。これは上記グラフにある通り、スマートフォンが代替しているため。中高生の間で携帯電話離れが起きているわけではなく、従来型携帯電話離れ・スマートフォンへの密接化が生じている。
最後はテレビ。自宅にテレビがあるか否かでは無く、自分専用のテレビの有る無しを問われていることに注意。専用のテレビが無くとも家族共有のテレビを居間などで閲覧することは可能である。
こちらも小学生は2010年以降の設問となっているが、小中高いずれも現在に近づくに連れて所有率は減っていく。自室のあるなしの問いは2015年からなので経年変化をたどれず「自室所有率が減ったのでそれに合わせてテレビの所有率も減った」との仮説の是非を検証することはできないが、中高生の2005年から2010年における大きな減少ぶりは、自室所有率の変化があったとしても、それだけでは説明がし難い。やはり子供達の間で、自前のテレビ離れが生じていると見て良いだろう。
今件は5年単位の調査であるため、調査の回の合間に大きな技術進歩や普及機器の変化が生じ、経年変化をたどるのが難しくなるケースが多々生じている。スマートフォンが良い例だ。次回の調査は2020年に実施されるはずだが、その時には従来型携帯電話の選択肢が無くなっている可能性は否定できない。また、スマートフォンに続く新たな携帯型情報端末が選択肢に加わっているかもしれない。一方で、テレビは相変わらず選択肢として存在し続けていることだろう。
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