日本や諸外国の完全自動走行車の認識と利用意向
完全自動走行車の認知度と興味度合
技術の進歩とともにかつてはSFで語られていた物事が現実に降りてくるケースが増えている。諸国で開発が進んでいる完全自動走行車もその一つ。人々はどこまでそれを知り、利用したいと考えているのか。総務省が2016年8月に公開した、2016年版の情報通信白書の内容から確認していく。
該当する調査の要項は2016年2月に日本、アメリカ合衆国、イギリス、ドイツ、韓国、中国に対してインターネット経由にて20代から60代までを対象として行われたもので、有効回答数は各国1000件。男女比、10歳区切りの年齢階層比はほぼ均等割り当て。
今回取り上げる自動走行車とは自動運転車などとも呼ばれるもの。自動化される度合いで多種多様なものがある。また、判断ミスなどによる事故の懸念が高まっている高齢者向けの機能としても注目を集めている。ただし今回は「完全」がついているため、一部手動での走行タイプでは無く、完全に全自動による自動走行車を指していることになる。白書でも説明には「運転手が関与することなく、すべて自動で運転できる機能」とある。
さて、その完全自動走行車の認知度に関して、「知っているし関心はある」「知っているが関心は無い」「名前程度は知っているがそれ以上のことは知らないし関心の持ちようが無い」「まったく知らない」の4選択肢を提示し、回答者の心境にいちばん近いものを挙げてもらった結果が次のグラフ。
日本の「知らない」の回答率が異様に高い。今回挙げた諸国の中では唯一過半数が該当している。日本では完全自動走行車に対する周知広報が、他国と比べて遅れているようすがうかがえる。
他国では中国が一番認知度が高い……が、これは回答者の偏りのリスク(インターネット経由の調査であり、「インターネット普及が途上である、モニターの登録者数が少ないなどの要因によって、対象者の特性や回答に偏りが生じている可能性がある」(白書より))を考慮しなければならない。インドも多分に高いが、こちらも同様の可能性に留意の必要があろう。とはいえ、両国の回答者に関しては、大いに周知されていることも事実。「知っているし関心がある」の回答率も両国がダントツで1/3超え。
それらを除くと大よそ2割前後が「知っているし関心がある」、2割から3割が「知っているが関心は無い」で、大きな違いはない。知らない人は2割から3割程度。
年齢階層別では先端技術に係わる質問の例の通り、若年層の方が認知度は高く、関心度合いも高い。
日本には限定してその内情を確認すると、やや「知らない」の回答率が高い。だが他国もほぼ似たようなもので、若年層ほど認知度は高い。
完全自動走行車の利用意向は無料・有料で大きな違い
それでは完全自動走行車に関して、人々はどのような利用意向を有しているのだろうか。
認知度の低い日本も合わせ、有料でも利用したい人は大よそ2割から3割、無料なら利用したい人は2割から4割。利用したくない人は2割から4割。多少幅はあるものの、利用したい・したくない人がほぼ折半で、利用したい人の半分前後が有料でも良しとするものとなっている。中国とインドは強い積極性が出ているが、これは上記の通り回答者の偏りリスクを考慮する必要がある。とはいえ、それらの人にとって完全自動走行車が大いに魅力的である事実には変わりは無い。
認知度同様韓国の動きは特定的。完全自動走行車への利用意向が極めて高く、回答の際の偏りを考慮する必要が無いにも関わらず、7割以上の人が利用したい意向を示している。
韓国の期待の高さは年齢階層別にも表れている。日本を比較例として出しておくが、他国もだいたい似たようなもので、若年層ほど有料でも利用したい人が多く、無料なら利用したい人はほぼ横ばい、年上になるほど利用したくない・必要ないとする回答が増えていく。ところが韓国はほぼ同率で、どの年齢階層でも2割ほどが「有料でも利用したい」と答えている。
韓国では40代がもっとも利用意向が高く、5割を超えている。その他の世代も4割後半に達しており、どの世代も6割を超える利用への期待を有している。同国がいかに完全自動走行車へ熱い視線を向けているかが分かるというものだ。
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