日本の特異性があらためて…日本と諸外国の使用目的のケータイ・スマホ利用実情
従来型携帯電話(ガラケー)からスマートフォンに携帯電話の主流が移り、携帯電話の生活への密着性や社会への影響力は大きな変化を遂げている。日本や諸外国におけるそれら端末の、私的利用での利用率を、総務省が2016年8月17日に公式ウェブ上で公開した、2016年版の「情報通信白書」の内容をもとに確認していく。
該当する調査の要項は2016年2月に日本、アメリカ合衆国、イギリス、ドイツ、韓国、中国に対してインターネット経由にて20代から60代までを対象として行われたもので、有効回答数は各国1000件。男女比、10歳区切りの年齢階層比はほぼ均等割り当て。今件ではインターネットに浅からぬ関係のある機器の調査ではあるが、調査自身がインターネット経由で行われているため、元々インターネットの普及に関して偏りのある国の回答率は、その国全体との間にいくぶんのぶれが生じていることを念頭におく必要がある。
次に示すのはスマートフォン、従来型携帯電話、そしてタブレット型端末における、私的用途で利用している人の割合。学校で学業、職場で仕事のために用いている場合は該当しない。未成年者は回答者には含まれていないことから、必然的に自分自身でその端末をプライベートの所有品として有していると考えられる。
今回挙げた諸国の中では日本のスマートフォン利用率が最も低く、6割程度。他国は7割から8割で、韓国と中国に至っては9割を超え、ほぼ全員との回答が出ている(ただし中国に関しては上記の通り、回答者の属性を考慮する必要がある)。
従来型携帯電話はドイツやアメリカ合衆国でやや高めだが、大よそ1割前後。しかし日本は4割強を維持している。これは携帯電話の普及進化の過程で、日本が従来型携帯電話とスマートフォンの間に、従来型携帯電話の機能を大いに高めたマルチメディアフォンを多分に開発して普及浸透した歴史があるため、その分スマートフォンの普及が遅れたのが要因。また、現在でも高齢者や子供向けとして従来型携帯電話への一定率の需要があるのも、他国と比べて値が高い一因。
日本の利用率の他国との差異は、例えばスマートフォンの年齢階層別の動向を見ると、その一因を推し量ることができる。
他国は40代までが高い値を示しているのに対し、日本では30代から一定度合いで利用率が減退している。他国も40代以降は値が下がっていくがその度合いはゆるやかで、50代を除けば差異が大きなものとなっている。
今件調査はインターネット経由であることから、全体と比べ多少の、特に高年齢層には少なからぬ下駄が履かされているはずだが、それでもなお日本では他国と比べて低い値に留まっている。日本のスマートフォン普及が遅れているのは、多分に中堅層以降の浸透が遅れているからに他ならない。
しかしながら上記にある通り、日本では多分に他国と比べ、実質的にマルチメディアフォンの従来型携帯電話が普及浸透しており、特に40代以降に厚い支持を集めている。
これが多分に同年齢階層へのスマートフォンの利用を妨げているのだろう。当事者にとってはスマートフォンでも従来型携帯電話でも、需要を満たすものであれば良い。既存の端末で満足しているのなら、わざわざ買い替える必要はないからだ。
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