信頼できる情報と素早い情報、一番使うメディアの国際比較
「信頼できる情報はテレビから」は日本とドイツ
多様な場面で直面する情報取得の必要性。その取得の際には信頼性を第一とする、あるいは速報性を何より求める時がある。それぞれの場面でよく使うメディアに違いはあるのか。その国際比較を、総務省が2016年8月17日に公式ウェブ上で公開した、2016年版の「情報通信白書」の内容をもとに確認していく。
該当する調査の要項は2016年2月に日本、アメリカ合衆国、イギリス、ドイツ、韓国、中国に対してインターネット経由にて20代から60代までを対象として行われたもので、有効回答数は各国1000件。男女比、10歳区切りの年齢階層比はほぼ均等割り当て。今件はインターネットに浅からぬ関係のある選択肢を含む調査項目ではあるが、調査自身がインターネット経由で行われているため、元々インターネットの普及に関して偏りのある国の回答率は、その国全体との間にいくぶんのぶれが生じている可能性がある。
まずは、諸国における「信頼できる情報を得るために」もっともよく利用しているメディア。択一回答であり、それ以外のメディアは一切使っていないわけでは無い。要は各国の人たちが信ぴょう性の高い情報を流していると判断している、情報の信頼性において一番だと認識しているメディアの選択結果。
日本が一番信頼をしているのはテレビ。同様のパターンはドイツでも生じているが、それ以外のアメリカ合衆国、イギリス、韓国、中国ではインターネットがトップに挙がっている。もっともインターネットとテレビは第一位か二位かの違いで、その他のメディアは少数派。ただし日本では他国よりも新聞への傾注度が高く、ラジオが低いのも特徴的。
この類の「メディア信頼論」的な話では繰り返し解説しているが、テレビやラジオ、新聞、雑誌が多分に独占メディア的なものであり、情報発信元とインフラとしてのメディアがほぼ同一視されるのに対し(この類の設問で「新聞」と問われた際に、学級新聞を含めて考える人はいない。また「テレビ」に個人や一般企業が容易に配信できる動画配信は含めて考えない)、インターネットは多分にインフラとしてのメディアでのみの概念であって、コンテンツやその信頼性は多分に配信元に寄るところが大きい。実際、詳しくは別の機会に譲るが、インターネットの中でもニュースサイトの信頼性は高いが、ソーシャルメディアや動画配信・共有サイトなどは低い値に留まっている。それらがすべてまとめて「インターネット」として考えられるため、優先順位が低くなっている。
テレビへの信頼度が高い日本だが、年齢階層別でみると、多分に年上の値がウェイトの点で大きな役割を果たしている。
とはいえ20代から40代でもテレビが一番、インターネットがそれに次いで3割台。50代以降は大きくテレビが突き放し、インターネットが減っていく。また60代では新聞が3割を超えていく辺りは、これらの世代のメディアへの信頼度の現状に関して、大きくうなづかせる結果ではある。
速報性は多分にネットだがそれでも…
それでは信頼できる情報ではなく、いち早く情報を取得するために、もっともよく使っているのはどのメディアだろうか。要は孫子の兵法曰く「拙速を尊ぶ」場合の選択肢である。
どの国もトップ回答はインターネット。ただし「信頼できる情報」にもあるように、日本ではテレビへの傾注度が高いためか、テレビとの回答も4割を超え、諸国中トップの値を計上している。ドイツでラジオがやや高めだが、それ以外はラジオ・新聞・雑誌・書籍共にごく少数でしかない。
韓国ではインターネットへの傾注度がもっとも大きく8割近く。中国は6割、それ以外は大よそ5割台。アメリカ合衆国のインターネットの値がやや低めだが、これは対抗馬となるテレビが高めなのに加え、他のメディアへもそれなりの値が出ているため。
これを日本に限り、年齢階層別に見ると、ある意味意外、ある意味必然と解釈できる結果が出ている。
40代まではインターネットが圧倒的でテレビはその半分程度しかない。しかし50代に入るとテレビが大きくせり上がり、その分インターネットが減る。そして60代ではテレビがインターネットを逆転してしまう。やはり40代までと50代以降で情報に関する大きなへだたりが生じているのと共に、今件がインターネット経由の調査であることを考慮すると、「各年齢階層別ではもう少し、特に中堅層以降でテレビへの傾注度が高いはず」「60代ではネット経由の調査にも関わらず、速報性の情報取得としてテレビをトップに挙げるほど、テレビへの信奉性が高い」との状況も想起できる。
グラフは略するが、日本以外の各国とも歳が上となるに連れてネットへの傾注度が減り、テレビが増える傾向には変わりない。ただし日本ほど大きな差異が生じている国は他にないため(ドイツの60代がかろうじて近いが、単にテレビだけではなくラジオへも分散している)、日本の特異性が改めて認識される次第ではある。
■関連記事: