チャット系サービスや中国発のソーシャルメディア、世界における利用実情を探る
ソーシャルメディアとして分類される事も多々ある、LINEなどのチャット系サービス。そして中国の特殊事情ゆえに自国を中心に独自展開される、他社の類似サービス。その利用実情を総務省が2016年8月に公式ウェブ上で公開した、2016年版の「情報通信白書」に関して、各種グラフなどの詳細値が確認できるHTML版を元に確認していく。
該当する調査の要項は2016年2月に日本、アメリカ合衆国、イギリス、ドイツ、韓国、中国に対してインターネット経由にて20代から60代までを対象として行われたもので、有効回答数は各国1000件。男女比、10歳区切りの年齢階層比はほぼ均等割り当て。今件該当部分はインターネットを用いたサービスに関する利用状況を尋ねているため、インターネットへのアクセス機会率が低い高齢者、そして一部国家においては、その対象全体との間にぶれが生じている、具体的にはインターネットに有利に数字が動いている可能性がある(インターネットを利用していない人は回答に加われない)。その点を留意した上で見ていく必要がある。
次に示すのは、諸国におけるチャット系サービスの利用状況。回答者が「自分はこのサービスを利用している」との認識に合致した人の割合であり、アカウントの所有率では無いことに注意する必要がある。なお微博(Weibo)は中国版のツイッターのようなもの、微信(WeChat)は中国版のLINEのようなもの、人人網とは中国版のFacebookのようなものである。
チャット系サービスは人々の日常生活に密接な距離感を持つことから、個々の国の特性に合ったものが使われる傾向が強い。通常のソーシャルメディアのように、複数国が高い利用率を示すものはあまり無く、棒グラフも少数国が飛び出る形状となっている。
唯一汎用性が高いように見えるのはWhatsApp。インドの8割超えを筆頭に、ドイツの6割近く、イギリスの3割超え、アメリカ合衆国でも2割、オーストラリアでも2割近くに達している。他方、KakaoTalkは韓国が3/4でダントツ、他国はほぼゼロに近い。
日本では若年層を中心に浸透を見せるLINEだが、意外にも日本が最大の利用率で4割強、韓国は2割強に留まり、インドでも1割程度でしかない。後はアメリカ合衆国で1割足らず。
2枚目のグラフに収まる中国系サービスでは、やはり中国の利用率が圧倒的。近しい仕様を持つ海外のサービスの利用が、「諸般の事情で」中国国内での利用を大きく制限されていることから、当然の結果ではある。時として中国国内のインターネットの状況を「閉じたインターネット」と表現するが、その実情をかいま見る値ともいえる。特に微信(WeChat)は9割近い利用率を示し、インドでも2割を超えている。しかしそれ以外は中国以外の国の利用率は正直誤差の範囲でしかないのが実情。
なお日本に限り、年齢階層別にその利用率を見ると次の通りとなる。
他の複数の調査結果の通り、LINEは若年層を中心に高い利用率を示している。しかしそれ以外のサービスの利用率は、事実上ゼロに等しく、若年層でわずかに数%の値を示すのみである。
最近では電子メールアドレスを持たず、ソーシャルメディアのアカウントを身分証明と共に示し、連絡先として提示する人が増えているとの話もある。事実上、ソーシャルメディアのアカウントが個人の対外窓口となり、通常の連絡先となっている人も多いだろう。その観点ではソーシャルメディアや今回例示したチャット系サービスは、立派な情報インフラに違いない。
その観点で考え直すと、一つの「インフラ」が何らかのトラブルを生じた時のリスク回避手段として、複数の連絡先を登録し、普段から利用しておくのも、リスク管理の上では必要と考えれる。先のソーシャルメディアの利用状況と合わせ、考えねばならないことは少なくあるまい。
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