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大学生の就職状況、その中身を確認する

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 入社試験に必死な就活女子大学生。

大学を卒業した人の多分は自らが選んだ企業へ就職していくが、中には大学院などへ進学する、あるいは進学も就職もしない人もいる。その内情を文部科学省の定期調査「学校基本調査」の結果から確認していく。

直近となる2016年度の公開値の限りでは、2016年3月に大学(学部)を卒業した卒業者のうち、正規・非正規雇用を問わず就職した人は74.7%。大学院や専修学校、海外への学校への入学など進学をした人は12.1%。一時的な仕事に就いた人は1.8%、進学も就職もしていない人(就職浪人や資格取得のための勉強、花嫁修行や結婚による専業主婦化など)は8.7%となっている。

そのうち「就職者」の中で「非正規就業(フルタイムの契約社員、派遣社員)」に該当する人、一時的な仕事に就いた人(パート、アルバイト)、進学も就職もしていない人を合わせて、「安定的な雇用に就いていない人」の率を算出すると、2016年3月度では14.0%となる。この値は「学校基本調査」で2012年3月度から新たに算出されたものだが、順に22.9%・20.7%・18.6%・16.1%、そして今回の14.0%と漸次低減している。非正規就業に就く理由は人それぞれだが、その立場が正規就業と比べて低評価のものと仮定した場合、大学卒業生の雇用状況は改善されていることになる。

これらの値のうち主要なものを抽出し、前世紀末からの推移を見たのが次の折れ線グラフ。

↑ 大学(学部)卒業者の就職率などの推移(学校基本調査、2016年3月は速報値、一部)
↑ 大学(学部)卒業者の就職率などの推移(学校基本調査、2016年3月は速報値、一部)

今世紀に入ってからは金融危機直前にピークを迎えた就職率だが、その後急落(むしろ2008年9月のリーマンショックがタイミング的には近い)。これは雇用市場の冷え込みから、大学卒ですら就労先が決まらない、見つからない人が増えたことを意味する。次のグラフでも示すが、「進学も就職もしていない人」の比率がその分増加しているのが分かる。また、就職率の上下とほぼ反する動きとして「一時的な仕事に就いた人」と「進学も就職もしていない人」の合計は増加する動きを示している。就活(就職活動)をしている、あるいは就活しながら短期的なアルバイトをしている人が増えていると考えれば、この動きは納得がいく。

もっとも2011年3月卒業生あたりから、雇用市場は回復を迎えている気配が見られる。就職率は少しずつ増加。それと共に「一時的な仕事に就いた人」と「進学も就職もしていない人」の合計も減少している。この動きは厚生労働省発表の就職(内定)率推移からも確認できる。

↑ 就職(内定)率の推移(大学・全体)(~2016年4月1日)
↑ 就職(内定)率の推移(大学・全体)(~2016年4月1日)

気になるのはそれと同時に「進学率」も低迷の動きを示していること。これは大学からさらに大学院に進学しても、就職の上では必ずしも有利とは限らない現状が、大学院などへの進学の魅力を押し下げているものと考えられる。あるいは大学院でさらに深く勉学に励むことと、就職先で生き甲斐などを見つけることへの優先順位・価値観に変化がでてきたのだろうか。実際、就職率を確認すると、大学院の修士課程はともかく、博士課程や専門職学位課程の卒業者における就職率は、単なる大学卒業生よりも低い結果が出ている。

同じ期間の動向について、他の区分も合わせ詳細な比率の推移を見たのが次のグラフ。

↑ 大学(学部)卒業者動向推移(各年卒業者別)(詳細内訳、~2016年3月)
↑ 大学(学部)卒業者動向推移(各年卒業者別)(詳細内訳、~2016年3月)

前世紀末から今世紀初頭においては、大学卒に占める「進学・就職をしない人」の割合がかなり高かったこと、進学率や就職率も低めだったことが分かる。また2005年あたりから就職か進学のいずれかを選ぶ人の比率が増加し、進学・就職をしない(できない)人の比率が減少傾向にあったこと、直近の金融危機でやや「就職派」が減ったもののここ数年は再び増加、しかし「進学派」は継続して減少していることなどの動きが確認できる。

少なくとも今世紀に限れば、現状では大学生(学部)の就職率は最高水準にある。それと共に進学や就職をしていない人は漸減を続けており、こちらも今世紀では最低水準に違いない。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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