年々増加・8割近くは高齢者…人口動態統計から熱中症による死亡者動向を確認する
増加傾向の熱中症による死亡者
夏になると日々伝えられる熱中症による救急搬送者。場合によっては死に至る人もいる。この死亡者の動向が厚労省の人口動態統計からも確認できる。今世紀に入ってからの推移と現状を確認していく。
人口動態統計で附則資料として提供されている特記ファイルにおける「熱中症による死亡者」とは、ICD-10(国際疾病分類第10版)におけるX30(自然の過度の高温への曝露)を死因とするもの。この「X30」に該当する死亡者を精査していく。e-Stat(政府統計のデータベース)から取得可能なデータは1999年以降。そこでまずは単純に、年単位での死亡者数の推移をまとめる。
次第に増加していく様子はうかがいしれるが、熱中症は多分にその年の夏の暑さに影響を受けるため、大きめなぶれが生じている。そこで毎年の値に関して、その前年と前々年、つまり都合3年分の値を足して平均値を算出し、値を均す方法を用いた結果が次のグラフ。単年によるイレギュラーの影響を抑えることができる。
2013年から2014年にかけて漸減する動きもあるが、概して増加する傾向にあることが分かる。特に2006年以降、そして2010年以降と2段階に分けた上昇ぶりが確認できる。今世紀初頭の300人前後から、直近の2015年では3倍近くの値となり、さまざまな要因(高齢・一人世帯化、ヒートアイランド現象の影響、都市部への人口密集化など)はあるが、熱中症による死亡者数は確実に増加している。
属性別で動向を確認
これを男女別に見たのが次のグラフ。やはり直近2015年分の原値と、過去2年分も合わせた上での平均値の双方について、年齢階層別に仕切り分けした上で男女別の値を確認する。
若年層から就業層に至るまでは、男性の方が熱中症の発症(、そして死亡)リスクは高い。これは就業時における外出過程でのリスクが多分に存在するからに他ならない。60代後半以降になると定年退職を迎え、男性も自宅に居る時間帯が長くなり、リスクそのものは女性と変わらなくなる。
80代以降になるとむしろ女性の方が死亡者数が増えるが、これは単純にその年齢階層で存命している数そのものが、女性の方が多いからに他ならない。むしろ年間で百人単位の80代以上の高齢者が、熱中症(との認定の上で)亡くなっている事実に驚きを覚える人も多いはず。
熱中症死亡者の約8割は高齢者
最後は経年における、年齢階層別のリスク変化について。要は昔と比べ現在では、どれほど熱中症による死亡者が増減しているかに関して、年齢階層別に検証したもの。イレギュラーな動きを抑える目的で、該当年を含めた3年分の平均値を用いるため、一番古い値として取得可能な2001年分と、直近となる2015年における死亡者数の変化度合いを倍率で示したのが次のグラフ。
若年層は絶対数が少ないため値が跳ねやすいが、それでも大よそ1.00を切っており、近年にかけて死亡者が減少しているのが分かる。他方、中堅層以降と60代以上の高齢層で、大きな増加を示しているのも確認できる。もちろん社会構造の高齢化に伴い、該当世代の人数そのものが増加しているのは確かだが、10年強の間に人数が2倍も3倍も増加しているはずはなく、確実に高齢層における熱中症による死亡リスクが高まったことが確認できる。
もっとも、動向を詳しく見ていくと、ここ数年は高齢者においても死亡者数が漸減していることが分かる。
ただし若年層の方が減少度合いは大きく、各年の死亡者に占める高齢者の比率は増加の一途をたどっている。また直近分の2015年に限れば、50代後半から80代にかけて、前年から大きな増加を示しており、留意が必要になる。
今や熱中症による死亡者の8割近くは65歳以上。今後もこの値は漸増し、8割を超える日もそう遠くない。
高齢者の熱中症リスクは自宅内で体現化することが多い。周辺関係者はくれぐれも配慮を欠かさないよう、努力をしてほしいものである。
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