Yahoo!ニュース

歳とともにポータルのニュースから新聞へ…テキスト系ニュースメディアの利用状況を探る

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ ニュースは新聞だけでなくネットでも取得できるようになった時代

新聞、次いでポータル提供のニュース

インターネットとその利用端末の急速な普及でニュースの配信スタイルは大きな変貌を遂げている。テキスト系ニュースメディアに関して、旧来型の代名詞で文化を自称する新聞と、新スタイルのインターネットによる様々なサービスの利用状況を、総務省の調査「平成27年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(2015年11月14日から11月20日にかけて、全国125地点をランダムロケーションクォーターサンプリングによって抽出し、訪問留置調査方式により実施。13歳から69歳の1500サンプルが対象。アンケート調査と日記式調査を同時併行で実施し、後者は平日2日・休日1日)の結果から確認していく。

今件では新聞やニュースサイトなど、ニュースを読んでいるテキスト系媒体系の利用状況を尋ねている(映像配信によるテレビや、音声のラジオは対象外)。紙媒体の新聞以外に新聞社が提供する有料サイト、同無料サイト、ポータルサイトが提供しているニュース配信サービス、ソーシャルメディアが提供しているニュース配信サービス、さらにはキュレーションサービス、そしてそれらのいずれの方法でも読んでいないの選択肢を提示し、複数回答で答えてもらった結果が次のグラフ。

↑ ニュースを読んでいるテキスト系媒体(2015年)(複数回答)
↑ ニュースを読んでいるテキスト系媒体(2015年)(複数回答)

全体では紙媒体の新聞の利用率がもっとも高く61.8%。次いでポータルサイト提供のニュース配信サービス、ソーシャルメディア提供のニュース配信サービスが続く。新聞各社が積極展開している新しいビジネスモデルの有料サイトは利用率が3.2%に留まっている。

世代別に見ると、紙媒体の新聞利用率が歳を重ねるに連れて上昇していくのは、他の多数の調査結果からも容易に想像ができた通り。60代では10人に9人近くが新聞を読んでいる。同時にインターネット経由のニュース利用が漸減しており、歳と共に「インターネットから紙へ」が進んでいる。

また、有料無料を問わず、新聞社自身が提供するウェブ上のニュースよりも、それらを集約したポータルサイト提供のニュースの方が需要が大きく、多数の人が利用している実情は皮肉な話。他サービスと一緒にまとめて利用できることや、多種多様なニュースの集約で幅広い情報を一括して確認できるメリットが好かれているのだろう。特定の出版社の発行本のみを集めた本屋より、多種多様な出版社発刊の本を集めたごく普通の本屋の方が需要が大きいのと同じではある。

一方、ソーシャルメディアでも付加価値施策の一環として展開を始めている、ポータルサイトと同様のニュース配信サービスの利用者は20代がピークで、それでも約2割。ソーシャルメディアを利用している人の数の割合にほぼ比例する動きだが、ポータル提供ほどの値では無い。ソーシャルメディアを利用する場合は、他人との交流がメインで、ニュースを読むためにわざわざアクセスする、あるいは目を通すパターンは少数派のようだ。

昨今では各種メディアが公式アカウントを取得し、ソーシャルメディア上でニュースのダイジェストと記事ページへの誘導を書きこむ事例が増えている。この手法は今調査の回答用紙では「新聞社自身がTwitterなどで提供するものは『新聞社提供の無料サイト』に該当」との説明がされていることから、それを加算した上でも利用者はさほど多くない実情を見るに、そのような形でのニュース取得者もまた、少数派のようである。

昨今では多様な意味で注目を集めているキュレーションサービスだが、こちらは全体で8.1%と少なめ。ただし20代から40代までの若年層でいくぶん利用率が高く、特に10代から30代では新聞社提供の無料サイトと肩を並べるほど、とりわけ20代では追い越すほどの利用率を示している。

一番利用しているのは?

これら新聞・ニュースサイトのうち、どれを一番使っているかを聞いた結果が次のグラフ。

↑ もっとも利用しているニュース・テキスト系媒体(2015年)
↑ もっとも利用しているニュース・テキスト系媒体(2015年)

全体では4割強が紙の新聞、次いで1/3強がポータルサイト提供のニュース配信サービス。選択肢内ではいずれも使っていないとの回答が1割強。これが主な状況。

世代別動向では30代をピークにポータル提供のニュースが活用され、それ以降は減少。50代以降は紙の新聞をもっともよく利用している人が増え、60代では実に8割近くが紙の新聞を一番使っていると答えている。同世代のニュース取得媒体としての紙新聞の利用率は上記グラフの通り87.7%なので、60代は「紙媒体の新聞を利用している人が9割近くで、その大多数は『ニュース取得は紙媒体の新聞が一番』と考えている」ことになる。

また複数回答で競っていた40代までにおけるキュレーションサービスと新聞社提供の無料サイトだが、最多利用率ではキュレーションサービスの方が概して優勢。ポータルサイト提供のニュース配信サービス同様に、つまみ食い的、ダイジェスト的なニュース取得スタイルをメインとしていると見れば良いのだろう。

新聞社自身のニュースサイトは有料版がほとんど使われず、無料サイトも利用率は想像以上に低い。やはりまとめて一度に確認ができるポータル系サイトのサービスの便宜性に、多くの人が魅力を覚えているようだ。また紙媒体の新聞との利用度合いも合わせ、ニュース取得元の世代間格差が40代から50代を境に発生しているのも目に留まる。

一時期は次世代を担うサービスとして注目されたキュレーションサービスは伸びが今一つで、むしろポータルサイトやソーシャルメディア提供のサービスへの集中が目立つ。海外はともあれ日本では、その運用・配信スタイル、そして品質に少なからぬ疑問が呈されたのが原因かもしれない。

■関連記事:

シェアされやすいリンクは新聞社サイトやYahoo!ニュース

ニュースとソーシャルメディアの関係をグラフ化してみる

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事