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CDレンタルショップの推移と現状を確認する

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 多数のCDが並ぶレンタルショップ店。どれを借りるか選び悩むのもまた楽し(写真:アフロ)

店舗数は減る一方

多様な音楽との触れ合いの場でもあり、気軽で廉価に聴取する機会を与えてくれる場だったCDレンタル店だが、昨今では音楽環境の激変に伴い、大きな変化を余儀なくされている。その実情を日本レコード協会が2016年10月に発表した調査資料「CDレンタル店調査2016年度概要」から確認する。

まずは店舗数の動向。今データでは2015年分まではその年の年末、最新の2016年分は2016年6月末時点のを適用している。

↑ レコード・CDレンタル店数の推移(各年年末、店舗数)(最新年は6月末時点)
↑ レコード・CDレンタル店数の推移(各年年末、店舗数)(最新年は6月末時点)

1989年をピークとして、それ以降はゆるやかなカーブを描いてはいるが、減少の傾向を続けていることに違いは無い。そしてその減少率だが、2010年前後にやや落ち着きを見せていたものの、再びその減少率を積み増しし、加速している雰囲気がある。最後の2016年分の前年比マイナス2.6%はゆるやかに見えるが、6月末時点までの減少率であり、あと半年丸々残っている(=さらに店舗数が減少する可能性がある)ことを考えると、予断を許さない状況が続いているとみなしてよい。

店舗面積の上では、「横ばい」「安定化」から再び「拡大化」の動きが見受けられる。

↑ CDレンタル店のコーナー別店舗面積(1店舗平均、平方メートル、コーナー別)
↑ CDレンタル店のコーナー別店舗面積(1店舗平均、平方メートル、コーナー別)

データを確認できるもっとも古い1994年以降、「その他」の売り場も含めた平均店舗面積は拡大を続け、「店舗数の縮小」と共に「業態の多様化・兼業化の促進」と「規模の拡大」、さらには「小規模店舗の統廃合、自然淘汰」が行われていた。

ところが2009年にイレギュラー的な落ち込み、そしてそれを乗り越えて2010年にさらなる増加を見せたものの、その年をピークとし、2011年以降はこれまでとは逆に減少の動きを示した。過去において面積増加の牽引力だった「その他(複合業態)」「レンタルビデオ」共に減少しており、トレンドが「拡張一本やり」から変化した雰囲気があった。

しかしながら2013年ではその流れから再び舵を切り直して増加の動きに転じ、以降直近の2016年に至るまで、その流れが続いている。ピークの2010年の値にはまだ及ばないものの、かつての傾向の通り「店舗数減少」「店舗面積拡大」といった集約的方向に動き出したようだ。

店舗単位の在庫数は増加へ

レンタル用CDの在庫だが、今世紀初頭から続いている「シングルの減少」「アルバムの増加」の傾向に大きな変化はない。総枚数はデータが確認できる1994年以降では以前のピークの1997年・4504万枚を超え、2014年時点で最大の4750万枚に達した。店舗数の減少と大型店舗化(、小規模店舗の閉店・合併など)の動きでは後者が前者を上回るスピードだったために総在庫数は増加の一途をたどっていたが、直近の2016年はシングル、アルバム共に前年と比べ減少しており、総数も前年比でわずかな減少を見せ、4595万枚となった。店舗数の減少によるところが少なくない。ただし1店舗あたりの平均在庫数は相変わらず増加中。

↑ CD総在庫数(千枚)
↑ CD総在庫数(千枚)
↑ 1店舗平均在庫数
↑ 1店舗平均在庫数

店舗平均のアルバム在庫中は漸増する一方で、シングルは減少の動きを示していた。しかしこの数年、具体的には2011年を底値に再び増加の方向に舵を取りつつある。

各店舗側は在庫を増やすことで一人でも多くの顧客の需要に、しかも即時に応えられるよう、努力しているように見える。デジタルメディアと異なり物理メディアでは、在庫不足は顧客が店舗で示す「衝動的な需要」に応えられない可能性を生み出し、それは大きな機会損失になりうるからだ。また、ずらりと在庫を並べて充実感を演出することで、潜在的需要の掘り起しを生み出す期待もできる。

なおCDシングルの在庫総数の全体に占める比率は低く、大部分がアルバムCDの状態が続いている。2016年では枚数換算で94.1%がアルバムCDで占められており、この比率は年々増加しつつある(直近年は前年比で0.1%ポイント減退したが)。総在庫数に占めるCDシングルの割合が5%を切る、つまり20枚のレンタルCDのうちシングルは1枚しかない状況も、もう間もなくのことだろう。

なお各店舗の在庫CD枚数による店舗「数」シェアだが、この数年は概して大量在庫店舗の比率が増加する傾向にある。これもまた、「顧客の需要に即時対応できる店舗=大型化」の傾向の裏付けとなる。2016年では最大区分の「1万5000枚以上/店」の店舗比率が2/3を超える形となった。

↑ CD在庫規模別店舗数分布
↑ CD在庫規模別店舗数分布

2011年から数年は中堅規模(4000~6999枚)の店舗シェアが持ち直しの動きを見せていたが、2014年で大きく後退。その動きは現在まで続いている。4000~6999枚の店舗数も顕著に減り、その分が数字的には大規模店舗にシフトした形となっている。

レンタルショップの店舗数の減少は続いている。この流れは書店業界の動きと何ら変わりが無い。ピーク時の1989年当時と比べて、すでに4割足らずに減っているのが現状ではある。

スマートフォンに代表される、モバイル端末の普及率がさらに高まり、デジタル機器に慣れ親しんだ世代(デジタルネイティブ)が歳を重ねていくにつれ、CDそのものやCDレンタルの需要は減少していく。音楽もデジタル経由で、自分の好きな曲だけを選択して、聴きたいと思ったその時点でダウンロード購入し、すぐに耳にできる時代。さらには定額制による聴き放題サービスも浸透を続けている。今後も試行錯誤を繰り返しながら、CDレンタルショップは自らの長所を活かす様態に変化を重ね、進化を遂げていくに違いない。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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