Yahoo!ニュース

今や食品コンビニ…コンビニの食品種類別売上動向を探る

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 最近では生野菜の販売すら珍しくなくなったコンビニだが……

ファストフードの伸びが著しい売上高動向

食品や日用品、たばこなど多様な商品を展開するコンビニエンスストア。そのセールス実態を、売上高では国内業界第二位の座にあるローソンの統合報告書(アニュアルレポート)から、昨今激しい動向を見せるたばこや食品を中心に確認していく。

ローソンでは決算が2月締めであることから、「2016年」の場合は2015年3月から2016年2月末までの値を意味している。まずは売上全体に占める主要商品区分別の割合をグラフ化し、状況を確認する。

↑ 商品群別売上高構成比率推移(連結・チェーン全店、ローソン)
↑ 商品群別売上高構成比率推移(連結・チェーン全店、ローソン)

2010年の売上構成比で「たばこ」は前年比でやや減退している。これは金額そのものは伸びているものの、伸び率は前年ほどではなく、他の分野の伸び具合に比べて大人しかったため、相対的に比率が落ちている次第。その年以外は2013年まで一様に「たばこ」の売上が占める比率は増加をしており、コンビニにとって「たばこ」は年々重要な商材として位置づけられていたのが分かる。また2010年の特異な動きとして「日配食品」が伸びているのが確認できるが、これは「ショップ九九」で該当項目商品が大いに伸びたのが原因。

震災直前となる2011年分(2010年3月~2011年2月)、そして震災時期を含む2012年(2011年3月~2012年2月)では多少のデコボコはあれど、中期的な動きに変わりはない。食品販売の占める割合が大きく、「食品コンビニ」と表しても問題はなさそう。また2010年10月に大規模なたばこの値上げが実施され、これを受けて2011年以降の「たばこ」売上・シェアは増大。2012年では全売上の1/4に達している。

2013年に入るとこれまでとはやや変わった動きも生じている。「たばこ」の伸び、「加工食品(たばこ除く)」「非食品」の減少は相変わらずだが、「ファストフード」(※ローソンではカウンターフーズの他にお弁当や調理パンの類も「ファストフード」に該当させている)が大いに伸びを見せている。これはフライヤー食品をはじめとした惣菜の積極的な展開によるもの。類似商品の「日配食品」(ベーカリー・デザート・アイスクリーム・生鮮食品など)は比率こそ落としているが、金額面では小さからぬ伸びており、中食需要に確実に応え、売り上げに反映しているのが確認できる。

2015年ではいくつかの大きな流れが見受けられる。まず「ファストフード」の大きな伸び。これはカウンターフーズの拡充に伴う躍進に加え、今ではごく当たり前の情景となったドリップコーヒー(ローソンの場合はMACHI cafe)の導入店舗が増え、好成績を上げたため。なおカウンターフーズのルーキー的存在のドーナツの本格導入は、ローソンでは2015年4月以降であるため、2015年時点では計上されていない。そしてたばこの比率と販売金額の双方が大きく増加している。これは2014年4月に実施された消費税率改定に伴う、駆け込み需要によるところが大きい。

直近となる2016年分(2015年3月~2016年2月)では、「ファストフード」の大きな伸びが目に留まる。「加工食品(たばこを除く)」「日配食品」はわずかに比率を落としているが、金額面ではそれぞれ微増、ほぼ同額を示しており、ファストフードを中心に食品全般が成長過程にあることが分かる。他方、「たばこ」は比率を大きく減らしているが、金額も減少しており、たばこ市場全般の低迷ぶりがコンビニの動向でも見られることが確認できる。ただし今回の報告書では特段たばこの売り上げに関わる言及は無く、想定の範囲内における減退であることもうかがえる(前年分では駆け込み需要の反動に伴う低迷が予想されるといったニュアンスの言及がなされていた)。

続いて金額ベースで、積み上げ型のグラフにしたのが次の図。「たばこ」そのものはかなりの額で金額をふくらまして「いた」。

↑ 商品群別売上高推移(連結・チェーン全店、ローソン)(億円)
↑ 商品群別売上高推移(連結・チェーン全店、ローソン)(億円)

コンビニでお世話になっている人も多いであろう「ファストフード」だが、ローソンに限れば「夕食の一品」「単身者や高齢者の方にも、おかずを一品増やしたい主婦の方にも」と多様な方向性、ターゲットを見据え、ブランド化と商品開発を進めているレジ横フライ物や厨房で逐次調理される総菜・お弁当が堅調に推移し、2016年では前年比で8.0%ものプラスを計上した。「日配食品」は比率も売上額もほぼ同値を維持している。「非食品」の額面、シェアの減退と合わせ、コンビニはますます食品コンビニ化の様相を示しつつある。

そして「たばこ」だが、ローソンに限定すれば直近では前年比66億円ほどのマイナス。手元にデータがある2004年以降でははじめての、前年比マイナスの金額を計上した2014年に続き、2回目の前年比マイナス計上。消費税率引き上げ前の駆け込み需要の反動と、中期的なたばこ離れの動きが体現化した形と読み取れる。

たばこは儲かるのか否か

売上高の上昇が続いていた「たばこ」だが、実のところ他の商品と比べて粗利益率は低い。言い換えれば「儲けが少ない」商品。同じ売上をお弁当とたばこで計上した場合、利益はおおよそたばこがお弁当の1/3から1/4との計算になる。人件費を考えると、色々と頭の痛い話に違いない。

↑ 商品別総粗利益率の推移(単体、チェーン全店、ローソン)
↑ 商品別総粗利益率の推移(単体、チェーン全店、ローソン)

他のカテゴリの粗利益率が元々高く、さらに改善(数字が増加=より効果的に儲けられる)しているのに対し、たばこを含む「加工食品」は元々の値が低く、しかも低迷を続けている。最新のレポート中ではたばこの粗利益そのものに関する直接的言及は無いものの、「粗利益率の低いたばこ」との表現があり、たばこの粗利益率が他商品と比べて低い事がうかがえる。

実際、たばこの販売店マージン(手数料)は10.0%であり、他商品と比べて段違いの低さとなっている。「儲け」の観点では「たばこは儲かりにくい」と評しても問題はあるまい。たばこはむしろついで買い、リピート率の高さが魅力なのだが、その力のピークはすでに過ぎていることは明らか。以前と比べて各コンビニ店でたばこのラインアップを増強したり、積極的な宣伝活動をしているのは、少しでもその減退の影響を薄めようとしていると考えれば、理解はできる。

データの継続性・蓄積性や情報公開度合いを考慮し、ローソンのデータを基に精査を行ったが、他のコンビニでも状況に大きな変化はないものと考えられる。たばこ販売動向の月次データを見る限りでは、「値上げ分が売上本数減少分をカバーする」時期はすでに過ぎている。コンビニでもたばこの売上額は、今後継続的に落ち込むことになる。

各コンビニとも商品単価の高いアイテムや、独自の付加価値を織り込むことで、粗利益率アップを模索している。ローソンの「ウチカフェスイーツ」に代表されるような自社ブランドによる甘味系新商品の大規模展、他分野で人気のあるアイテムとの共同開発・イベントの実施などが好例である。

見通しが立ちにくい状況となった主軸商品の一つ「たばこ」の代替品として、ローソンも含めコンビニ大手ではカウンターに設置した専用機器によるドリップコーヒーの販売を拡大している。さらに関連商品の積極開発やイートインコーナーの展開など、キャラクタアイテム、スイーツに続き、コンビニの集客・売上向上を支える大黒柱的存在としてドリップコーヒーを位置づけ、実際にコーヒー側もその期待に応える成果を上げている。その上、そのコーヒーとの連動性の高いドーナツを相次ぎ導入し、注目を集めている。中華まんやおでんと比べ、通年販売が可能な事に加え、多種多様な商品展開が容易にできるため、柔軟性の高い「ついで買いアイテム」として、その注力度合は並々ならぬものがある。

多種多様なサービスを集約し、地域社会に浸透した「よろずや」的存在感をますます強めつつあるコンビニ。高齢化社会の到来や「買物困難者問題」など、小売業に関わり合いのある問題への対応をも見せながら、各種コンビニの施策がどこまで功を成すのか。流行のアンテナ的な立場をも持つコンビニ各社の動向に、今後とも注目していきたい。

■関連記事:

値上げによる家計のたばこ支出金額推移への影響を過去二回分と合わせてグラフ化してみる

たばこ税の推移をグラフ化してみる

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事