最多出火原因はたばこの不始末やストーブではなく放火…出火原因の詳細を探る
2015年の出火原因トップは放火
ストーブのお世話になる寒さの到来と共に、そのストーブによる出火事件も報じられるようになる。全体における割合はどれほどだろうか。出火の内情を消防庁の公開資料「火災の状況」(直近2015年分は2016年8月19日発表)から確認していく。
最初に示すのは最新値にあたる2015年分の出火原因の内訳。最大値を示すのは放火で4033件、ついでたばこの3638件となった。
放火は年々その件数、全体に対する比率を減らしつつあるものの、今なお最大の件数にある。単純計算だが毎日11件ほど、放火による火災が発生している計算になる。さらに「放火の疑い」まで含めると全体の2割近く・約6500件にまで達する。
次いでたばこ。多分に不始末によるもので、こちらは3600件ほど。たばこの喫煙率の漸減もあり、件数・比率共に漸減しているが、上位陣にあることに違いは無い。さらにこんろ、放火の疑い、たき木といつもの顔ぶれが続く。
これを過去5年間について、動向把握をするため、各年の全体件数に占める比率と、単純に件数の積み上げとしてのグラフを生成したのが次の図。
件数比率で見ると放火やたばこの不始末は多少の上下を繰り返しながらも、大よそ減少中。一方たき木などのように振れ幅が大きい出火原因も多く、全体数としてはやや大きな上下を繰り返しながら漸減の傾向にある。
また「その他」項目が3割を維持していることからも分かる通り、出火原因そのものは多様化しており、最初のグラフで示した細分化の項目一覧にすら収まらないような事案が多々あることがうかがえる。
出火場所、そして犠牲者
出火原因は放火とたばこの不始末が多いことは判明したが、それではどのような場所で火災は多く発生しているのだろうか。建物の種類別に見た件数は次の通りで、一般住宅(いわゆる戸建)が最上位についている。その数、およそ7800件/年。
次いで共同住宅が3774件と、住宅火災が多分を占めていることが分かる。「特定複合用途」とは2つ以上の用途に用いられる建造物のことで、そのうちの用途の一つが劇場や集会場、飲食店、病院、旅館、養護学校など特定の用途に該当するものを指す。例えば1階が飲食店で2階以上がオフィスのようなビルを指す(特定用途に該当しない複数の用途に用いられるのは「非特定複合用途」)。大規模火災などが報じられる場合が多いため、工場や作業場の件数も多数に登るように思えるが、実際には1598件と順位の上では4番目。
最後は火災のうち住宅で発生したものに関して、その火災で命を落とした人の世代区分別割合(放火自殺者や心中、巻き添えを受けた者、年齢不詳は除いて再計算している)。
元々高齢者の数・全人口比は増加する傾向にあるのだが、それでもなお人口構成比以上に高齢者の割合が大きく、さらに猛烈な勢いで増加中なのが分かる。これは運動能力が低下しているなどで、逃げ遅れたり着衣が着火してしまうことを起因としていることに加え、高齢者の一人暮らし、寝たきりあるいはそれに近い状態の人が増加していること、そして高齢者の中でもより歳を取った人の数・割合が増加しているのも原因として考えられる。
ただし直近2年に限れば、高齢者の比率が減少し、6歳から64歳層の比率が再び増加している。これが一時的なものか、あるいはトレンドの転換による動きなのか、もう少し状況を見極めたいところだ。
火災はすべての宝物を一晩で奪う、非常に影響力の大きい災害。火がつきやすいものを外に置かないなどの配慮はもちろんだが、日常生活でも火の用心は欠かせない。また、お年寄りがいる世帯では寝たばこをしないよう心掛ける・うながすなど、さまざまなルール作り、万一の際の備えが必要に違いない。
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