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平日の携帯ネットや通話利用時間は小学生36分・中学生83分

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 平日でも合間を縫ってスマホ操作。夢中になるのも仕方がないが

小中学生の携帯電話の平日利用、1日1時間以上はどれほどいるのか

この数年の間に日常生活に大きな変化をもたらした携帯電話、特にスマートフォン。子供たちの間にも確実に浸透している。その利用時間の現状と学力テストとの関係を文部科学省が2016年9月に発表した全国学力・学習状況調査(※)の結果から確認していく。

今調査においてゲームのプレー時間は以前から調査が行われているが、携帯電話(従来型、スマートフォン双方)を用いてインターネットにアクセスしたり、メールや通話をする利用性向は、2014年度分からの実施となるため、経年データが今回も合わせて3年分しか無い。その3年分に関する調査結果は以下のグラフの通り。小学生は携帯電話そのものを持っていない、あるいは所有していてもインターネットにアクセスする許可をもらっていない事例が多く、中学生と比べると随分と低い値に留まっている(今件は保有していない人も含めた、全体の平均値)。なお1時間未満の回答選択肢には「持っていない」以外に「30分未満」「30分から1時間未満」がある。

↑ 平日に従来型携帯電話やスマートフォンで通話やメール、インターネット(ゲームは除く)を1時間以上する人の割合
↑ 平日に従来型携帯電話やスマートフォンで通話やメール、インターネット(ゲームは除く)を1時間以上する人の割合
↑ 平日に従来型携帯電話やスマートフォンで通話やメール、インターネット(ゲームは除く)をする時間(平均、時間)
↑ 平日に従来型携帯電話やスマートフォンで通話やメール、インターネット(ゲームは除く)をする時間(平均、時間)

今件ではインターネットにアクセスしていても、その利用理由がゲームだった場合は含まれていない。昨今のゲームが多分にインターネットへのアクセスを前提とするものであることを考えると、通話分を差し引いても、総合的なネットアクセス性向はもう少し高い値となる。

とはいえ、中学生では半数近くが平日でも1日1時間以上メールや通話、ブラウザによるウェブサーフィン(多分にソーシャルメディアへのアクセス)などを行っており、平均時間は1.38時間、つまり83分に達しているのが実情。ちなみに中学生では全体の1割近くが「1日4時間以上携帯ネットや通話をしている」と回答している。今件調査は小中学生限定だが、仮に高校生にも同様の調査をすれば、当然もっと高い値となるに違いない。

携帯利用時間が長いと学力テストの正答率は……

1日は24時間である原則は誰にも変えられないため、携帯ネットの時間が長ければ長いほど、他の時間が削られてしまう。そしてその行為は何らかの形でひずみを生むことになる。保護者が気になるひずみの一つが学力にあるわけだが、少なくとも相関関係においては次のグラフの通り、「携帯ネットの時間が長い子供ほど、学力テストの正答率が低い」結果が出ている。

↑ 平日に携帯電話でネットや通話、メールをする時間と、教科の平均正答率との相関関係(小学生)(2016年度)
↑ 平日に携帯電話でネットや通話、メールをする時間と、教科の平均正答率との相関関係(小学生)(2016年度)
↑ 平日に携帯電話でネットや通話、メールをする時間と、教科の平均正答率との相関関係(中学生)(2016年度)
↑ 平日に携帯電話でネットや通話、メールをする時間と、教科の平均正答率との相関関係(中学生)(2016年度)

これは直接の因果関係、つまり「携帯ネットの時間が長いのが原因で、学力テストの正答率が低くなる」を意味しない。あくまでも「携帯ネットの時間が長い子供ほど、正答率が低くなる傾向がある」に過ぎない。単純に元々低正答率を出す学力の子供ほど、携帯ネットの時間が長い場合もありうる。

とはいえ、多分に因果関係も想起できる関係に、携帯ネットの時間と学力があることにも違いは無い。今件結果はその相関関係を立証すると共に、因果関係についての可能性を一つ積み増すものに違い無い。ここまできれいなカーブを描いている以上、その事実は否定できまい。

一方、携帯電話を持っていない人の値が、「30分未満」と比べてほぼ同率、むしろやや低めなのも興味深いところ。やはり相関関係であることに留意が必要だか、「利用を禁止するよりは短時間ではあるが利用させた方が良い」との大義名分のヒントとなるかもしれない。

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※全国学力・学習状況調査の調査要綱

直近分は2016年4月19日、国公立及び私立の小中学校に対し悉皆調査方式(標本調査ではなく全体を調べる)で行われたもので、実施学校数は小学校が2万0049校、中学校が1万0526校。教科調査(学力テスト)は国語A・Bと算数(数学)A・B、そが実施されている。なお2011年度は震災のため調査が中止されている。また今回年度は4月に発生した熊本地震により、熊本県の全校や宮崎県、大分県の一部の学校で同一期日での調査実施が見送られている。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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