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世界の二酸化排出量の現状を探る

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 工場から排出される多量の二酸化炭素。国で仕切り分けすると……!?

中国がトップ…主要国の排出量と世界全体比

環境問題などで話題に登ることが多くなった、二酸化炭素の排出量問題。その現状を国際エネルギー機関(The International Energy Agency (IEA))の公開データ(現状では2014年時点の値が最新値)から探る。なお今件の各値は燃料消費行動に伴う二酸化炭素排出量であり、人間などの生命体の生体活動に伴い排出される量は勘案されていない。

まずは世界全体の二酸化炭素排出量における各国比率。中国・アメリカ合衆国の順だが、この順位はここ数年変わりが無い。

↑ 世界の二酸化炭素排出量比率(2014年時点、IEA調べ)
↑ 世界の二酸化炭素排出量比率(2014年時点、IEA調べ)
↑ 世界の二酸化炭素排出量(億トン)(2010-2014年時点、IEA調べ)(直近年上位国のみ)
↑ 世界の二酸化炭素排出量(億トン)(2010-2014年時点、IEA調べ)(直近年上位国のみ)

注目すべき動きとしては、上位国、特に新興国で増加を示していること。2014年はといえば、2007年から始まる金融危機、そしてリーマンショックを経て、欧州債務危機では最大の山場を越え、世界の経済が回復の動きを確かなものとしつつある年。消費・生産が活発となり、当然排出量も増加する。アメリカ合衆国の動向で2012年を底にし、2013年から増加に転じているところからも、景況感が上向きになっていることがうかがえる。

他方、中国の増加ぶりが目に留まる。最新値となる28.2%は、中国一国で世界の1/4超の二酸化炭素を排出している計算。また絶対量は中国と比べれば少ないものの、インドも伸び方が著しい。他方アメリカ合衆国では経済復調の中でも伸び率は穏やかで、炭酸ガス排出対策が進んでいることがうかがえる。ドイツやロシアではむしろ減退の動きすら見られる。

日本の増加に関しては、単なる経済復興だけでなく、震災起因による発電様式の変更を余儀なくされたことによるも小さくない。ただし直近年では前年比でマイナスに転じており、他国同様効率化が進んでいる動きが見受けられる。

経年変化と国民一人当たりと

主な上位国について、前世紀末の2000年以降の、各年における全体比の動向を示したのが次のグラフ。中国、アメリカ合衆国など上位国の相対的な位置関係の変化が見て取れる。

↑ 世界の二酸化炭素排出量比率(2000~2014年時点、IEA調べ)(赤囲みは日本)
↑ 世界の二酸化炭素排出量比率(2000~2014年時点、IEA調べ)(赤囲みは日本)

上位2国(中国・アメリカ合衆国)による全体比は上昇する一方、2006年に米中間で順位が入れ替わり、その後も両国の差異は広がるばかりとなっている。また2009年以降は第3位の位置にあるインドもシェアを拡大する一方で、直近2014年では上位3か国で全体の50.4%にまで達している。

最後に示すのは、排出量を単純に各国人口で除算して、一人当たりの排出量を算出したグラフ。

↑ 一人当たりの二酸化炭素排出量(2010~2014年時点、排出量上位国、IEA調べ)(トン/年)
↑ 一人当たりの二酸化炭素排出量(2010~2014年時点、排出量上位国、IEA調べ)(トン/年)

各国の国内事情、都市集中の度合い、工業化・公害対策技術の違いなど多種多様な要因がある。単純に「一人当たりの量」だけで各国の二酸化炭素排出量について判断することは難しい。

例えば今グラフでは、中国の値はアメリカ合衆国の約4割でしかないが、上のグラフにあるように「国単位での総量」では中国ははるかにアメリカ合衆国を上回る値を占めている。国単位で「中国」の二酸化炭素排出量が世界最大である事実に違いはなく、たとえ一人頭の排出量が他国より少なくとも、「国単位として」科せられた責任は大きい。そもそも「国」とはその領域内におけるさまざまな要素の集合体であり、内包するものを統括する存在なのだから。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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