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2か月以上の家賃滞納率は1.6%…賃貸住宅の平均家賃滞納率の現状を探る

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 家賃は払いたし、残高はゼロ…と滞納してしまうケースも

賃貸住宅住まいの人は原則として毎月家賃を何らかの形で支払ねばならない。ところが手違い、金銭繰りがつかないなどの理由で滞納してしまうケースがある。その実情を賃貸住宅の管理会社による協会「日本賃貸住宅管理協会」の調査「賃貸住宅景況感調査日管協短観」※から確認する。

月末、25日、10日前後など、物件によって日取りは異なるが、賃貸住宅の家賃は原則として月1回支払いが行われる。昨今では事前に取り交わした契約に従い、自動的に金融機関の口座から引き落とされる場合が多い。その自動引き落としだが、銀行口座残高の調整ミスで残高不足から家賃の引き落としを行えず、気がつけば家賃を滞納してしまうトラブルもある。家賃引き落とし専用の口座を別途設けていても、その口座への入金をつい忘れてしまうとの事例も想定される。

そこで「(調整ミスの可能性がある)月初全体の滞納率」「(ミスの可能性が排除された)月末での1か月滞納率」「(状況が悪化した、連続した滞納状態の)月末での2か月以上滞納率」それぞれについて、直近値を元にグラフ化したのが次の図。

↑ 家賃滞納率(2016年4月~2016年9月)
↑ 家賃滞納率(2016年4月~2016年9月)

残高調整ミスは頻発する事案のようで、今回計測期において、全体では6.9%も発生している。大体14世帯に1世帯の割合。一か月間丸々の滞納となると2.7%、2か月連続して「危険信号」レベルになると1.6%の域に達する。

2か月以上の滞納率1.6%。これは「賃貸住宅の63軒に1軒は現在2か月以上家賃を滞納している」状況となるわけだが、切り口を変えて「通常支払い率98.4%」と表現すればそこそこ良い方に見える。ただしリスクは低いに越したことは無い。例えば5階建・12列(=60部屋)の大型団地なら、1個あたりほぼ1世帯は2か月以上の家賃滞納世帯が存在する計算になる。

そして2か月もの滞納状態ともなれば、状況がさらに悪化し、未回収(+管理会社の費用持ちでの原状復帰作業)となる可能性は高い。また、これには「空き室率」は勘案されていないため、賃貸住宅の採算率はそれより悪くなる(空き室率は1割前後が一般的)。

管理会社へ連絡をしないままの家賃滞納は、管理会社の立場からでは「ミスによる滞納」なのか、それとも家計の事態悪化が継続し「経済的事由による月末までの滞納」「2か月以上の滞納」につながるのか、判断はできない。手間はかかり、住民に対する不信感・不安感は募り、印象は悪くなる。

現在賃貸住宅市場は借り手が優位な市場状況ではあるが、賃貸住宅利用者は「住まいを借りている立場」であることを忘れるべきではない。理由はともあれ、万一にでも家賃滞納を起こしてしまったら、すぐにでも家主、管理会社に一報を入れ、最善を尽くしてほしいものだ。

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※賃貸住宅景況感調査日管協短観

日本賃貸住宅管理協会会員に対して半年ごとに定期的に行われている調査で、直近は2016年10月から11月にインターネットを用いて実施。有効回答数は217社(回収率19.0%)。2016年4月1日から2016年9月30日に関する状況についての回答。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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