敷金礼金の実態、そして地域での違いを探る
全国平均の敷金は家賃の1.26か月分、礼金は1.03か月分
賃貸住宅を借りる契約をする際に必要となる敷金や礼金。慣習として家賃の何倍かを支払う事が当たり前のようになっているが、実情としてはどれほどの額が相場なのだろうか。その実情を賃貸住宅の管理会社による協会「日本賃貸住宅管理協会」の調査「賃貸住宅景況感調査日管協短観」※から確認する。
まずは用語の解説。「礼金」は言葉通り賃貸契約が新規に結ばれた時に、賃貸住宅業者貸主に支払われる「お礼金」のこと。一方「敷金」は「賃貸住宅に土台として敷かれた(、そして住宅利用時に少しずつ損耗していく)お金」との概念によるもの。その賃貸住宅から退去する際に、次の借主が支障なく使えるよう、原状復帰のために使われるお金でもある。ただし通常使用における損耗は、自然に生じるものとして、その分の責は利用者には無いとするのが一般的。
今回の計測期間(2016年4月1日から2016年9月30日)において、全国平均では「礼金」は家賃の1.03か月分、敷金は1.26か月分との結果が出ている。
関西圏では敷引き(解約引き。入居時の保証金のうち半分程度を退去時の原状復帰費用として返還しない仕組み。保証金そのものは家賃の半年から8か月分とされ、これには礼金も含まれる。この制度が導入される物件では更新料も無いのが原則)制度が商習慣として根付いて「いた」(過去形であることに注意)。その名残もあり、礼金の額が他地域と比べてかなり高い結果が出ている。
また都市圏と比べるとその他地域で敷金がやや高め(大体0.4か月分プラス)に出ているのが気になる。契約物件のリスクが高め(≒敷金で後片付けをしなければならない事態の発生可能性が高い)なのかもしれない。
今件値は業者側の調査に基づいた結果。地域、周辺環境の違いも多分に影響するが、この値を覚えておけば、無駄な探索をしたり、怪しげな物件に惑わされる心配はずいぶんと減る。
入居時の条件交渉の変化をさぐる
各賃貸住宅管理会社が管理している賃貸物件において、敷金や礼金、そして賃料、さらには設備の設置(エアコンや洗濯機など)について、居住希望者との間での交渉度合はどのような変化を示しているのか。借り手・貸し手の力関係を推し量れるデータともいえるが、それぞれについてその移り変わり(前年同期比)を尋ねたところ、全国では回答企業の6割強が入居の際に「賃料を下げてほしいとの交渉が増加している」と返答した。礼金・敷金などの初期費用の値引きを求める度合いが増加したとの意見も6割近くに登っている。
今半年期では首都圏と関西圏で、賃料や礼金・敷金などに関する差異はほとんど無い。設備設置の面では首都圏がやや増加の動きを示しているが、関西圏ではむしろ減少意見の方が多い。
その設備設置交渉傾向はむしろ首都圏・関西圏「以外」のエリアが強い動きを示している。「以外」エリアでは増加したとの意見が33.0%にも達し、減少意見は11.0%でしかない。交通機関や商店、公共施設などの周辺環境が首都圏・関西圏と比べれば物足りない面があることから、その分内部設備の充実を欲しているものと考えられる。
ともあれ、全国、首都圏・関西圏共に、賃料・礼金など金銭面において、5割から6割程度が「交渉増加」と回答している結果が出ている。ダメ元との考え方もあるのだろうが、「賃貸住宅は入居希望者が主導権を握る借り手市場」との認識に違いはないのだろう。
■関連記事:
60年近くに渡る民間・公営賃貸住宅の家賃推移をグラフ化してみる(2016年)(最新)
※2017.01.09.一部訂正を行いました
※賃貸住宅景況感調査日管協短観
日本賃貸住宅管理協会会員に対して半年ごとに定期的に行われている調査で、直近は2016年10月から11月にインターネットを用いて実施。有効回答数は217社(回収率19.0%)。2016年4月1日から2016年9月30日に関する状況についての回答。