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80歳以上でも約4割は運転免許を所有、2割近くは毎日運転している実情

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 高齢者の運転。判断能力や反応速度が運転技量を満たすものなら歳は問題ないのだが(写真:アフロ)

高齢者の増加に伴い高齢者による交通事故が以前よりも注目される今日この頃。高齢者における自動車などの免許取得状況や運転実情を、内閣府が2017年1月末に発表した「交通安全に関する世論調査」(※)の結果から確認していく。

自動車の実働数や免許所有者の実数は公的機関の公表値で確認ができるが、免許所有者がどの程度運転をしているかまでは分からない。免許を所有していても身分証明書的な使い方をしている人、運転を自主的にしていない人も少なくない。

今回の調査では、回答者が自動車やバイクの運転免許を所有しているか否かだけでなく、どの程度の頻度で運転をしているか否かを尋ねている。よって免許所有の是非だけでなく、運転状況を推し量れる貴重な資料となっている。次以降に示すのはその調査項目の結果。自動車やバイクの免許の所有と運転状況に関して、「免許有・ほぼ毎日」「免許有・時々」「免許有・ほとんど無し」「免許無し」「分からない」から選んでもらっている。例えばいわゆるペーパードライバーは「免許有・ほとんど無し」に該当する。

↑ 自動車やオートバイを運転するか(2016年11月)
↑ 自動車やオートバイを運転するか(2016年11月)

今件が18歳以上に対する調査であることを再確認した上で。全体では免許所有者はほぼ8割。毎日運転している人は5割強となっている。無論免許は無いものの配偶者に運転してもらって自動車に毎日乗っている人もいるだろうが、その場合は単純に「免許無し」となる。今件はあくまでも「自分で免許証を持っているか否か」「その免許証の資格に基づき運転をしているか」が問題となるのであり、自動車やバイクを利用しているか否かではない。

男女別では男性の方が利用者は多い。これは就業などで自動車を必要とする人の割合が大きいなど、ライフスタイルの上での必要性の違いが数字となって表れている。男性は9割近くが運転免許証所有者との計算になる。ペーパードライバー的な人は7.4%。

↑ 自動車やオートバイを運転するか(2016年11月)(地域別)
↑ 自動車やオートバイを運転するか(2016年11月)(地域別)

地域別・居住都市規模別では、大よそ都心部ほど免許所有者は少なくなり、運転頻度も低いものとなる。東京都区部では半数近くが免許を所有しておらず、時々以上の頻度で運転する人も4割に満たない。公共交通機関の発達により、自動車やバイクを自ら運転する必要が無い人が多いのが主要因。逆に町村部では免許非所有者は1割程度しかおらず、毎日運転する人も3/4を超えている。

地域別の動向もほぼ都市化、公共交通機関の発展度合い、人口密集度と連動している。関東や近畿は他地域と比べて明らかに免許非所有者が多く、運転頻度の高い人も少なめ。逆に北陸・東山・四国などは毎日運転者の比率が一段と高くなっている。北海道の運転度合いがやや低めなのは意外なところか。

↑ 自動車やオートバイを運転するか(2016年11月)(男女・年齢階層別)
↑ 自動車やオートバイを運転するか(2016年11月)(男女・年齢階層別)

男女に仕切り分けした上での年齢階層別では、男性は60代までほぼ高い値を示しており、就業による免許の必要性が改めて確認できる。20代までは低めの値が出ているのは就学中であるケースのパターンと、金銭的な余裕がまだ無いからだろうか。70歳以上でも高い値を維持し続けているのは注目に値する。

他方女性は20代までは男性とさほど変わらないが、30代以降は明らかに低めの値を示す。就業用の必要性の有る無しが大きく影響しているのだろう。他方70歳以上では男性とは一段と大きな差異が生じている、女性の免許所有率が大きく下がっているのは注目に値する。女性の方が長生きしているからなのか、あるいは男性と比べて運転技量の上でのリスクの見極めが適切なのかもしれない。

↑ 自動車やオートバイを運転するか(2016年11月)(詳細年齢階層別)
↑ 自動車やオートバイを運転するか(2016年11月)(詳細年齢階層別)

最後は詳細な年齢区分別。男女別のが開示されていないのは残念だが、70歳以降の動向も詳しく確認できる。60代前半以降、つまり定年退職者が出始める年齢から、免許所有率も運転頻度も少しずつ減退していくが、70代、80代以降でもそれなりの人が免許を所有し続け、高い頻度で運転をしている。80歳以上全体でも37.8%が免許を持ち、18.9%がほぼ毎日運転をしていると回答している。

地域別や居住地域別とのクロス回答が非公開なので推測でしかないが、高齢者の運転者の多分は地方、町村部に居住し、生活上必要性が高いがために運転をしていることは容易に想像ができる。一方、医療技術や公衆衛生の進歩発展に伴い人の心身能力の老化が昔と比べればゆるやかであるのは事実だが、そして個人差も多々あるものの、一定の年齢以上の人に老化が生じていないことはありえない。ほんのわずかな判断の遅れが重大な事故につながりうるし、突発性事案の発現リスクが高まっていることも否定できない。さらに交通事故は単純に自己責任と切り捨てることも不可能。

社会を取り巻く状況の変化に伴い、どのような施策を成していくべきか。現状を見極め将来を見越し、よりリスクの少ない選択をしてほしいものである。

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※交通安全に関する世論調査

2016年11月17日から27日にかけて、層化2段無作為抽出法によって選ばれた全国18歳以上の日本国籍を持つ人に対し、調査員による個別面接聴取方式にて行われたもので、有効回答数は1815人。男女比は856対959、世代構成比は18-19歳25人・20代119人・30代224人・40代283人・50代281人・60代397人・70歳以上486人。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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