米国の人に「自国内の民主主義体制を維持していくのには何が必要か」をたずねてみた
アメリカ合衆国は世界でも有数の強固な民主主義体制を維持している大国として知られている。その自国民は民主主義を維持するために何が必要と考えているのだろうか。その心境を同国の民間調査PewReserchCenterが2017年3月に発表した調査報告書「Large Majorities See Checks and Balances, Right to Protest as Essential for Democracy」(※)から探る。
次のグラフは調査対象母集団に対し、アメリカ合衆国の強固な民主主義体制を維持していくのには、政治的な仕組みとして何が必要、確保されねばならないかに関して、提示された選択肢にどれほど同意するか否かを答えてもらったもの。公明正大な国政選挙の実施に関してはほぼ全員が重要であるとの認識を示している。あまり重要でないとの答えは2%でしかない。
日本ならば司法行政立法の三権分立に相当する、大統領と議会と司法の相互監視・独立、さらにはそれぞれの権限のパワーバランスの維持が欠かせないとの意見にも大よそが同意。やや重要度のウェイトが低いが、重要さを覚えない人の割合は2%のみ。
他方、政府に対する非暴力的な抵抗の権利や少数意見の尊重、そして報道組織による政治指導者の批判の自由に関しては、重要であるとは思わない人の割合はごく少数に違いないものの、大変重要とはいいがたく、それなりの重要さとの判断を示す人が増えていく。特に報道周りの回答では大変重要との意見は2/3を切り、そこそこ重要との意見が2割に達している。民主主義体制の維持に現在の同国の現状の報道機関がどのような役割を示しているのか、色々と考えさせられる値ではある。
これを回答者の支持政党別に、「大変重要」との回答率のみを抽出した結果が次のグラフ。先の大統領選挙前後のアメリカ合衆国内の動向を推し量れる値となっている。
公明正大な国政選挙への回答率はさほど変わりが無い。意外にも三権分立的な行政司法立法の相互監視システムにも差異は無し。ところが「政府に対する非暴力的な抵抗の権利」「少数意見の尊重」「報道組織が政治指導者を批判する自由」に関してはいずれも共和党(大よそ保守的方向性、現大統領のトランプ氏所属)支持者の回答率は低く、民主党(大よそリベラル的方向性、前大統領のオバマ氏所属)支持者のは高い。
民主主義的な権利ではあるが、同時にリベラル的思考が強く、保守的発想の観点では抵抗も強いこれらの選択肢で、それぞれの支持政党≒政治・社会的思想の差異が出ているのは興味深い。これもまた、アメリカ合衆国における考え方の分断の表れの一つなのかもしれない。
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※Large Majorities See Checks and Balances, Right to Protest as Essential for Democracy
2017年2月7日から12日にかけてアメリカ合衆国内に住む18歳以上の男女に対して電話応対方式で行われたもので、有効回答数は1503人。377人は固定電話、1126人は携帯電話経由(そのうち680人は自宅に固定電話無し)。国勢調査の結果を基にウェイトバックが行われている。