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【リオ五輪】競泳ニッポン出陣!注目すべきスイマーは?

萩原智子シドニー五輪競泳日本代表
選手達から「泳ぎやすい」と好評のオリンピック・アクアティック・スタジアム(写真:ロイター/アフロ)

複数名のスーパーエース

リオデジャネイロ五輪大会初日は、最も注目されている競泳競技がスタートする。「複数の金メダルを含むメダル獲得を」目標に掲げる競泳日本代表には、複数名のスーパーエースが存在する。

萩野公介(東洋大4年)は、出場する200m・400m個人メドレー、200m自由形、4×200mフリーリレー、全種目で金メダルを狙える位置にいる。昨年の世界選手権、400m個人メドレーで日本人初の連覇を達成した瀬戸大也(早稲田大4年/JSS毛呂山)は、メダル圏内の200mバタフライでも出場権を獲得。女子200m平泳ぎで今季世界ランク1位の金藤理絵(Jaked/ぎふ瑞穂スポーツガーデン)、昨年の世界選手権で同種目を制した渡部香生子(早稲田大2年/JSS立石ダイワ)、同大会200mバタフライの金メダリスト・星奈津美(ミズノスイムチーム)と実力者揃い。

平井伯昌ヘッドコーチも「金(メダル)を狙う人が多い。アテネ(大会)の3には近づけるか。」とチームの仕上がりの良さを強調している。複数名の金メダル候補が存在することにより、プレッシャーが分散され、大会まで集中できる環境が整いやすい。そして世界トップを目指す強い覚悟がチーム全体に広がり、戦う集団に変化していく。

重要な初日の戦い

日本にとって最も重要になるのは、競泳初日に行われる男子400m個人メドレーだ。Wエースの萩野と瀬戸の結果次第でチームの雰囲気は変わってくるだろう。「初日の4個メ(400m個人メドレー)が大きな流れを作る。」と平井監督も話しているが、本人たちも「日本チームにいい流れを作りたい。」と自身の役割を自覚している。

4年前のロンドン五輪では、当時高校生だった萩野が初日の同種目で銅メダルを獲得。この快挙がチームに勢いを与え、競泳日本は戦後最多11個のメダル獲得へとつながった。

互いを認め合い、尊敬し合い、幼い頃から勝負してきた二人。個人メドレーでの得意種目も、萩野は背泳ぎと自由形、瀬戸はバタフライと平泳ぎと異なる。手の内を知り尽くす2人が、五輪の決勝レースで金メダル争いを演じる可能性は非常に高い。しかし、二人は「相手は気にせず、自分らしいレースがしたい。」と話す。敵はライバルではなく、自身の心。ライバルに勝つことよりも自分自身に打ち克つことの方がよっぽど難しい。大一番で迷うことなく、自分を信じて泳ぎ切れるか。この克己心が二人を世界トップへと押し上げるだろう。初日から日本勢のワンツーフィニッシュに期待したい。

ベテランの存在感

ベテラン勢の存在も心強い。ロンドン五輪で3つのメダルを獲得した入江陵介(イトマン東進/26歳)、鈴木聡美(ミキハウス/25歳)の調子も上向きだ。入江は「自分のやるべきことは変わらないので、相手に惑わされないようにしっかり自分のレースを貫いてやりたいです。」と冷静さを失わず、心に闘志を抱く。彼らの経験とという情報は、チームにとって大きなエネルギーとなる。

歴史が動く大会4日目

男子4×200mフリーリレーは、歴史を動かすレースになりそうだ。エース萩野公介を筆頭に、ベテラン松田丈志(セガサミーホールディングス(株)/SPEED0 SWIM CLUB/32歳)、勢いのある小堀勇氣(ミズノスイムチーム/22歳)、江原騎士(自衛隊体育学校/23歳)と最強メンバーが揃った。チーム全員の気持ちは「金メダルを狙う。」とぶれていない。その根拠は、今シーズンのタイムだ。4人の合計タイムでみると、アメリカ、オーストラリアに次いで3位に位置している。メダル獲得なら、1964年東京五輪以来の52年ぶり、金メダル獲得なら1936年ベルリン五輪以来80年ぶりとなる。大会4日目、日本水泳界に新しい歴史が刻まれるよう応援したい。

「東京五輪世代」の躍動に期待

さらに注目すべきは“東京五輪世代”と呼ばれる中高生スイマーたち。世界一厳しいと言われる日本の競泳五輪選考会を乗り越え、5名の中高生が代表権を獲得した。

中でもバタフライ、自由形でリレーを含めた7種目にエントリーしている池江璃花子(ルネサンス亀戸/淑徳巣鴨高1年/16歳)の活躍はめざましい。「7種目。正直ちょっと多いかなと思うが、たくさん泳げるのはプラス。」と前向きにチャレンジする。海外勢に引けを取らない、持ち味の大きな泳ぎとスピードを武器に、恐れることなく前半から飛び出せるかがポイントとなる。

池江と同い年、親友の今井月(ルナ/豊川高1年/15歳)は、200m個人メドレーで代表を掴んだ。「2人で一緒に五輪へ行こう」と約束をしていたと言う今井は、世界クラスの実力を持つ、得意の平泳ぎでどこまでトップへ迫れるかが鍵となる。

200mバタフライに出場する長谷川涼香選手(フィットネスクラブ東京ドーム/淑徳巣鴨高等学校2年/16歳)からも目が離せない。「自分の良いところはマイペースなところ。オフが暇なので、勉強をしています。日本史と英語を終わらせたい。」と文武両道を目指す選手でもある。

今シーズンに入り、勢いよく記録を伸ばし、メダル圏内に近づいた。平井監督も「いい意味でのマイペース、いい練習を繰り返しできている。ああいう年代の選手は急激に伸びる瞬間があるので、それが今大会であってほしいなと思います。」と若手の活躍にも期待を寄せている。

若手には、バルセロナ五輪で史上最年少の金メダリストとなった岩崎恭子さんのような、若さゆえの伸びしろもあり、非常に楽しみだ。そんな“東京五輪年世代”の活躍からも目が離せない。

シドニー五輪競泳日本代表

1980年山梨県生まれ。元競泳日本代表、2000年シドニー五輪に出場。200m背泳ぎ4位。04年に一度引退するが、09年に復帰を果たす。日本代表に返り咲き、順調な仕上がりを見せていたが、五輪前年の11年4月に子宮内膜症・卵巣のう腫と診断され手術。術後はリハビリに励みレース復帰。ロンドン五輪代表選考会では女子自由形で決勝に残り意地を見せた。現在はテレビ出演や水泳教室、講演活動などの活動を行っている。

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