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日本列島と朝鮮半島~お正月に餅の入ったスープを食べる人たち

韓東賢日本映画大学教員(社会学)
地方によってバリエーション豊かな日本のお雑煮(写真:アフロ)

SNS上を和ませる正月恒例の「お雑煮トーク」

各地方や家庭ごとの違いや特徴についての「お雑煮トーク」は、SNS上を和ませる年末年始の話題の定番だ。

「一般的に、東日本は焼いた角餅、西日本は焼かない丸餅と大別され、境となる富山・石川・岐阜・三重・和歌山県などでは両方の餅が混在している」「関西風のお雑煮と言えば白味噌仕立てを連想するが、西日本でも近畿・福井・四国の東部以外はしょうゆ味が優勢。少数派では出雲地方や能登半島の一部などに小豆雑煮の地域がある。味噌味のお雑煮を好む関西でも、赤味噌派・白味噌派に分かれる」(「るるぶ.com」より)とのことだが、角餅でも焼かない地域、丸餅でも焼く地域があったり、すまし汁でもしょうゆではなく塩のところもあったり、さらに具となると里芋、豆腐類、鶏肉、塩ぶり、塩鮭などを中心に野菜も様々で、共通項は「汁に餅が入っている」ということくらいしかないのではないか。そこには、その地方の風土や場合によっては地政学を含む歴史、各家庭の成り立ちが反映されているのだろう。

在日コリアンも朝鮮風のお雑煮トックを

わが実家では、多くの在日コリアン家庭がそうであるように「トック」を食べる。「トッ」が餅で「ク(ッ)」がスープ。文字通り、餅の入ったスープのことだ。「汁に餅が入っている」という共通項を満たしているので朝鮮風のお雑煮と呼んでいいだろう。

ただしトックに入れる餅は、日本の餅と違ってうるち米、つまり、もち米ではなく普段ご飯として食べている米の粉を蒸してついたものを棒状に伸ばした餅をスライスして使う。『ハンメの食卓~日本でつくるコリアン家庭料理』(NPO法人コリアンネットあいち編著)のレシピだと、スープはしょうゆとみりん、具は鶏ひき肉と錦糸卵、刻み海苔で、『朝鮮料理全集』(全鎮植・鄭大聲)では、スープはしょうゆと塩、具は鶏もも肉と人参、椎茸、三つ葉、錦糸卵、刻み海苔だ。わが家のスープは塩味、具は鶏と牛ひき肉、椎茸、錦糸卵、三つ葉、刻み海苔である。まあだいたいこんな感じで、日本のお雑煮ほどのバリエーションはないようだ。

南北朝鮮でも旧正月にはトックが欠かせない

『ハンメの食卓』には、「昔は年末に、棒状になったトックが売られていました。ハンメ(おばあちゃん)たちは娘たちと一緒に一口サイズに切りました。硬くて大変な作業でした。正月に食べるものだから、大人たちは『トックを何杯食べた?(何歳になる?)』と子どもたちに語りかけ、セベトン(お年玉)をあげました」というコラムが添えられていた(今も韓国では数え年で年齢を数える)。「今はええなあ。いつでもトックがバラで売っとる」という「ハンメの一言」もあったが、今はスライスしたものが真空パックされて日本のどこでも簡単に入手できる。

もちろん、南北朝鮮ともにお正月(旧正月で祝う)にはトックを食べる。いずれにせよ、日本列島にも朝鮮半島にも、お正月には「餅の入ったスープ」を食べる人たちが暮らしているのだ。

(『週刊金曜日』2015年1月16日号「メディアウォッチング」を修正) 

新年あけましておめでとうございます!

ということで、昨年1月の記事の転載ですがごあいさつがてら、恐縮しつつちょっと軽めで明るい内容の話題提供を実家から。

昨年は縁あってこちらに書かせていただく場をえることができました。ご愛読くださった皆さま、本当にありがとうございました。反応や反響の声はとても励みになりました。7月にはMVAにも選出していただき感謝しております

何よりたくさんの方に読んでいただける場――巨大ポータルが運営するネットメディアにほんの少しとはいえかかわることができて、本当に勉強になりました。今後も意義ある問題提起や情報提供をしつつ、ネットメディアをよりよい場にしていくお手伝いもできたらと思っています。

本年も、どうぞよろしくお願いいたします。

日本映画大学教員(社会学)

ハン・トンヒョン 1968年東京生まれ。専門はネイションとエスニシティ、マイノリティ・マジョリティの関係やアイデンティティ、差別の問題など。主なフィールドは在日コリアンのことを中心に日本の多文化状況。韓国エンタメにも関心。著書に『チマ・チョゴリ制服の民族誌(エスノグラフィ)』(双風舎,2006.電子版はPitch Communications,2015)、共著に『ポリティカル・コレクトネスからどこへ』(2022,有斐閣)、『韓国映画・ドラマ──わたしたちのおしゃべりの記録 2014~2020』(2021,駒草出版)、『平成史【完全版】』(河出書房新社,2019)など。

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