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ネット投票と電子投票の違い

原田謙介政治の若者離れを打破する活動を10年以上
Youthcreate実施の模擬投票の際の写真

先日行われた衆議院選挙は「インターネット選挙運動解禁後初の衆議院選挙」として、少し着目を浴びた。

国政選挙においては昨年の参議院選挙ですでにインターネット選挙運動は解禁されているので、特段新しい話でもないが、一つの移り変わりの始まりだろう。

とりあえず「インターネット選挙運動」について

自分が、インターネット選挙運動解禁に関する活動を初めた2012年頃においては、「インターネット選挙運動」いわゆる「ネット選挙」と、「ネット投票」がかなり混同されていた。かなりこの2つの違いへの理解は進んだとはいえ、まだ同じような意味で話している人もいる。

インターネット選挙運動・・・特定の選挙において、特定の候補者の当選(または落選)を目的として行う運動です。「ネット選挙」といわれる場合はこれ。日本では2013年の参議院選挙から解禁された。世界的にみてもあり得ない遅さ・・・

例としては

・候補者がブログやソーシャルメディアで、支持を訴える。

・有権者がtwitterで、特定の候補者への投票を求める投稿をする。

・演説をUstream中継する。

・候補者や政党が投票を求めるメールを送信する。

・政党がバナー広告を掲載する。

ネット投票

これは一番すんなり入りやすいと思う。インターネットを使って投票を行うこと。例えば、家でパソコンから投票したり、外出先でスマホ経由で投票したりとそんな感じ。すごく便利になるし、投票率も上がりそうなものだが、日本では実現のめどはたっていないし、実現に向けた議論も特に起きていない。

世界をみてみると、地方自治体レベルではネット投票を導入している国はちらほらと。でも、国政レベルの選挙で導入しているのは、おそらくバルト三国のエストニアぐらいのものかと。エストニアはネット投票と実際の紙での投票の両方を併用しており、紙で投票したい人は紙で投票可能だ。

便利だけど、なかなか実現に向けてのハードルは高い。ハードルとしては、

・インターネットに不慣れな人への対応

・成りすましやデータの改竄などへの対応

などが言われている。

電子投票

決められた投票所に行って、タッチパネル式の機会なんかを使って投票すること。日本でも2002年に電子投票法が施行され、自治体の地方選挙で電子投票が可能になった。自分の出身県の岡山県新見市で初めて実施された。

開票にかかる時間の短縮や、どの候補者に入れたのかわからないあいまいな票が減ったりする利点がある。(候補者に二人、小林さんがいた場合「小林」とだけ書かれた場合は、この二人の得票率に応じて、比例配分される。例えば小林Aさんに0.65票、小林Bさんい0.35票という感じです。)

広く言えば、上記のネット投票も含んで言及されることもあるが、基本的にはどこか決められた場所にいく必要がある投票方法だと考えてください。

これもネット投票同様に信頼性や、有権者の慣れの問題なんかがあって、結局浸透していないまま。

まとめ:投票の質と、投票へのコスト

ということで、「ネット投票」と「電子投票」は違うんだということです。

うまく、導入されれば、「電子投票」は各選挙における行政側のコストは大幅に減ります。

「ネット投票」は加えて投票者のコストも大幅に減り、投票率向上につながると思います。

ただ、投票の際のコストが下がる分だけ、投票の質も下がる可能性があります。

投票するという行為は、一票を投じることが大事なのはもちろん、投票先を決めるときに色々と考えたり、選挙後にもひきつづき政治に関心を持つことなどへとつながる点も大事です。

投票のコストを下げると同時に、投票のの質をあげるための工夫も必要です。選挙・政治に関する教育や、選挙時の候補者間や候補者と有権者の間での政策議論などのさらなる浸透が求められます。

政治の若者離れを打破する活動を10年以上

1986年生まれ。岡山在住。愛媛県愛光高校、東京大学法学部卒。「学生団体ivote」創設。インターネット選挙運動解禁「OneVoiceCampaign」。NPO法人YouthCreate創設。「若者と政治をつなぐ」をコンセプトに活動。大学非常勤講師や各省有識者会議委員などとして活動を広げていく。18歳選挙権を実現し、1万人以上の中高生に主権者教育授業を行う。文科省・総務省作成「政治や選挙等に関する高校生向け副教材」の執筆者でもある。2019年参議院選挙・2021年衆議院選挙に立候補し敗れる。元岡山大学非常勤講師。元グローバルシェイパー東京代表。元中野区社会福祉評議会評議員

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