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憲法改正に賛成ではないのに、自民党に投票した10代の何が悪いのか

原田謙介政治の若者離れを打破する活動を10年以上
(写真:ロイター/アフロ)

参院選から一夜明け選挙結果含めて、色々な意識調査が出てきている。

一つの注目点であった改憲勢力で3分の2以上の議席獲得というラインを突破したことが注目点だ。そして参院選の間には特に憲法のことを口にしなかった安倍総理も憲法調査会の設置に関して”いよいよ憲法審査会に議論の場が移る”と言及するなど今後憲法改正に向けた議論が進んでいくことになりそうだ。

初の18歳選挙権導入の国政選挙ということで各メディアが10代の投票行動に関して色々な調査結果を公開している。10代の投票先や重視した政策に関してみてみる。

10代の比例区の投票先は自民党が多い

NHKの調査によると

比例代表では、自民党に投票した人と答えた人が42%と最も多く、次いで民進党が20%、公明党が10%などとなっています。

出典:NHK

同じく共同通信の調査によると

18~19歳に比例代表の投票先を聞くと、40.0%が自民党と答えた。民進党が19.2%、公明党が10.6%で続いた。

出典:共同通信

そのほか朝日新聞・読売新聞におていも自民党に投票した10代は、それぞれ40%・36%となっている。このように10代もほかの世代同様に自民党に投票した割合が多いようだ。

とはいえ改憲に賛成というわけではない

で、あれば改憲に賛成かといえばそうでもない。

NHKの調査によれば

今の憲法について、「改正する必要がある」と答えた人は22%、「改正する必要はない」が26%、「どちらともいえない」が52%でした。

出典:NHK

共同通信の調査を引用した日経新聞の記事によれば

憲法改正の是非を年代別にみると18~19歳は賛成が46.8%、反対が47.2%で賛否が拮抗した。

出典:日経新聞

となっており、 拮抗している状況となっている。

憲法改正に賛成でないのに自民党に投票しても問題ない

選挙前に、プレイボーイのインタビューにて、映画監督・森達也氏が

「憲法を守りたい」と「自民党支持」がなんとなくイコールになってしまっているレベルなら投票しないほうがいい。

出典:http://wpb.shueisha.co.jp/2016/07/06/67558/

と語り、賛否の声が巻き起こった。”なんとなく”とい部分に森氏が独特のニュアンスを込めているのだろうなと思いつつも、この言葉に自分は賛成できない。

投票の際に、何を重視するかは人それぞれ違う。もちろん、各政党は自分たちに有利なように争点を作る(あるいは争点を隠す)。マスメディアや有識者が、それぞれ”これが争点だ”という。そして、その争点を重要だと考えずに、投票先を決める人、あるいは投票に行かない人を非難することも多々ある。

何が争点かを明示するのはどんどんすればいい。でもその争点を世の中に対して押し付けることはやめてもらいたいと思うわけだ。

今の日本の選挙システムでは、党か個人の名前をかいて投票することしかできないいわけだ。自分と全く同じ考えの投票先なんてめったにないわけで、それぞれジレンマを抱えつつも一つの投票先を選ぶ。その投票先の選び方が、「憲法改正に賛成ではないけど、他の部分を考えたときに自民党」という思考でも問題ないわけだ。

どのテーマを重視しての投票でよいし、重視するものなくてもよい

10代は何を重視して投票したのか。

朝日新聞によれば、

景気雇用が28%・社会保障が15%・憲法が14%。以下子育て支援・消費税と続いていく

出典:朝日新聞

高齢者と見比べると社会保障への関心度は低いが、消費税への関心度は高いといった違いもある。

人によって関心分野は違うのだろうが、その人なりに悩んで政策や候補者を見比べて、投票する。

10代の方なりに身近なテーマに興味をもって、なんとか投票先を決めるということでいい。あるいは重視する政策なんてなくてもよいのかもしれない。初めて選挙に向き合って、自分なりになんらか考えたのならそれが大事なのだ。

EU離脱の住民投票とは違い、憲法改正に関しては改めて国民投票がある

昨晩TOKYO FMのSCHOOL OF LOCKという主に10代向けのラジオ番組にゲストとして出演させていただいた。この番組とは「18歳からの選挙権」と題して、去年の末から全国でのイベントやラジオの放送の中で、選挙・政治について一緒に考えてきた。

昨日リスナーの方から寄せられ声として、

「憲法改正に関しては改めて国民投票があるから今回は重視しなかった」というものがあった。これについても全くの同感。特に最近学校の授業でこのあたりのことを習ったばかりの10代にとってみれば、憲法改正に関して国民投票で改めてという感覚がおとなよりも強いのかもしれない。(もちろん、みんなが真面目に授業で習ったことを覚えてるかは怪しいが。。。)

EU離脱の住民投票とは違い憲法改正に関してはテーマじゃない。

この視点から考えても憲法に関して今回の選挙において重視しない人も合理的な選択ともいえる。

10代を責めれる立場にいる大人はいるのか?みんなが主権者教育の担い手かつ受け手になりたい。

もちろん、全く何も考えずに、あるいはちょっと周りの雰囲気に流されて投票に行ったという若者もいるでしょう。それは自分も嫌。何かしら考えて悩んで投票に行ってほしい。さらに悩んだことや投票結果をもとに今後また政治を改めて頭の片隅に置き続けてほしい。

でも、そんな10代を自分は責めれない。そんな10代は社会の雰囲気が、あるいは学校の教育が、あるいは政治の状況がある結果として今ここにいるから。

学校現場の変化は少しずつ起きている。合わせて社会全体が変わっていかなければ。今回、家族で投票所に足を運んだという話も色々と耳にした。親世代が子供とどのように政治の話をすればよいか戸惑っているという話も聞いた。

改めて社会全体がこれまでよりも政治を自分事として、常に頭の片隅においてもらいたい。自分が主役であると同時に、自分の隣の人も主役であると意識してほしい。

「○○はだめだ!!」なんて話で終わりたくない。

自分も引き続きやっていきます!

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政治の若者離れを打破する活動を10年以上

1986年生まれ。岡山在住。愛媛県愛光高校、東京大学法学部卒。「学生団体ivote」創設。インターネット選挙運動解禁「OneVoiceCampaign」。NPO法人YouthCreate創設。「若者と政治をつなぐ」をコンセプトに活動。大学非常勤講師や各省有識者会議委員などとして活動を広げていく。18歳選挙権を実現し、1万人以上の中高生に主権者教育授業を行う。文科省・総務省作成「政治や選挙等に関する高校生向け副教材」の執筆者でもある。2019年参議院選挙・2021年衆議院選挙に立候補し敗れる。元岡山大学非常勤講師。元グローバルシェイパー東京代表。元中野区社会福祉評議会評議員

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