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アストロH、いよいよ打ち上げへ ー2月17日(水)午後5時45分(日本時間)予定-

縣秀彦自然科学研究機構 国立天文台 准教授
JAXA webページより引用

本日、2月17日(水)午後5時45分(日本時間)予定で、JAXA(宇宙航空研究開発機構)のX(エックス)線天文衛星ASTRO-HがH-IIAロケット30号機によって種子島宇宙センターから打ち上げられます。ASTRO-Hは、質量が2.7トンもある大型衛星で、日本の科学衛星としては過去最大のものです。全長は14メートル、幅も太陽電池パネルを広げると9メートルになります。予定通りに打ち上げが成功すれば、約575kmの高度で96分間で地球を一周しながら、遠い宇宙からやっているX線を観測します。このために2種類のX線専用望遠鏡とカメラ、分光器などの検出器が搭載されています。

詳細は、JAXAX線天文衛星「ASTRO-H」サイト

打ち上げライブ中継(午後5:25~6:10)も予定されています。

X線で宇宙を見るといったい何が見えてくるのでしょうか?X線や電波などを含む光のことを一般に電磁波と呼びます。波としての性質を持つ電磁波は、その波の幅によって波長が長い順に、電波、赤外線、可視光線、紫外線、X線、ガンマ線の6種類に大別されます。このうち、人間の眼で感じることが出来る電磁波(光)が可視光線です。可視光線は虹のように波長によって七色に分かれますが、目で見えている赤の外に赤外線、電波、紫の外側に紫外線、X線、ガンマ線が存在しています。ただし、可視光線と波長の長い電波以外の電磁波のほとんどは、宇宙からやってきても地球大気によって吸収・散乱されてしまい、地上まで届きません。X線も大気中で吸収されてしまいます。このため、宇宙からのX線を観測するためには、地球の大気の外、すなわち、宇宙に行かないとならないという訳です。

多波長で見る宇宙(国立天文台のウェブサイト)

宇宙からのX線の観測は1960年代に始まり、X線星(中性子星やブラックホールを伴星にもつ連星)、パルサー、超新星残骸、クエーサー、銀河団中の高温ガスなどが特にX線を強く放射することが分かってきました。X線は100万度~数億度といった、とても高温の天体が強く放出する電磁波です。

日本のX線天文学は、2001年にお亡くなりになったJAXA宇宙科学研究所の小田稔先生等が創設したお家芸とも呼べる研究分野です。現在も日本ではJAXAや理化学研究所、さらに多くの大学でX線天文学の研究者等が国際的な活躍をしています。ASTRO-Hは、はくちょう、てんま、ぎんが、あすか、すざくに続く6つ目の日本のX線天文学の最新衛星であり、ブラックホールや超新星爆発などの秘密を解明すると共に、銀河団の観測などから宇宙の構造や進化の謎も解き明かしてくれることでしょう。さあ、ASTRO-Hは先輩のすざく等を超えるどんな大発見をしてくれるのか?楽しみにその成果を待ちたいと思います。

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自然科学研究機構 国立天文台 准教授

1961年長野県大町市八坂生まれ(現在、信濃大町観光大使)。NHK高校講座、ラジオ深夜便にレギュラー出演中。宙ツーリズム推進協議会代表。国立天文台で国際天文学連合・国際普及室業務をを担当。専門は天文教育(教育学博士)。「科学を文化に」、「世界を元気に」を合言葉に世界中を飛び回っている。

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