Yahoo!ニュース

年初めの天文ショー「しぶんぎ座流星群」への期待

縣秀彦自然科学研究機構 国立天文台 准教授
1月3日深夜からの出現が期待される今年の「しぶんぎ座流星群」 提供:国立天文台

年間三大流星群の一つ、しぶんぎ座流星群(しぶんぎ群)は1月3日(火)23時頃に極大を迎えると予測されています。放射点が高くなる夜半過ぎには月明かりの影響も無いため、天候が良ければ4日未明の出現が大いに期待できます。

しぶんぎ座流星群は、8月のペルセウス座流星群(ペルセ群)、12月のふたご座流星群(ふたご群)とともに三大流星群と呼ばれています。極大日前後の数日間にわたって活動するペルセ群やふたご座群などの一般的な流星群と比べると、しぶんぎ群は活動が活発な期間が数時間程度と短いことが特徴です。このため、流星の出現数は年によって当たり外れがあることでも知られています。

今年のしぶんぎ群の極大は、日本時間で1月3日の23時頃と予報されています。このため3日の深夜から4日未明にかけて観察に適した時間帯となります。今年は月明かりの影響がありませんので、例年に比べよい条件で観察することが可能です。空の暗い所でないと十分な観察は難しいのですが、放射点が高くなる4日の未明には1時間あたり30個前後になるのではと期待されています。

流星(流れ星)とは、宇宙空間にある直径1mm~数cm程度の塵粒(ダスト)が地球の大気とぶつかり、地球大気や気化した塵の成分が光を放つ現象です。流れ星には、散在流星と群流星があります。散在流星とは、いつどこを流れるか全く予測が付かない流星で、群流星とは、特定の流星群に含まれる流星で、ある時期に同じ方向から四方八方に飛ぶようにみられる流星のことです。一方、群流星が飛んでくる方向を放射点(または輻射点)と呼びます。放射点がどの星座に含まれているかで、その流星群の名前が決まります。しぶんぎ座流星群は、実際には北天のりゅう座付近に放射点があり、以前はりゅう座ι(イオタ)群とも呼ばれていました。しかし、この放射点が含まれる天域をかつては「しぶんぎ座」と呼んでいたため、国際天文学連合が流星群の名称を定めた際に、日本ではこの流星群を正式に「しぶんぎ座流星群」と呼ぶようになりました。しぶんぎとは、天体望遠鏡が発明される以前に天体観測で用いられた天測機器である壁面四分儀(へきめんしぶんぎ)のことです。

太陽に近づいた彗星は、彗星本体に含まれていた塵を彗星の通り道(軌道上)に放出していきます。このため、塵の粒の集団と地球の軌道が交差している場合、地球がその位置にさしかかると、たくさんの塵の粒が地球大気に飛び込みます。地球が彗星の軌道を横切る時期は毎年ほぼ決まっていますので、毎年特定の時期に特定の流星が出現することになるのです。

流星群と母天体・彗星との関係 提供:国立天文台天文情報センター
流星群と母天体・彗星との関係 提供:国立天文台天文情報センター

流星は空のどこを飛ぶかは予測が付きません。流星群の場合も、放射点のある方向のみに流星が見えるのでは全くありません。群流星の場合、放射点近くでは、ゆっくりとした動きで短い経路のみ輝きます。一方、放射点から離れた方向では、素早い動きで長い線を引いて輝きます。したがって、放射点の位置さえ確認すれば、自分の見ている方向では、どちらの方向からどちらに向ってどんなスピードで群流星が流れるかを予想することが出来ます。

流星観察では、望遠鏡や双眼鏡は必要ありません。肉眼で観察しましょう。望遠鏡や双眼鏡を使うと見える範囲が狭くなってしまうため、一般の方の流星観察には適しません。屋外に出てから暗さに目が慣れるまで、最低でも15分間は観察を続けるようにしましょう。風邪をひかないよう防寒対策や安全対策をしっかり行いリラックスした服装・姿勢で無理をせずに新春の天文ショーを楽しんでください。

自然科学研究機構 国立天文台 准教授

1961年長野県大町市八坂生まれ(現在、信濃大町観光大使)。NHK高校講座、ラジオ深夜便にレギュラー出演中。宙ツーリズム推進協議会代表。国立天文台で国際天文学連合・国際普及室業務をを担当。専門は天文教育(教育学博士)。「科学を文化に」、「世界を元気に」を合言葉に世界中を飛び回っている。

縣秀彦の最近の記事