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ソーシャルゲームの終焉、そして次にくるもの

小川浩株式会社リボルバーCEO兼ファウンダー。
ソーシャルゲームのSAPはWebアプリからネイティブへと向かう勇気を持てるか?

GREEが3期連続となる前年割れの決算との観測記事が発表されたことで、ソーシャルゲーム業界への失望が広がっている。

ソーシャルゲームは、基本的にモバイルブラウザ上のWebアプリだ。対して、爆発的なヒットを続けているガンホーのパズル&ドラゴンズ(パスドラ)などは、スマートフォン上のネイティブアプリである。つまりゲーム市場でも、ついにWebアプリがネイティブアプリに追い抜かれたということだ。

PCプラットフォーム上でWebアプリがネイティブアプリを圧倒し、ほとんどのコンピューティングがWebブラウザ上で行なわれるようになったのは2005年以降のことで、そのときの状況がWeb2.0と呼ばれたのは記憶に新しい。

現状でもこの現象は進行しており、音楽アプリ(例えばiTunes)やオフィススイート(Microsoft Officeなど)、写真加工・編集アプリなど、比較的専門性の高いものでなければWebアプリで事足りるし、その機能が多少ネイティブアプリよりも劣っていたとしても気にしなくなった。つまりPC上では、ネイティブでなければならない用途はそれなりにあるとしても、ふつうのPCユーザーからすればWebブラウザさえあれば満足できた。

違うのはゲームだ。日本国内では、PCでゲームをする人はあまりいなかった。韓国ではPCのWebブラウザ上で行なうオンラインRPGが大流行した時期があったが、日本ではゲームは専用ゲーム機で行なうのがふつうで、その後ニンテンドーDSなどのモバイルゲーム専用機へと人気が移った。その人気と市場を簒奪したのがソーシャルゲームで、誰もが持っているフィーチャーフォン上で、少なくとも最初は無料でプレイできるというビジネスモデル(専用機のゲームははじめから数千円で購入しなければならない)で大ブレイクした。

だからPCにおいてはいまだにWeb2.0の革命は進行中であり、ネイティブアプリを真剣に開発しようというベンチャーも少なく、それはゲームでも例外ではない。しかしモバイル上では、フィーチャーフォンからスマートフォンへの進化のモラトリアムの狭間でDeNAとGREEが独自のプラットフォームをつくり上げて、Webアプリによるゲーム市場を勃興させたのが4年前(2008年頃)だといえる。つまり、ゲームでさえもWebアプリで、というWeb2.0的な動きを国内で成功させたのがDeNAとGREEだった。言い方は悪いが、ソーシャルゲームのユーザーが求めていたのは“暇つぶし”であり、ちょうどよい暇つぶしの機会と愉しみを与え、その過程で射幸心を煽り、お金を使わせる巧妙なテクニックがつくり手の腕だった。それ自体はよいのだが、スマートフォンからよりグラフィカルでダイナミックなゲームが無料で使えたり、暇つぶし用のゲームでさえもApp StoreやGoogle Playからダウンロードできるとあれば、わざわざ動的でもなければ音も出ない既存のソーシャルゲームを使おうと思うユーザーが減るのは、どうにも止めようがない。

ソーシャルゲームに比べて、App StoreやGoogle Playで販売上位に到達できるようなゲームをつくるための開発コストは桁違いに高い。つまり、同じゲームといってもビジネスモデルがまったく異なる。ソーシャルゲームはパチンコと比べられることが多かったが、ソーシャルゲームの開発業者からすれば元手が小さくても参入しやすい業界であった。ところがスマートフォンのネイティブアプリ開発はカジノで遊ぶのと同じで、元手が小さければ絶対に勝てない。これまでゲーム専用機にゲームを提供してきた専門企業と競うだけの資本力が絶対に必要だ。となると、今後はWebアプリとしてのソーシャルゲームをつくる企業はどんどん減っていくだろう、また、ネイティブアプリの開発へと舵を切る勇気をもてる企業はそれほど多くはないはずだ。結果、業態転換を迫られる企業も多いのではないか。

その昔ドットコムバブルの時期には、早めに大きな資金調達に成功したベンチャーか、上場を果たした企業以外は次々と倒産したが、このままフィーチャーフォンからスマートフォンへのシフト、そしてWebアプリからネイティブアプリへのゲームにおけるシフトが加速すれば、同じことが起きるかもしれない。となれば、ピボットをする決断をするのはいつか? それは今でしょ!(既に死語…)

via MdN Interactive

株式会社リボルバーCEO兼ファウンダー。

複数のスタートアップを手がけてきた生粋のシリアルアントレプレナーが、徒然なるままに最新のテクノロジーやカッティングエッジなサービスなどについて語ります。

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