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元世界王者のヘビー級転向の噂の真相

本郷陽一『RONSPO』編集長

元WBA世界スーパーウエルター級暫定王者、石田順裕(グリーンツダ)のヘビー級転向が噂されているが、その噂の真相を書こうと思う。

欧米のマーケットで戦っていた石田順裕からヘビー級転向プランを聞かされたのは、2か月ほど前だ。WBOが日本で認可されたことで日本でのライセンス復帰を認められた石田は、当初、ロンドン五輪金メダリストでプロ転向した村田諒太にターゲットを絞っていた。彼は、それを“プランA”と呼んでいた。だが、村田陣営は、東洋太平洋王者とデビュー戦を行ったことで、もう日本人対決に意義がないと判断している。すでに村田陣営の目線は世界に向かっていて、石田が世界ランカーならば避けて通れなかった道かもしれないが、WBA世界ミドル級王者、ゲンナジー・ゴロフキンとの世界戦を最後に試合をしていないことから世界ランキングから外れている。現時点での対戦の可能性は極めて薄くなった。

そこで石田が考えたのが“プランB”。それがヘビー級挑戦だった。

38歳。年齢的にも最後の賭けである。

「日本で引退興行をして終わるつもりだったんですが、村田君の存在で気持ちが変わったんです。ビッグネームとの対戦は魅力的ですし、勝つ自信もありました、そして、『俺はまだできるんじゃないか。将来ジムをやりたいし、国内認知をもっと上げてから辞めていいんじゃないか』とも考えたんです。3人の子供を抱え経済的な問題もあります。でも村田君との対戦は無理でしょう? 国内でスーパーミドルや、ライトヘビーの日本タイトルがあるならば、そこを目指しますが、そこがないのでヘビーに挑戦してみようかなと考えたんです。正直、ボクシングだけでは家族を生活させるのは難しい。仕事をしながらミドルで減量をしてコンディションを維持してリングに上がるのは難しいんです。しかし、減量のない階級ならば、なんとかスタイルを殺さず戦えるかなと」

ヘビー級は、90キロ以上という規約がある。

ミドルのリミット72、5キロから17.5キロの増量が必要だ。

他の階級は減量リミットに苦しむが、石田の壁は、この増量リミットだ。現在、石田の体重は84キロ。「あと6キロをどう増やすか」を模索中。ラグビーの元日本代表、大畑大介にも相談した。大畑からは「加圧トレをうまく取り入れ筋量を増やしてはどうか」とアドバイスをもらったという。近々にボディビルダーにも相談する予定だ。

「まず、動ける90キロの体が作れたならば、来年にヘビーでリングで動けるかどうかの前哨戦的な試合をしてみたいと思います。日本ヘビーのボクサーは少ないので相手は限られてくるでしょうが。そこで大丈夫だと感じたら京太郎君のタイトルに挑戦したいですね」

石田のボクシングスタイルはスピードだ。海外に行ってからは、リングの中央で戦うようになったが、スピード、カウンターという武器は変わらない。果たして、そのスピードがヘビーのウエイトでも維持できるのかどうか。かつて ロイ・ジョーンズJRが、ヘビー級タイトルに挑戦して、スピードを武器に見事にタイトルを奪取したことがあったが、名のあるミドルボクサーのヘビー級挑戦は、復活したばかりの未開の日本ヘビー戦線で大きな話題になることは間違いない。ちなみに明日25日、日本ヘビー級王者、藤本京太郎(角海老)の初防衛戦が後楽園で行われるが、石田は来場しない予定だ。

『RONSPO』編集長

サンケイスポーツの記者としてスポーツの現場を歩きアマスポーツ、プロ野球、MLBなどを担当。その後、角川書店でスポーツ雑誌「スポーツ・ヤア!」の編集長を務めた。現在は不定期のスポーツ雑誌&WEBの「論スポ」の編集長、書籍のプロデュース&編集及び、自ら書籍も執筆。著書に「実現の条件―本田圭佑のルーツとは」(東邦出版)、「白球の約束―高校野球監督となった元プロ野球選手―」(角川書店)。

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