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レッドソックス・田沢が痛恨の被弾で今季初黒星。守護神・上原が敗戦投手を庇った夜。

一村順子フリーランス・スポーツライター
練習で球拾いするレッドソックスの日本人右腕コンビ

田沢が痛恨の被弾で今季初黒星

レッドソックスの田沢純一投手(28)が、15日(日本時間16日)、本拠地フェンウェイパークで行われたインディアンス戦で、今季初黒星を喫した。マウンドに向かったのは、2−2で迎えた延長11回。六番手で救援した田沢は先頭のスウィシャーに内角高めに入った93マイル(約150キロ)の直球を右翼ポール際へ本塁打された。痛恨の被弾が決勝点となった田沢は、試合後、「先発も含めて投手陣があれだけ頑張っていたので、僕も0点で抑えたかった。捕手の構えは外だったのに、内に入ってしまった。失投かなと思う。全部、僕が悪い。チームに申し訳ないです」。一切の言い訳をせず、全ての責任を引き受けたが、それを庇ったのが、九回に四番手で救援して、三者凡退の完璧リリーフで19試合連続無失点となった守護神・上原浩治投手(39)だった。

「いや、パフォーマンス自体は全然悪くはないと思う。ただ、最近の使われ方がね。今日もブルペンで2回つくっていたし、おとといもブルペンで50球程投げて試合には投げないとか…。端からみていても可哀想な部分がありますね」

この日、中継ぎ左腕ミラーと並んでチーム最多の今季33試合目のマウンドとなった田沢は連投だったが、結果的に登板がなかった3日前にも登板に備えてブルペンで投球練習を行っている。この日も最初に八回に投球練習を行い、一旦休んだ後に再び肩をつくって登板に備えていた。最速97マイルをマークする田沢のこの日の初球直球は93マイル。外角高めに2球大きく外れたために、若干、内側に修正しようとして投げた4球目を制球しそこなった。前日は二死満塁のピンチで登板し、メジャーで自身初の押し出し四球を与えてしまった田沢。2日連続で精彩を欠いたパフォーマンスに、米メディアからは試合後の監督会見で「どうしたのか」という質問が飛んだが、守護神はその背景を汲んで、後輩右腕を擁護し、一言持論を展開したのだった。

この日も九回に満塁のサヨナラ機を逃すなど打線に決定力を欠いたチームは、今季1点差ゲームでリーグ最悪の8勝15敗と接戦での弱さを露呈して、中継ぎ陣をどんどん消耗させている。『田沢&上原』を勝ちパターンで使うのは理想だが、10連敗の後に7連勝して5連敗という“ジェットコースター”のような試合を繰り返している今のレ軍には、『勝利の方程式』を適した場面に温存しておく余裕がない。抑えの上原ですら、同点の場面どころか、前日のように劣勢の展開で登板することも。中継ぎの田沢に関してはそれ以上に出番が読み難い状況が続いている。当然、選手側は「行けと言われればいくだけ。使って貰えるだけありがたい」(田沢)、「投げられるだけ幸せ」(上原)というのが根底の姿勢だが、ベンチの焦りと辛抱のなさが、中継ぎ陣の役割分担を益々不明瞭にして、結果的にチームをジリ貧に陥れているのが実情だ。

「野球は点取りゲームなので。相手より点をとらないといけないし、相手より失点を少なくしなければいけない。引き分けはない訳ですから。それが、できていないってこと。モヤモヤしかないですね。4月からずっとだけれど。試合は待ってくれないし、明日はすぐに来る。やらないとしゃあない」と上原は気持ちを切り替えた。31勝38敗でア・リーグ東地区4位と低迷する昨年のワールドシリーズ王者。厳しい戦いが続く。

フリーランス・スポーツライター

89年産經新聞社入社。サンケイスポーツ運動部に所属。五輪種目、テニス、ラグビーなど一般スポーツを担当後、96年から大リーグ、プロ野球を担当する。日本人大リーガーや阪神、オリックスなどを取材。2001年から拠点を米国に移し、05年フリーランスに転向。ボストン近郊在住。メジャーリーグの現場から、徒然なるままにホットな話題をお届けします。

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