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世界最高年俸となったメッシに飛び交う批判と憶測

小澤一郎サッカージャーナリスト

今季無冠に終わったバルセロナは、19日にルイス・エンリケ新監督とリオネル・メッシの契約更新など大きなニュースを矢継ぎ早に発表した。17日のリーガ・エスパニョーラ最終節(アトレティコ・マドリー戦)に勝てばリーグ優勝の可能性が残っていたクラブとは思えない、ある意味で無冠を想定していたかのような用意周到な準備とリリースだったが、中でもメッシの契約更新については今季の低調なパフォーマンスへの批判と合わさって様々な憶測が飛び交っている。

契約更新の内容についてスペインの報道をまとめると、契約期間は2018年まで、推定年俸2,000万ユーロ(約28億円)、インセンティブボーナス400~500万ユーロ(約5.6億円~7億円)、契約解除金2億5,000万ユーロ(約350億円)となり、かねてよりバルトメウ会長が発していた「世界最高の選手であるメッシは、世界最高の年俸を受け取るべき」という公言を実現した形になる。

■負のスパイラルに入った可哀想なシーズン

今季のメッシについてスペインで監督として活躍し、先日『サッカーの新しい教科書』(カンゼン)を上梓した坪井健太郎氏に話しを聞いた。まず坪井氏は、「基本的には皆さんと同じ感想で、終盤は存在しないに等しい選手でした」と前置きした上で、「フィジカル、メンタル両面のコンディションが良くない中、過度なプレッシャーもあってどんどん負のスパイラルに入ってしまった可哀想なシーズンでした」と総括した。

さらに、「もし彼がバルサの10番でなければ復調できたかもしれません。あれだけの期待をされている『世界最高の選手』だからこそ、背負うものは普通の選手と異なり、今まで築いてきた功績が逆に副作用となった印象です」と続けた。坪井氏は、「ゴタゴタの多かったクラブとの関係性や自身の脱税疑惑、ネイマールの加入による年俸面でのパワーバランスの崩壊など目に見えない問題も少なからず影響しているでしょう」と語るが、シーズン終盤はバルセロナサポーターからメッシに向けたブーイング・野次も大きく取り沙汰された。

■バルセロナを去る可能性も!?

19日にバルセロナのクラブオフィスで契約更新の書類にサインをしたメッシはすでに20日、静養とW杯のために家族と共に母国アルゼンチンに向けて帰国の途についたが、報道陣向けにはノーコメントを貫いた。しかし、中国版ツイッターの『ウェイボー』で「バルセロナの人たちからこれまでのような愛情を感じることができないなら、解決策を探すことにする」という発言を残し、スペイン国内ではこれまた大きなニュースとして取り上げられている。

本人の口から出た発言ではないものの、メッシサイドから「バルセロナを去る可能性もある」と受け止めることのできるコメントが飛び出したわけだが、現実問題として「メッシがバルセロナを去る日」は移籍ではなく現役引退の方が可能性としては高いと考える。確かに、シーズン終盤のメッシは『存在しない』に等しい存在感とパフォーマンスではあったが、晴れて世界最高年俸となったメッシに今私が期待するものは直前に迫ったW杯に向けた静養と万全の準備、そして「すでに気持ちはW杯」などといういわれのない憶測や批判に対する反骨心を込めた世界最高の選手らしいプレーだ。

サッカージャーナリスト

1977年、京都府生まれ。早稲田大学教育学部卒。スペイン在住5年を経て2010年に帰国。日本とスペインで育成年代の指導経験を持ち、指導者目線の戦術・育成論を得意とする。媒体での執筆以外では、スペインのラ・リーガ(LaLiga)など欧州サッカーの試合解説や関連番組への出演が多い。これまでに著書7冊、構成書5冊、訳書5冊を世に送り出している。(株)アレナトーレ所属。YouTubeのチャンネルは「Periodista」。

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