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初戦6得点のカメルーンの3トップは脅威ではない!?

小澤一郎サッカージャーナリスト
女子W杯カメルーンとの第2戦のポイント

FIFA 女子ワールドカップ・カナダ2015にてスイスとの初戦に1-0で勝利し、好スタートを切ったなでしこジャパン(サッカー女子日本代表)は現地時間の12日19時(日本時間13日11時)にカメルーンとの第2戦を迎える。

■初戦6得点のカメルーンの特徴は3トップ

エクアドルとの初戦で6-0と大勝し、シュート25本を放ったカメルーンの特徴は何と言っても17番(Enganamouit)、9番(Ngono Mani)、7番(Onguene)という3トップの破壊力にあり、特にエクアドル戦でハットトリックを決めた17番は高さ、パワー、スピードの三拍子を兼ね備えた個の力を持っている。

11日の前日会見で佐々木則夫監督はカメルーンについて「思った以上に個の質が高い」と評した上で、「先日(第1戦)のカメルーンは大量点も含めて精神的に楽な戦い方をしている。その分、気持ちよく試合に入ってくるので、我々がシビアな戦い方をして、厳しい状態の中で彼女たちの戦略を断ち切り、前線がしっかりと点をとる。先行していくということがポイント」と先制点の重要性を語った。

■3トップが脅威に映る本当の理由

ただし、エクアドルとの試合におけるカメルーン3トップの威力や個々の能力の高さはあくまでエクアドル守備陣との関係性の中で出ていたもので、あまり参考になるものでも脅威に感じるものでもないと考える。佐々木監督が「うちにああいう戦い方をしてくるのかはわからない」と述べるように、基本的にカメルーンの攻撃は前線3トップが攻め残りをして、そこに対してロングボールを入れてくるシンプルな攻撃だ。エクアドル戦でその攻撃が機能した理由は、単にエクアドルのDFラインのコントロールがバラバラだったからに他ならない。

実際、DF熊谷紗希は「前3人がすごく強烈ですけど、そこまで戦術的にというか、エクアドルがズレただけで、(戦略として)それを狙ってきたようなイメージではなかった」と冷静に分析している。結局のところ、このカメルーン戦におけるポイントは「いかに相手の前線を抑えるか」という部分よりもその前の段階にある「いかに前線への配球を断ち切るか」という部分となる。

■最終的な鍵は「ボールの出どころ」←「押し込み方」

会見の席で佐々木監督は「ボールの出どころ」にフォーカスを置く守り方について次のように述べた。「(カメルーンは)前線からセンターバック二人がいいフィードをします。ですから、攻めていた時のボールの取られ方、その時に切り替えを早くして縦を抑えることがポイントになると思います。出どころを抑えるということが第一であって、出どころから出たとしても、3対3でも、何とかカバーできるような準備もしています」

つまり、最終的にこの試合の鍵はボールの持ち方、運び方、失い方というポゼッションにもなってくる。初戦の後半はスイスに押し込まれ、ボール支配率も45%と50%を割ってしまったが、守備が組織的ではなく、DFラインのコントロールも不安定なカメルーンが相手である以上、序盤からボール支配率を高めながらボールを相手陣内に運び、全体のラインをコンパクトかつ高いライン設定にしたい。

そして相手の中盤ラインがDFラインに吸収されるような近い距離となり、必ず1、2枚は攻め残りするであろうカメルーンの前線を孤立&オフ(=オフサイド)の状態に追いやるような押し込み方ができれば必然的になでしこのゴールと勝利の可能性は高まる。万が一、アクシデント的にカメルーンの前線の個の力で先制や失点を許したとしても、90分という時間の枠でボールと主導権を握るサッカーを展開してカメルーンの選手たちを受動的に走らせることができれば確実に勝ち点3を奪える相手だ。

サッカージャーナリスト

1977年、京都府生まれ。早稲田大学教育学部卒。スペイン在住5年を経て2010年に帰国。日本とスペインで育成年代の指導経験を持ち、指導者目線の戦術・育成論を得意とする。媒体での執筆以外では、スペインのラ・リーガ(LaLiga)など欧州サッカーの試合解説や関連番組への出演が多い。これまでに著書7冊、構成書5冊、訳書5冊を世に送り出している。(株)アレナトーレ所属。YouTubeのチャンネルは「Periodista」。

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