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暑さを乗り切れ!夏だからこそ楽しめる鉄道旅2013

伊原薫鉄道ライター
夏だからこそ!会津の風を直に感じられる、会津鉄道のトロッコ車両。

例年よりも早く梅雨が明け、いよいよ夏本番。学生の皆さんにとっては待ちに待った夏休みも始まった。今年の夏はどこへ行こうか、検討の真っ最中という方も多いのではないだろうか。一方で今年は梅雨前からかなり暑く、また例年以上の猛暑という予想も出ていて、ちょっと憂鬱な方もおられることだろう。かくいう筆者も暑いのは特に苦手で、毎年この季節になると「いかに暑さを『うまく利用して』夏を乗り切るか」という方向に重点を置く。いきおい鉄道趣味においても同様で、しかもこの時期は「暑いからこそ」楽しめる、夏向けの列車が満載だ。そこで今回は、夏だからこそ!のオススメ鉄道旅を紹介しよう。

○夏だ!暑いぞ!ビール列車だ!!

豊橋鉄道の「ビール電車」その外観は、電飾までついて超ド派手!
豊橋鉄道の「ビール電車」その外観は、電飾までついて超ド派手!

筆者をはじめお酒の好きな皆さんにとって、夏に楽しい列車の代表格と言えばやはり「ビール列車」ではないだろうか。涼しい車内でビールが飲み放題!という列車が、全国いたる路線で走っている。各社がいろいろな趣向を凝らしており、お酒が飲めない方でも楽しめるような企画が満載。地元の食材を使った弁当やおつまみはもちろん、車内でカラオケが楽しめたり、じゃんけん大会などのイベントがあったりと、涼を求めるだけでなくちょっとした旅気分を味わうにもオススメだ。

夏祭りの雰囲気満点な、豊橋鉄道のビール電車車内。運転台にまでポスターが。
夏祭りの雰囲気満点な、豊橋鉄道のビール電車車内。運転台にまでポスターが。

例えば、豊橋鉄道市内線のビール電車は今年で21年目を迎える「老舗」。専用車両となる路面電車は、外観からド派手に飾り付けがなされていてインパクトは絶大。昼間から乗り込むにはちょっと回りの目が気になる・・・が、乗ってしまえば回りの車を横目に飲むビールは格別だ。車内にはビールサーバーが設置され、キリン「一番搾り」が飲み放題のほか、チューハイやソフトドリンクなども積み込まれており、また日本酒やワインの販売もある。途中、日本の鉄道線路で最もきついカーブを曲がり、運動公園前停留所でしばしのトイレ休憩。往復1時間30分のミニ旅行は職場の女性グループ等での利用も多く、既に今夏の予約はかなり埋まっているとのこと。ちなみに豊橋鉄道では、冬には路面電車でアツアツのおでんが楽しめる「おでんしゃ」も運転されており、こちらも大好評なのでぜひお勧めしたい。

ビール列車は、前述の通り全国各地で企画されているが、いずれも大人気のため募集開始と同時に満席という会社も多い。キャンセル等を期待して、こまめに駅や営業窓口に聞くのも一つの手だろう。

○トロッコ列車で夏の風を満喫!

会津鉄道のトロッコ車両。芦ノ牧温泉駅のネコ駅長「ばす」のイラストが満載だ。
会津鉄道のトロッコ車両。芦ノ牧温泉駅のネコ駅長「ばす」のイラストが満載だ。

続いて紹介するのは、福島県・会津鉄道の「お座敷トロッコ列車」。2009年にデビューした2代目トロッコ車両は、大きな客席窓が取り外されて開放感たっぷり。もともと都会より涼しい会津地方の天候に加え、阿賀川の渓流沿いに走る列車は暑さを忘れさせてくれる。途中、大川ダム周辺の絶景ポイントではしばし停車し、景色が楽しめるサービスも。

今年導入された画像投影システム。トンネルの内壁に動画などが映し出される。
今年導入された画像投影システム。トンネルの内壁に動画などが映し出される。

会津鉄道は長大トンネルがあり、これまでは車内天井のLEDライトによるプラネタリウムが楽しめたが、今年からは新たにトンネル内への映像投影システムを導入。天井にプロジェクターが設置され、トンネル内壁を芦ノ牧温泉駅の駅長猫「ばす」が駆け回る。トンネル内で映像を流すこの仕組みは独自に開発したものだそうで、トンネルの中でも楽しんでほしいというホスピタリティがうれしい。日本で唯一の茅葺き屋根の駅である、湯野上温泉駅には足湯が新たに設けられ、列車を眺めながら疲れた足をほぐすことができる。東京都内から始発駅の会津田島までは東武鉄道経由で約3時間と、日帰り旅行にも最適だ。

JR四国の「アンパンマントロッコ」もちろんアンパンマンのキャラクターがいっぱい。
JR四国の「アンパンマントロッコ」もちろんアンパンマンのキャラクターがいっぱい。

西日本の方には「瀬戸大橋アンパンマントロッコ」がオススメ。全国にトロッコ列車は数あれど、海の上を走るのはここだけだ。瀬戸内の風を感じつつ、トロッコ車両から眺める瀬戸内海は夏ならではの楽しみ。車両の床面にはガラス窓が埋め込まれており、すのこ状となった線路の下には海面も見えるので、ちょっとしたスリルで涼しくなるかも?

「アンパンマントロッコ」車内。ガラス越しに瀬戸内海が見える(写真:藤田浩史氏)
「アンパンマントロッコ」車内。ガラス越しに瀬戸内海が見える(写真:藤田浩史氏)

○山の上でリフレッシュ!

夏に涼しい場所と言えば、山の上である。100m上るごとに気温が0.6℃下がるというのを理科で習ったと思うが、それ以上に山の風や緑いっぱいの空気は体と心を涼しくしてくれる。関西でのおすすめは、妙見山と比叡山。それぞれ、能勢電鉄~妙見ケーブルと、叡山電車~叡山ケーブルがアクセス手段となる。緑の中をケーブルカーで上っていくと、先ほどまでいた街の景色がどんどんと眼下に小さくなり、気付けば見渡す限りの絶景が広がっている。能勢電鉄は今年が開業100周年ということで、開業当時に走っていた車両の塗装が2種類復刻され、同車の車内には昔の車両写真や沿線の自然風景などが展示されている。また叡山電車では、全22両ある車両のつり革(合計1,028個)の中で1つだけ「ハート形のつり革」がある。数日ごとに取り付ける車両を変えるそうで、現在どの車両についているかは「交換を担当する社員しか知らない」とのこと。列車に乗ったら、前から後ろまで要チェックだ。

これが「ハートのつり革」。沿線の女子大生には「縁結びの神様」として話題だとか。
これが「ハートのつり革」。沿線の女子大生には「縁結びの神様」として話題だとか。

関東の方へのお勧めは高尾山。新宿から京王電鉄~高尾登山ケーブルで1時間ほどと、都心からのアクセスは抜群だ。ケーブルカーの終点である高尾山駅からは関東平野が一望でき、なんと東京スカイツリーも見える。「あーさっきまで自分がいた、あの辺りは暑そうだなー」と優越感に浸ることもできる?

駅チカビアガーデンから眺める絶景!(写真提供:高尾登山電鉄)
駅チカビアガーデンから眺める絶景!(写真提供:高尾登山電鉄)

そして、ここで紹介した3スポットには共通点がある。妙見ケーブルのケーブル山上駅近くには「妙見の森バーベキューテラス」が、叡山ケーブルのケーブル比叡駅と高尾登山ケーブルの高尾山駅近くには、それぞれ「比叡YAMAのビアガーデン」「高尾山ビアマウント」があるのだ。(「比叡YAMAのビアガーデン」の今年の営業日は未発表) 目の前に広がる大パノラマを肴に飲むビールは最高!・・・と、気づけばビール列車に始まりビアガーデンに終わるという、酒飲み話の記事になってしまったが、帰りの移動を気にせずお酒が飲めるのは鉄道旅行の特権。お酒が飲めない方も、五感で夏を楽しみ、リフレッシュしてみてはいかがだろうか。

鉄道ライター

大阪府生まれ。京都大学大学院都市交通政策技術者。鉄道雑誌やwebメディアでの執筆を中心に、テレビやトークショーの出演・監修、グッズ制作やイベント企画、都市交通政策のアドバイザーなど幅広く活躍する。乗り鉄・撮り鉄・収集鉄・呑み鉄。好きなものは103系、キハ30、北千住駅の発車メロディ。トランペット吹き。著書に「関西人はなぜ阪急を別格だと思うのか」「街まで変える 鉄道のデザイン」「そうだったのか!Osaka Metro」「国鉄・私鉄・JR 廃止駅の不思議と謎」(共著)など。

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