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四国に登場した「新幹線」その団子鼻の正体は・・・!?

伊原薫鉄道ライター
四国に登場した「新幹線」その正体は、遊び心満載の観光車両!

日本各地で新幹線の話題が相次いでいる。北陸新幹線用の新型車両・E7系が長野新幹線区間で営業を開始したほか、JR西日本所有となるW7系も第1編成が金沢の車両基地へ到着。来年3月の開業へ向け、着々と準備が進められている。一方、2016年にはついに新幹線が北海道へ到達する予定で、北海道新幹線用車両「H5系」の製作も発表された。東海道新幹線が開業して今年で50周年、そのネットワークは本州から九州そして北海道と、全国へ伸びようとしている。

・・・そんな中、先月からなんと四国でも「新幹線」が走り出したという。あらゆる意味で従来の新幹線とは一線を画す、この「新幹線」を取材した。

○「なんだこの列車は!?」

高知駅からディーゼル特急で1時間、県西部に位置する窪川駅。いかにもローカル線の乗換駅といった雰囲気のホームに降り立つと、隣のホームに「新幹線」は確かにいた。白と青、おなじみの塗装に塗り分けられた団子鼻は、しかしこれはなんというか・・・。

「・・・なんだ、この列車は!?」

こちらが四国の「0系新幹線」実際に見ると想像以上のインパクトだった。
こちらが四国の「0系新幹線」実際に見ると想像以上のインパクトだった。
見る角度によってはかなり再現度が高い。こういう遊び心、筆者は大好きだ。
見る角度によってはかなり再現度が高い。こういう遊び心、筆者は大好きだ。
0系新幹線の高い運転台窓などもラッピングで表現。屋根上にはアンテナも!
0系新幹線の高い運転台窓などもラッピングで表現。屋根上にはアンテナも!

早々にネタばらしをしてしまうと、この「新幹線」は正式名称を「鉄道ホビートレイン」といい、既存のディーゼル車を改造して生まれたもの。初代新幹線・0系を模した団子鼻はハリボテだ。完成予想イラストや映像でその姿は見ていたものの、実際に目にすると想像以上のインパクトである。しかしながらその色や形状はもちろん、ライトや下部の排障器、屋根上の検電アンテナなど、細部までこだわっているのがわかる。運転席の窓をシールで再現しているあたり、「ここまでこだわるか!」と感心してしまうほどだ。

「鉄道ホビートレイン」の車内。大型ショーケースには四国で活躍する車両の模型が。
「鉄道ホビートレイン」の車内。大型ショーケースには四国で活躍する車両の模型が。
車内には0系新幹線登場時の座席も再現。このシートやテーブル、懐かしい!
車内には0系新幹線登場時の座席も再現。このシートやテーブル、懐かしい!
運賃表にもちょっとした「遊び」が。
運賃表にもちょっとした「遊び」が。

車内もすごい。ドア横の一角には大型ショーケースが設置され、全国の新幹線や、四国で活躍する(活躍してきた)車両の模型が勢揃い。ロングシートの各所にも小さなショーケースがあり、子供たちが目をキラキラさせながら眺めていた。車端に設けられた記念撮影スペースには0系オリジナルの転換シートが2脚設置され、「乗車記念」と書かれた看板は、携帯電話等「タテ長の写真」でうまく収まる位置に。なんとも心憎い配慮である。床にはSLの図面なども描かれていて、まさに車両自体がホビーとして楽しめるようになっている。

この「鉄道ホビートレイン」、予土線の宇和島〜窪川間を通常の普通列車として運行。もちろん特別料金等は不要だ。基本的に毎日運行されているが、車両の検査等で運休となることもあるので、訪問の際はJR四国のホームページなどでチェックしておこう。

反対側の前面は、他車との併結を考慮してラッピングのみとなっている。
反対側の前面は、他車との併結を考慮してラッピングのみとなっている。

○四国と新幹線の意外な関係

ところで、なぜ四国で「新幹線」なのか?と疑問に思う方も多いことだろう。一見、四国と新幹線は関連性がないように思えるが、実は東海道新幹線の建設を指揮し、「新幹線の父」と呼ばれる元国鉄総裁・十河信二氏の生まれ故郷が愛媛県西条市なのだ。かつて西条市長も務めた氏の功績を讃え、伊予西条駅に隣接して「十河信二記念館」が設けられ、またその隣の「四国鉄道文化館」には0系新幹線の先頭車も保存されている。新幹線の開業から50年、四国に現れた団子鼻を氏が見たら、どんな感想を述べるのか、ちょっと聞きたかった気もする。

こちらは「海洋堂ホビートレイン」江川崎駅で「鉄道ホビートレイン」とすれ違う。
こちらは「海洋堂ホビートレイン」江川崎駅で「鉄道ホビートレイン」とすれ違う。

「鉄道ホビートレイン」が走る予土線には、この他にも「しまんトロッコ」「海洋堂ホビートレイン」の観光列車が運転されている。「予土線3兄弟」と名付けられたこの3列車は、どれも遊び心が満載だ。新緑の季節、山深い緑の中を四万十川に沿って、あなたも個性豊かな車両に揺られてみてはいかが?

鉄道ライター

大阪府生まれ。京都大学大学院都市交通政策技術者。鉄道雑誌やwebメディアでの執筆を中心に、テレビやトークショーの出演・監修、グッズ制作やイベント企画、都市交通政策のアドバイザーなど幅広く活躍する。乗り鉄・撮り鉄・収集鉄・呑み鉄。好きなものは103系、キハ30、北千住駅の発車メロディ。トランペット吹き。著書に「関西人はなぜ阪急を別格だと思うのか」「街まで変える 鉄道のデザイン」「そうだったのか!Osaka Metro」「国鉄・私鉄・JR 廃止駅の不思議と謎」(共著)など。

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