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またまた定食業態が動き出した。

池田恵里フードジャーナリスト
(写真:アフロ)

定食業態に オリジンダイニング ゆめあん食堂が参入

昔はよく定食屋を外から眺めていた。ちょっとふらりと寄ってみたいと思いつつ、「男性に混じって・・・」と躊躇し、うろうろしながら最終、素通りしてしまうものだった。しかし、この10年で定食屋も様変わりし、随分、入りやすくなった。その先駆けが大戸屋であり、女性顧客にも利用してもらえる店造り、商品を提供したことから、一気にチェーン化したのである。その後、外食企業が雨後の筍のように参入し、瞬く間に減少した。現在、残ったのは大手では3社。大戸屋、やよい軒、そしてまいどおおきに食堂である。3社合計すると国内で約1100店舗となる。

そして今、「定食業態が活況」と話題になっている。すかいらーく「ゆめあん食堂」、そして中食ではオリジン弁当が「オリジンダイニング」として参入したからだ。

定食屋の難しさ、他の業態との比較

さて定食屋の難しい所以

・アルコール比率が少ない。

・あくまで日常食である。

・客層は、ファミリーレストランのように家族連れは少なく、一人来店も多い。

・価格は、ファミリーレストランより低価格、つまり600円から800円、天井としては1000円まででないと難しい。

ざっとあげただけでも、外食のなかでいかに微妙な立ち位置であることがわかる。

定食屋各社の違い、それは券売機のあるなし

次に定食屋業態内での違いの一つとして、券売機のあるなしがあげられる。

券売機のあるなしで変わるのか、と疑問を持つ方もおられるであろう。

ということで、まず今の大手チェーン定食企業を見ると、

大戸屋→最後にレジ勘定

やよい軒→券売機

まいどおおきに→レジ勘定

さて券売機がある場合、人件費が削減されることは、容易に想像がつく。その上、券売機でお客様がプッシュした瞬間、調理場に注文内容が伝達され、席につく前から調理が始まっているため、提供時間が短く顧客は思ってもらえる。その一方で難点もあり、券売機では追加注文がされにくいとも言われる。顧客が券売機の前に立ち、お金を入れ、これで終了となってしまいかねないのだ。

「あっ、あれも注文すれば良かった・・・」と思っても、ついつい面倒となり、一端、席につくと、もう一度、券売機に行くことをやめる顧客も多いのだ。価格帯は、他の業態(居酒屋 FR)と比較すると、600円から800円、先ほども述べた1000円以下と狭いこともあり、このちょっとしたことが意外に大きく影響する。

まいどおおきに食堂では、商品がずらりと陳列され、それを顧客自らが商品をとる。最終、レジ勘定となる。そのため、追加注文は通常の外食のように問題ない。しかし提供が作り置きとなるため、提供後のロスが発生する。

ということで、定食屋業態は、外食のなかでもなかなか利益構造を生み出すのは難しいとされる。

さて今回、新しく参入したすかいらーくが手掛ける「ゆめあん食堂」そしてオリジン弁当が手掛ける「オリジンダイニング」に来店。

ゆめあん食堂は、大戸屋と同じ、最後にレジ勘定。そしてオリジン弁当は券売機となっている。

参入組 「ゆめあん食堂」 「オリジンダイニング」

ゆめあん食堂」は、調布の駅の近くにある。

ゆめあん食堂 お惣菜定食 830円(税込)を麺に替えてもらい1010円
ゆめあん食堂 お惣菜定食 830円(税込)を麺に替えてもらい1010円

メニュー数も豊富で、以前、すかいらーくの「ひばりや食堂」を見学した時の印象は、男性顧客の多い従来の定食屋で、今回のゆめあん食堂は、随分、店舗内の雰囲気も女性客が入りやすいようになっている。実際、女性グループも多く、一人来店も見受けられる。うどん・蕎麦をだしており、価格は480円から1080円までとなっている。客単価830円。

オリジンダイニング生姜焼き定食650円
オリジンダイニング生姜焼き定食650円

オリジンダイニング」幡ヶ谷店は、駅近くにある。

券売機を設置。昼間来店すると、券売機の前で多くの人が行列をなしている。女性、男性、いずれも多く、一人での来店も多い。おこさまセット350円から牛タン定食1080円までとなっており、客単価780円。今、オリジン弁当は、既存店をイートインも可能なキッチンオリジンに替える一方、現在、オリジンダイニングを3店舗展開している。

今後、日常食とはいえ、独自商品が生み出せるか

ということで、大手3社、そして新規参入組の店舗内を見ると、いずれも温かみのある空間を作っている。券売機のあるなしなど違いはあれ、価格もほぼほぼ同じであり、つまるところ最終の差別化は、やはり商品となってくる。とはいえ、定食屋で提供される商品は日常食であり、ベーシック商品でないと売れない。きわめて開発は難しいことを重々承知の上、いずれの商品も抜かりなく一定水準以上のものを提供し続け、改善し、と同時に独自の商品を作れるかにかかってくると思う。独自商品とは、非日常の商品ではなく、「他社にはないけれど、味が想像でき、きらりと光る商品」と思っている。これが一つでもあれば、定食屋はベーシックであるため、反ってより他の業態より明確にその商品の独自性が顧客に伝わりやすいのではないか。

フードジャーナリスト

神戸女学院大学音楽学部ピアノ科卒、同研究科修了。その後、演奏活動,並びに神戸女学院大学講師として10年間指導。料理コンクールに多数、入選・特選し、それを機に31歳の時、社会人1年生として、フリーで料理界に入る。スタート当初は社会経験がなかったこと、素人だったこともあり、なかなか仕事に繋がらなかった。その後、ようやく大手惣菜チェーン、スーパー、ファミリーレストランなどの商品開発を手掛け、現在、食品業界で各社、顧問契約を交わしている。執筆は、中食・外食専門雑誌の連載など多数。業界を超え、あらゆる角度から、足での情報、現場を知ることに心がけている。フードサービス学会、商品開発・管理学会会員

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