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20代「親が作ってくれた料理」NO1とは・・・ 

池田恵里フードジャーナリスト
NO1の料理は、男女いずれも同じ。(写真:アフロ)

親が作ってくれた料理の変化、世代別の違い、そして20代は

20代の食生活を見ていくうちに、今の食生活の元となる「親が作ってくれた料理」、いわゆる「おふくろの味」もポイントとなると考え、調べてみることにした。

ちなみに

自分の料理レパートリーのうち、男性の77%が子供時代に知った料理であり、女性は成長とともに自らレパートリーを増やしていくが、それでも55.6%は子供時代に知った料理だ。

出典:日本経済新聞社・産業地域研究所

このように子供時代の食事は後々の食生活に影響があり、加えていうと、男性は「親が作ってくれた料理」は、大人になっても残りやすい。

さて今回は、参考資料として「子供時代と現在の食生活」日本経済新聞出版社のデーターを中心に話を進めたい。

20代、親が作ってくれた料理

20代の男女に「親が作ってくれた料理」つまり「おふくろの味」と言える断トツ1位だったのが、男女ともに「唐揚」だった。

アンケート人数は123名と少ないため、「唐揚」と答えた20代を構成比率で出してみたところ、男性14%、女性11%となった。

ちょうど彼らの母親になる年代、50代、60代が「子供達によく作った料理」と見事に合致している。とはいえ不思議なことに、この50代の母たちが子供の時代に「親に作ってもらった料理」のNO1なのが「肉じゃが」であり、子供に作る料理が「唐揚」に変わっている。容易に推測できる理由として、女性が働きに出るようになり、女性がレパートリーを増やしていくうちに「下味をつけて揚げるだけ」が簡易な調理として唐揚が食卓に上り、その結果、20代の「親がよく作ってくれた料理」、「おふくろの味」が唐揚になったのであろう。

さて20代の「親が作ってくれた料理」のNO1となった唐揚の特徴を見ると、言葉は悪いですが、どこか手を抜いているようにも・・・。

・唐揚は、めんつゆに砂糖を入れて下味にしていた。

・唐揚は、焼肉のたれを下味にしていた。

と言ったことが見受けられたからだ。

20代の「親が作ってくれた料理」は、つまり市販のものにちょっこっと違う調味料をいれて、揚げて、食卓に上がっている。

年齢からみる親が作ってくれた料理、そこに「家族」が薄れていくのが・・・

30代になると、男女ともに「親が作ってくれた料理」NO1は、カレーライスが浮上、2位に唐揚となる。

40代では家族で囲む鍋の「すき焼き」がNO1となり、そして50代では「肉じゃが」となる。

これらの変遷を見てみると、30代から50代の人々の「親が作ってくれた料理」は、作り量を多くすることで美味しく食べられ、「家族」という言葉がキーワードとして浮かび上がり、年代が若くなるうちに次第に「家族」という言葉を連想させる料理から離れていくのが見て取れる。

お母さんの味がスーパーが代役となる

20代にとって「親が作ってくれた料理」のダントツNO1は唐揚であったものの、その一方で唐揚は、スーパー、コンビニ、弁当専門店という中食にとって代われ、事実、どの売り場にもある。既に定番中のド定番であり、なかでもスーパーは、店舗内で揚げるだけでパートさんにも均一に作れる調理であり、昔から人気商品であった。スーパーでの唐揚は、売れて当たり前とも言われている。現状、ますます唐揚の競争は激しく、それもあって、最近では、各社、味付けのバリエーション化が進んでいる。昔は、大きく2種類の唐揚、つまり醤油味とにんにく味が陳列されていた。最近では、一目で他社とは違うような明太子、紅生姜などの赤い色目の衣にすることで違いがはっきりわかるように打ち出している。そして下味にも工夫が施され、野菜の出汁に漬けこみ、健康を打ち出し、差別化しにくいとされる唐揚に何とか付加価値をつけているところもある。

ではコンビニは・・・からあげクン、今年で30周年

コンビニでは、皆さまもご存じのローソンの「からあげクン」は、今年で30周年を迎え、年間売り上げ320億円を誇り、今やローソンの顔にもなっている商品である。

ローソン、ニュースリリース

日経トレンデイ

以前、「からあげクン」の女性の開発の方にお話を伺ったことがあるが、何種類もの唐揚を食べ歩き、日々、唐揚三昧だったとか・・・。

中食ではスーパー、そして外食では居酒屋、相関関係の強いのは意外に中食ではごはん

コンビニはスーパーにとって手ごわい競合相手ではあるが、現状、唐揚の最も購入されるのは、中食ではスーパー、次にコンビニとなる。

とある唐揚を製造しているメーカーに聞くと、中食と内食における唐揚は、外食との違いとして、ご飯類、そしてお茶の組み合わせが多いという。日本経済新聞社の「子供時代と現在の食生活」にも家庭での唐揚は、ご飯との相関関係が強いとされ、つまみはさることながら、おかずとしても利用される。弁当専門店で最も売り上げが高いのが「唐揚弁当」というチェーンもあり、それからも納得できる。

唐揚は中食に移行

唐揚は一人で食べるシーンが多いとされ、今後も単身者が増えるなか、人気は継続されるであろう。しかし「親が作ってくれた料理」ではなく、これほどまでに簡易に時間関係なく購入できるようになった唐揚は、中食で購入されることがごく当たり前になっていく、というよりなっている。そこから「手作り」に戻ることは難しい。つまり「親が作ってくれた料理」は、これまでのように変遷し、未来の20代はまた違った回答になると思う。

8月27日改正

フードジャーナリスト

神戸女学院大学音楽学部ピアノ科卒、同研究科修了。その後、演奏活動,並びに神戸女学院大学講師として10年間指導。料理コンクールに多数、入選・特選し、それを機に31歳の時、社会人1年生として、フリーで料理界に入る。スタート当初は社会経験がなかったこと、素人だったこともあり、なかなか仕事に繋がらなかった。その後、ようやく大手惣菜チェーン、スーパー、ファミリーレストランなどの商品開発を手掛け、現在、食品業界で各社、顧問契約を交わしている。執筆は、中食・外食専門雑誌の連載など多数。業界を超え、あらゆる角度から、足での情報、現場を知ることに心がけている。フードサービス学会、商品開発・管理学会会員

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