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もしトランプ氏が撤退したら?

猪瀬聖ジャーナリスト/翻訳家
(写真:ロイター/アフロ)

もしドナルド・トランプ候補がいま、米大統領選挙から撤退したらどうなるか?こんな前代未聞の議論が米共和党幹部の間で真剣にかわされ始めていると、米主要メディアが相次いで報じている。

いまのところ、トランプ氏側から撤退をにおわせるサインは出ていないが、元々その言動が読めず、相次ぐ問題発言で共和党内でも四面楚歌のトランプ氏だけに、この先、何が起きても不思議ではないというわけだ。

ABCテレビは3日、共和党関係者の話として、「共和党幹部は、ふつうの選挙の年だったら起こり得ないシナリオが起こった場合に備え、その対処法を研究し始めている」と報道。さらに、「もしトランプ氏が選挙戦から降りた場合、どうやって代わりの候補者を立てればよいか、方策を探っている」と伝えた。

共和党全国委員会のルールには、党大会で正式に指名された候補者が何らかの理由で出馬を取りやめた場合の後任選びの手続きが、一通り書かれている。しかし、仮にルールが適用されるような事態になった場合、だれも経験したことがないだけに、混乱は必至だ。

また、ABCは、党内の専門家の話として、仮にトランプ氏が選挙戦から降りることになった場合、9月上旬ごろまでに降りないと、後任を選び直し、かつ11月の本選挙で勝てる態勢を整えるのは極めて難しくなると伝えている。

ロサンゼルス・タイムズ紙も同じく3日、「共和党の幹部らは、トランプ氏が選挙戦から突然撤退を表明した場合の善後策を話し合い始めている」と伝えた。

共和党のルールでは、党は党大会で選んだ候補者に対し、選挙戦からの撤退を強制できない。

味方であるはずの共和党の政治家を激しく批判し続け、数々の問題発言で有権者の支持率も民主党のヒラリー・クリントン候補に水をあけられているトランプ氏には、できれば自発的に選挙戦から撤退して欲しいというのが、共和党主流派の本音のようだ。

ジャーナリスト/翻訳家

米コロンビア大学大学院(ジャーナリズムスクール)修士課程修了。日本経済新聞生活情報部記者、同ロサンゼルス支局長などを経て、独立。食の安全、環境問題、マイノリティー、米国の社会問題、働き方を中心に幅広く取材。著書に『アメリカ人はなぜ肥るのか』(日経プレミアシリーズ、韓国語版も出版)、『仕事ができる人はなぜワインにはまるのか』(幻冬舎新書)など。

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