その日、タモリは涙を見せるのか? 「笑っていいとも!」最終回で、日本中が「タモロス」の予感

来る3月31日に、ついに「笑っていいとも!」が最終回を迎えます。

32年間続いた「お昼のタモリ」が、金輪際見られなくなるということで、そのことによる喪失感=「タモロス(タモリロス)」を多くの人が予感し、おびえ始めています。

昨年、人気連続テレビ小説「あまちゃん」が終わってしまったときの虚脱感=「あまロス」を覚えている人はなおさら。たいていは「あまりに怖いし、まだ現実感がないので、直視しないようにしている」というのが、正直なところでしょう。

「笑っていいとも!」は風景だった

「笑っていいとも!」は、番組の枠を超えた「風景」だったように思います。

たとえば、お昼の定食屋で。

営業先の知らない土地で、さっと適当に入った定食屋。勝手の分からない店内。普段とは違うアウェイ感。でもカウンターの上には小さなテレビが備え付けられ、そこに映し出されるタモリ(と、よく知らないゲスト)の顔を見ると、ほっと安心。メニューの中から「日替わり定食」を選び、スポーツ新聞を広げる。その後熱心に画面に見入ることはないし、音声が消されていたりもするので内容もわからない。けれど、なんとなく視界には入っている。

たとえば、旅先で。

日曜の朝。宿のチェックアウト時刻も迫り、それぞれが荷物の整理をしたり歯を磨いたり。そんなぼーっとゆるんだ時間に、誰かがテレビをつけると、そこには「笑っていいとも!増刊号」。「そっか、今日、日曜か~」なんてことをいいながら、見るともなく聞くともなく、それぞれの時間を粛々と過ごす。

「笑っていいとも!」は、熱心に見るわけではないけれど、小さいころからいつも「そこにある」原風景でした(なんとなくピンク色の印象があります)。

「タモロス」と「あまロス」の違い

「笑っていいとも!」が放送されなくなる4月1日以降、私たちが「あまロス」のときのように、突然やる気がなくなったり、動画サイトで過去の映像を掘り返したりするかというと、そうでもないはずです。

お昼の時間の他局番組もぐっとメジャーになりましたし(「ヒルナンデス!」「ひるおび!」)、そもそもテレビの視聴スタイルも変わりつつあります。

代わって始まる新番組についても、最初のうちは「やっぱり、いいとも!のほうがよかったよね」とか、やいのやいの言うかもしれませんが、次第に慣れていくはず。

小さいころから知っていた風景が変わってしまうのを静かに受け入れ、徐々に新しい世界に慣れていく。そういったことこそが、大げさかもしれませんが「年を重ねる」ということなのでは、と齢四十にして思う次第です。

「笑点」の司会が変わり、「ドラえもん」の声優が大山のぶ代じゃなくなり、そして「笑っていいとも!」が終わるのです。

「タモロス」は、ひと月後、半年後に訪れる

もちろんこれからも、タモリの元気な姿は他の番組で見続けることができます。それでも「笑っていいとも!」は、もう見ることはできません。それはもう受け入れるしかない事実。

即座に大変なダメージを受けるわけではない、けれど、ふとした瞬間に「あ、そういえば、もういないんだ」と思い出し、ひととき強い悲しみに襲われる。そういう意味では、「笑っていいとも!」を見られなくなることは、昔からよく知っている親しい人と、もう会えなくなる感覚に近いのかもしれません。

「タモロス」は、あなたが思っているよりも遅れて、じんわりと訪れるでしょう。

たとえばひと月後。ぼんやりと職場でサンドイッチを食べながら、ふと見上げた先のテレビにタモリが映ってない。あれ?と思う。その直後に。

たとえば今度の夏休み。高校野球中継の合間に、いつものクセでパパッと民放に切り替えると、知らない番組が放送されている。「ん?」と新聞のテレビ欄をチェックした、そのときに。

タモさんは最後まで涙を見せない!?

今月に入ってから、慌てて「笑っていいとも!」をきちんと見始めました。すると、他のバラエティ番組にはない唯一無二の空気感に、今さらながら気づかされます。

情報がそれほど詰め込まれていないから見やすい、生放送なのにダラダラした感じがない(CMに入るタイミングが絶妙)、1時間番組なので意外とたっぷり見応えがある、番組最後に行われる競技(いいともCUP)は相変わらずよく分からない(けど楽しい)などなど……。どれも、小さいころ、若いころには分からなかったことです(まるで、親のありがたみのように)。

最終回のゲストはビートたけし。夜の特番には吉永小百合が出演。豪華ゲストに加えて、過去の貴重な映像も披露されることでしょう。

きっとタモさんは最後までしめっぽい雰囲気にせず、淡々とマイペースに、楽しませようとしてくれるはずです(まるで、なんということもないかのように)。

となれば私たちは、先のことをあまりクヨクヨ考えず、目の前のお祭りをめいっぱい楽しむのがよさそうです。なんといってもそれこそが、タモさんが長い間示し続けてくれた「いいとも!スピリッツ」=「今日がダメでも、きっと明日は、いいともろー」なのですから。

(いおた・たつなり)《30万部突破「察しない男 説明しない女」シリーズ》東京大学教養学部卒。角川書店、博報堂、博報堂生活総合研究所を経て独立。「コミュニケーション心理」「社会変化と男女関係」「SNSと人づきあい」「ことばと伝え方」を主なテーマに執筆・講演。米国CCE,Inc.認定 GCDFキャリアカウンセラー。

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