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西島秀俊ショックとは、結局、何だったのか? 〜「裏切られた思い」の正体〜

五百田達成作家・心理カウンセラー

先月19日、俳優の西島秀俊(43)が結婚を発表しました。

西島秀俊といえば、人気アラフォー俳優の筆頭。その彼が結婚したということで、Twitterのタイムラインはアラフォー俳優好き女性の阿鼻叫喚で埋めつくされ、「今日はもう仕事なんてする気にならない…」と訴える人も続出。大変な話題になりました。

そのいっぽうで男性たちや、10代・20代の女性の反応はまったく違っていました。

「そんなに人気があるとは思っていなかった」

「っていうか、それ誰?」

「うっすら顔は分かるけど……」

一部の女性たちが大きなショックを受けているのに対し、ピンと来ない人も多かったのが、この「西島秀俊ショック」の特徴。

思い返せば昨年には、堤真一や堺雅人が結婚。そのたびにこうした「一部のオトナ女性が悲嘆に暮れる」という光景が繰り返されてきています。

がつがつしてない大人の男

まずアラフォー俳優ブームの背景には、近年の草食系男子ブームがあります。男性たちがガツガツした雰囲気を出さないのはもはやデフォルト(あからさまな男性は「キモイ」と即座に切られます)。ささいなことでは声を荒げることのない、優しくおだやかな男性に魅力を感じる。かといって、いざというときにリードしてくれないのは物足りない。そんな中、アラフォー俳優たちは年相応の落ち着きと、世代から想像される隠れ肉食感(=本当は女性に積極的なのでは?という幻想)のバランスがちょうどいいわけです。

私だけが知っているという特別感

また「特別感」も大事なキーワード。いわゆる若手のイケメンタレントに比べ、劇団出身も多いアラフォー俳優たちは知名度が低い場合も。だからこそ女性たちは「私だけはあの人の魅力に気づいてる」という優越感を抱くことができました。普通の女の子は、ジャニーズをはじめとするメジャーなタレントに夢中かもしれないけれど、私は違う。かといって、おじさん好きなわけではない……。そうした微妙な自意識を満たしてくれる存在こそ、アラフォー俳優たちだったのです。

「まさか、自分が結婚できると思ってたの?」

と、基本的なところは分かったとしても、どうしても解せないのが、彼らの結婚が与える実際のダメージについて。

当時、一部の口さがない男性はこう言ったものです。

「は? 自分が結婚できるとでも思ってたの?」

「芸能人の結婚なんて、あなたの毎日に、なんの関係もないでしょ?」

中高生のウブな男の子がアイドルの結婚に胸を痛めるならまだしも理解ができるけれど、いい大人の女性がどうしてそこまで真剣に悲しめるのか? まさか、本当に芸能人との結婚を夢見てたわけじゃないよね? 周囲のけげんな反応の根底には、いつもこの疑問がありました。

独身を貫く同志と思っていたのに……

実際に、西島秀俊の結婚を悲しむ独身女性たちの話を聞いていると、どうやら「彼は自分と結婚するはずだったのに」と本気で考えてはいなかった様子(当たり前ですが)。ではその悲しみはどこからやってくるのか。

彼女たちはむしろ、西島秀俊たちを「仲間」「独身を貫く同志」のように思っていたのではないでしょうか?

「結婚したくないわけじゃないけど、今は恋愛よりも楽しいことがあるし」

「私って好みがうるさいから、なかなか見合う人がいないんだよね」

何事にもこだわりが強く、ストイックに仕事に打ち込むあまり結婚が遅くなっていく彼らに、性別は違えどもシンパシーを抱いていた。それが、ある日突然裏切られる。

「えー、しないって言ってたじゃん……」という、抜け駆けされた、先を越された気持ちが強いのでしょう。

16歳年下の一般女性

相手が16歳年下の一般女性という事実も、ショックに拍車をかけました。彼の女性の好みのうるささは、ネットのニュースにもなっていてみんなの知るところ。なのに結局すごく年下の女性が選ばれた。中途半端な女性タレントとかであれば、検索し、こきおろして溜飲を下げることもできるけれど、一般女性ということで怒りをぶつける先もない。

なので、ただただ呆然とし、しかも自分自身でもなぜ呆然としているのか分からない……。これが、西島秀俊ショックの真相です。

向井理の結婚との違い

その二日後、今度は向井理が結婚を発表し、セットで語られることが多かったわけですが、彼はそうはいっても32歳。相手も、年上の女優・国仲涼子ということで、実はまったく意味合いの違うニュースでした(たまたま、タイミングが近かっただけです)。

結婚発表から約一月がたち、女性たちのショックも沈静化している様子。「佐々木蔵之介こそ最後の砦」などとも言われていますが、このように「アラフォー俳優結婚ショック」は、日本全体の晩婚化傾向に裏付けられた現象。

これからもたびたび、世間を賑わすのは間違いのないところです。

■参考記事

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作家・心理カウンセラー

著書累計120万部:「超雑談力」「不機嫌な妻 無関心な夫」「察しない男 説明しない女」「不機嫌な長男・長女 無責任な末っ子たち」「話し方で損する人 得する人」など。角川書店、博報堂を経て独立。コミュニケーション×心理を出発点に、「男女のコミュニケーション」「生まれ順性格分析」「伝え方とSNS」「恋愛・結婚・ジェンダー」などをテーマに執筆。米国CCE,Inc.認定 GCDFキャリアカウンセラー。

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