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LINE、「KS(既読スルー)」から「MH(未読放置)」へ。「あえてのんびり」派も登場。

五百田達成作家・心理カウンセラー

2011年にサービスを開始し、今や日常ではメールに代わって、なくてはならない存在にまでなったLINE。

この新しいメッセージツールの登場は、人々のコミュニケーションにも大きな影響を与え、「既読スルー」問題など、様々な議論を呼び起こしました。そして、最近は使い方にも新しいトレンドが。街場の最新事情を追います。

LINE世代は「返信」をしない!? 「KS(既読スルー)」でコミュニケーションが変わる

既読をつけずにLINEを見るアプリ

LINEの特徴であり、当初から賛否両論の対象となっているのが「既読」機能です。相手が自分の送ったメッセージを読んだかどうかがわかるこの機能は、相手の安否が分かるので便利であると共に、トラブルの元にもなりました。特に、「既読スルー(読んだのに返事をしない)」については未だに気にする派と気にしない派で溝があるようです。

最近では、既読をつけずにLINEを見るアプリまで登場。「あいつ、既読スルーしやがって」「見たなら、返事してよ!」と思われることを、とことん避けたいというわけです。

「既読スルー」から「未読放置」へ

そんな中、日常的にLINEを使う世代では「既読スルー(KS)」ではなく、既読をつけないまま放っておく「未読放置(MH)」が増えています。

「わーい!LINEが来た!!」と、楽しみにチェックするような牧歌的な時代は、完全に過去のもの。いまや、ちょっと目を離したすきに何十通、何百通と未読メッセージが溜まってしまう毎日の中で、いちいち見てられない。通知画面などでおおまかに内容を把握しておいて、実際のメッセージは返事をする余裕ができるまでは開封もしないわけです。

LINEは仕事には向かない?

また、中には積極的に放置するタイプもいます。

これは、既読がついてしまうと後から来た他の人からのメッセージによって大切なメッセージが流れてしまうから、あえて既読をつけないという意図です。

私自身、個人で仕事をしていますが、最近では知り合いからLINEで仕事の依頼が来ることもあります。

メールソフトやフェイスブックメッセージであれば、一度開いたメールを未読設定に戻したりフラグをつけたりして、「これは返信すべきもの」とフィルターすることができます。こうして、TODOリストというか、やらなければいけないタスクの一覧ができあがるというわけ。

余裕ができたときや朝一番に、これを一つ一つ返信していくのが、いかにも仕事を片付けているという感じがして好みなのですが、LINEで来た連絡は、いちどついた既読を未読に戻すことができないのでそうもいきません。

そのため、LINEで「大事そう」(雰囲気を察する力が求められます)な連絡が来た場合は、あえて「未読放置=MH」することで、返信すべきものとして残しておく、そんな使い方をしています。

で、いざ開けてみたら、他愛もないメッセージだったり、飲みの誘い(「いまから来れる?」→すでに手遅れ)だったりして、脱力することもしばしばです(笑)。

あえてテンポを落とす

LINEは常に相手と自分の会話の流れが把握でき、気軽にメッセージを送り合えるのが魅力です。しかし、気軽に送れる分、会話のテンポがハイペースで、せわしなくなりがち。簡単に感情を表現できる「スタンプ」も、会話のテンポを加速させる要因のひとつです。

しかし、テンポよくスタンプでリアクションし、「既読スルー」と思われる前に早く返さなくてはと思うあまり、返事がつい雑になってしまうこともしばしば。

学生達に聞くと、こうした流れの中で、最近では既読をつけても、あえて一歩立ち止まって返事の文面を打つシーンも増えているのだとか。

相手の返事をせかさない

たとえば、グループLINEにて、メンバーの一人が「ごめん、今日は風邪で休みます」と連絡してきた場合。

一刻も早く返事をしようと、「了解、お大事にね」と一言送るのも悪くないのですが、どうしても淡泊で冷たい印象に。また、そうやって早く返信をしたことで相手も「早く返事をしなくては」とストレスを感じてしまう場合もあるでしょう。

そこで、既読をつけてしまってもあわてることなく、少し立ち止まって一呼吸置いてから「大丈夫? 最近忙しそうだったもんね。ゆっくり休んでください。お大事に」などと一言添えた丁寧な返信をしてみる。それだけで相手に与える印象が変わります。

そうすれば、相手も落ち着いてストレスを感じることなくゆっくり返信を打つことが出来るでしょう(風邪の身にとっては、そのほうがありがたいはず)。

また、LINEによくある、早とちり・読み間違いによる、誤解・すれ違いといったトラブルも減らすことができます。

「新・LINE疲れ」が蔓延中。「グループ機能」が疎外感を助長

LINEのスローダウン化

既読がついても気にせずゆっくりと返事を打つ。未読で放っておかれてもイライラしない(「すぐに見てくれるもの」という思い込みを解く)。

こうした習慣が徐々に広がり、LINEは以前ほど、即時的なコミュニケーションツールではなくなっている実感です。

言ってみれば「遅くなった」、というか、これまでほどテンポが速くなくなった。パートナーや家族など、限られた相手のメッセージはすぐに見るけれど、それ以外はのんびりと放置する傾向が。

日常に浸透するにつれ、行き交うメッセージが増えるにつれ、LINEのあり方も徐々に変わってきているということでしょう。

使われるのではなく使う

いくら流行っているからといって、アプリの仕様に振り回されて、人間関係がぎくしゃくするのは本末転倒というもの。

便利なものほど、気づかないうちに私たちの生活に大きな影響を与えてしまいます。機械もアプリも、使われるのではなく、使うことを心がけたいものです。

■参考記事

いつのまにか誘いが減り、結果的にひとりぼっちになってしまう、ほんのささいな会話のクセ。

「~可能ですか」「~していただきたいです」は大間違い。【やってはいけない頼み方】

初対面の「気まずいタイム」に震える→「見たことそのまま作戦」が効果的。 

作家・心理カウンセラー

著書累計120万部:「超雑談力」「不機嫌な妻 無関心な夫」「察しない男 説明しない女」「不機嫌な長男・長女 無責任な末っ子たち」「話し方で損する人 得する人」など。角川書店、博報堂を経て独立。コミュニケーション×心理を出発点に、「男女のコミュニケーション」「生まれ順性格分析」「伝え方とSNS」「恋愛・結婚・ジェンダー」などをテーマに執筆。米国CCE,Inc.認定 GCDFキャリアカウンセラー。

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