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送った画像が自動的に「消える」。LINEのライバル=スナップチャット、人気の理由。

五百田達成作家・心理カウンセラー
Snapchatのロゴ

卒業式や異動の発表のシーズン。4月からの新しい人間関係に期待している人も多いでしょう。「これを機にケータイを買い換えよう」「そろそろLINEでも始めてみようか」と、新しいコミュニケーションツールにチャレンジするには最適な季節です。

日本では現在、LINEの勢いが圧倒的ですが、追いつけ追い越せとばかりにさまざまなコミュニケーションアプリが開発・リリースされています。スナップチャット(Snapchat)は、その最有力のひとつ。

アリババ、スナップチャットへの出資を検討 - 出資額2億ドル、評価額は150億ドルにも

IT業界の風雲児

Snapchatは、海外で爆発的ヒットを遂げているコミュニケーションチャットアプリ。2011年9月にスタンフォード大学出身のエバン・スピーゲルとボビー・マーフィーにより共同開発され、その後米国を中心にユーザーを増やし続け、今では全世界で1億人を超えるユーザーがいると言われています。

「あのフェイスブックから30億ドルの買収を提示されて拒否した」とか、つい先日は「中国資本から2億ドルの出資を受ける」など、その飛ぶ鳥を落とすような勢いが注目されています。

画像が強制的に消去される

そもそもSnapchatは、「snap=写真」「chat=おしゃべり」と名付けられているように、友達同士で画像だけを送り合うためのおしゃべりアプリです。

と、ここまではよくあるアプリのように思えますが、その最大の特徴は、「送った画像が最大10秒で強制的に削除される」ということ。

「誰かと共有したい、ちょっとしたおもしろ写真が撮れた。だけどわざわざLINEで送ったり、FacebookやTwitterで拡散するほどのものではない。でも、とにかく見せたい」

そう思ったことはないでしょうか?

送られた相手は保存もできない

「いまこの瞬間だけ、人と画像を共有したい」時に活躍するツール、それが、Snapchat。送った画像は開いたあと最大10秒で自動的に削除されます。保存(スクリーンショット)もしにくい仕様になっていて、しようとすると送り主に通知が行きます。

このように「おしゃべり感覚で写真をやり取りする」「後に証拠が残らないので、誰かに広められる心配もない」ということで、1日に2億枚以上もの写真や写真につけられたテキストがユーザーの間で飛び交っているとのこと。

若い女性に人気

私の知人で、実際にSnapchatを利用しているのは、大学2年生女子です。

「面白いネタ写真が撮れたから誰かに送りたい」「髪を切ってイメチェンしたから早く誰かに見せたい」など、写真を送りたいという欲求がありながらも、その保存や共有に重きを置いていない、そんなときに最適だと彼女は語ります。

確かに、特定の人に「見てもらう(保存してほしくない)」ことが目的ならばSnapchatで十分でしょう。

「履歴が残らない」という魅力

これまでのチャットツールは、送ったメッセージの履歴が残ることがむしろ魅力でした。「あの件は、以前送ったメッセージに書いてあったはず」と、相手との会話の過去をさかのぼることができたのです。

そんな中、Snapchatの「履歴が消える」という機能は、今までのコミュニケーションツールには無かった新しい発想。非常に目を引きます。

これこそ本当の「チャット(おしゃべり)」

私はこの機能のおかげで、チャットが本当の「おしゃべり(チャット)」に近づいたと、感じています。

実際のおしゃべりで、誰が何を言ったかなんて、厳密には覚えていません。酔ったときならなおさらで、内容を誰かが逐一録音しているわけでもない。だからこそ、適当に言いたい放題言うことができる。それが仲間との気の置けない会話の醍醐味とも言えます。

デジタル時代に息苦しさを感じる人が増加

ところが普通のチャットツール(LINEなど)であれば、他愛のないおしゃべりとは言いつつ、履歴がしっかりと残ります。それが、息苦しいと感じる人も増えてきているのです。

カップル間でも「あのときこう言った」「言ってないよ、そんなこと」「だって証拠に…」と履歴をさかのぼられ、トラブルに発展するシーンは多々あります。

ところが、Snapchatであれば「言ったっけ?」「言ったよ」「えー、言ったかなあ?」と、本当の会話に近い「あいまいさ」が担保されるわけです。

浮気や不倫に使われる?

いっぽうで、履歴が残らない、証拠が残らないとなれば、後ろ暗い目的に使おうとするのが、人の常。

パートナーには言いづらい相手とのやり取りや、性的な目的で使われることを助長している、と、米国では何度か問題視されています。

ちなみに以前、CIAの長官が不倫相手とのやり取りに使っていたのが「2人だけのGmailのアカウントを共有し、メッセージは送信せず、下書きとして保存」という方法だったことが、話題になりました。

なんでも履歴が残ってしまう、サーバーに保存されてしまうデジタル時代に、多くの人が「消える」コミュニケーションに心を砕いているということです。

リスク管理で炎上を防ぐ

TwitterやFacebookに不適切な写真(マナー違反、著作権違反など)を載せて問題になる事件は、毎日のように起きています。リベンジポルノなどの被害も絶えません。

Snapchatであれば、送った画像が消えるため拡散の危険性は低くなります。そういう意味では、リスク管理のためにSnapchatを使う人も増えてきそう。

誰しも、日々の生活のなかで「誰かと共有したいもの」「誰かに見せたいもの」が出てくるでしょう。それがどんな些細なものであったとしても、むしろ些細であればあるほど、Snapchatが、その欲求をを簡単に、安全に満たしてくれるのです。

メモ書きの復活?

「メッセージが消えるアプリ」と聞くと、きっと誰でも、それってなんの意味があるの?と思うでしょうが、よくよく考えると、その裏には深い人間心理が隠されていたというわけです。

紙に鉛筆でメモ書き、終わったらきちんと捨てる(燃やす)という、まるで古い映画の逢い引きのシーンのような方法が、日常のコミュニケーションシーンに復活する日も近いかもしれません。

■参考記事

Instagramで「のろけ投稿」をするのはなぜ?(Twitterではしないのに)

「自分でやっちゃう」主義は、出世が遅い。【仕事の”芸風”の切り替え方】

「あとで10分ほどいい?」は、仕事ができない人。【やってはいけないアポイント術】

作家・心理カウンセラー

著書累計120万部:「超雑談力」「不機嫌な妻 無関心な夫」「察しない男 説明しない女」「不機嫌な長男・長女 無責任な末っ子たち」「話し方で損する人 得する人」など。角川書店、博報堂を経て独立。コミュニケーション×心理を出発点に、「男女のコミュニケーション」「生まれ順性格分析」「伝え方とSNS」「恋愛・結婚・ジェンダー」などをテーマに執筆。米国CCE,Inc.認定 GCDFキャリアカウンセラー。

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