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なぜ男は手ぶらを好むのか? なぜ女はバッグを持ちたがるのか?

五百田達成作家・心理カウンセラー
(写真:アフロ)

夏も本番を迎え、Tシャツに短パンといった軽装で出かける機会も増えてきました。この時期の男たちが、共通して抱える永遠の悩み、それが「カバンをどうするか」ということ。

試しにカバンをやめてみた

いきなり私自身の話をするなら、最近ついに、カバンとお別れしました。もともと手ぶら派ではあったのですが、この季節はとくにカバンを持たずに歩きたい。そこで、カバンと改めて本気で向き合った結果、手ぶらを突き詰めることにしたのです。

手始めに、財布を廃止しました。厳密に言うと、クレジットカードぐらいの大きさの小銭入れを導入。ここに最小限度のカード類を入れます。さらに、なるべく小銭は持ち歩かないようにして1センチ以内の薄さをキープ。そうすれば、スマホと財布のふたつだけを、それぞれパンツの両ポケットに突っ込めば、どこへでも行けます(ちなみにチャージされたスイカをスマホケースに内蔵しているので、たいていの会計はスイカで事足ります)。

以前使っていた財布はそうは言っても分厚くて、ポケットに突っ込みにくく、そのためだけにわざわざカバンを用意しなくてはいけなかった。大ぶりの財布から解放されたことで、カバンからも解放され、大変な自由を手にしたわけですが、その高揚感たるや想像以上で、身も心も軽くなりました。

……と、ここまで読んで、男性のみなさんは「そうそう!」と頷いてくれていることと思います。確かに財布とケータイだけならポケットに突っ込めばいい。カバンなんてできれば持ちたくない。これが男たちが(なぜか大きな声では言えないけれど)内心思っている本音です。

「信じられない」と驚く女性

いっぽうで、女性のみなさんが「信じられない!」と驚いていることも、分かっています。

実際、多くの女性は、私が待ち合わせの場所に手ぶらで現れるとびっくりします。「いや、これで事足りるんだよ」と説明しても、いぶかしんだ表情を崩しません。曰く「カバンを持たないで外に出るなんて、靴を履かないで出かけるようなもの。ありえない!」とのこと。

そう、確かに、女性は、いついかなるときもなにかしらのバッグを持っていて、手ぶらで歩いている人はあまり見たことがありません。もちろんそこにはもちろん複雑で正当な理由があります。

というわけで、手ぶらでいたがる男と、バッグを持ちたがる女。実利的な面、心理的な面、両方から大まじめに分析してみたいと思います。

男のカバンは正解がない 女のバッグはファッション

男性が手ぶらを好む理由の一つに、「ちょうどいいカバンがないから」というものがあります。

スーツスタイルなら、まだいいのです。スーツ用のかっちりとしたカバンに、ケータイと財布と、書類とハンカチ、充電器などを入れればファッションとしての格好もつきます。むしろスーツで手ぶらだと心許ない気持ちになるはず。

さらに言えば、カジュアルでも、冬ならまだいい。コートを着たり、ダウンを着たり。それに合わせてリュックをしょってもいいし、大ぶりな手提げカバンを持っても、見た目のバランスはいい。でも、これが春夏の軽装となると、どんなカバンを持ってもおおげさになってしまう。そもそもこの季節、リュックは背中が暑い。

というわけで、問題は夏のカジュアル、なのです。

ひとつの選択肢は、帆布などのトートバッグ。これであれば、便利だしカジュアルファッションにも合いやすい。

セカンドバッグは避けたいが……

多くの男性が一度は検討する(が、見送ることも多い)のが、手に持つタイプのセカンドバッグです。これは実に便利で、実際必要なモノを収めようとしたらこれぐらいのサイズで十分。ですが、これはなんとなくイメージが悪い。おじさん臭いというか、怖い人っぽいというか。

で、結局、最近多いのは、体に斜めに巻きつけるメッセンジャーバック。大昔流行したウェストポーチも発想は同じ。最小限度のモノが入るし、トートバッグやセカンドバッグと違って、そう、なんといっても両手が空きます。

と考えていくと、なるべくなら手ぶらがいいわけであって、男がカバンを持つモチベーションは実に消極的。「しかたなく」という不承不承さとセットなのです。

手ぶらはすっぴんと同じ!?

逆に、女性が手ぶらで出歩かない理由として、「バッグがないとコーディネートが完成しないから」ということが挙げられるでしょう。

ファッション誌に載っているコーディネート写真には、必ずバッグが添えられています。全体のバランスをとったり、「差し色」としての役割を果たしたりと、女性ファッションにおけるバッグの役割は非常に大きい。色・形・大きさなど様々なバリエーションを、その日の予定や服装に合わせて使い分けています。

つまりバッグ=ファッションなのであって、「バッグを持たずに出かけるのは、靴を履いてない、化粧をしてない、服を着ていないのと同じ」というわけです。

さらには、女性は男性に比べて荷物が多い。メイク道具や身仕度に関わるいろいろを入れようと思ったら、とうていメッセンジャーバッグやウェストポーチでは足りません。

手ぶらでいたい男の本能

つぎに心理面を検証してみましょう。

さきほど、男のカバン問題についてあれこれ言いましたが、そういう事情抜きで、男はとにかく手ぶらが好き、ということも言えます。

というのも、男はいつでも両手を空けていたい。手を自由に保っておかないと、いつ敵と戦う場面に遭遇するか分からない。そうした闘争本能が、男を手ぶらへと駆り立てます。何かを手に持たなくてはいけない状況が煩わしい、無駄なものは持たずに軽やかでいたい。

男性から女性への性転換を済ませたあるタレントがインタビューで、「私は手ぶらが好き」と話していたことがあります。これなども、男には手ぶら本能があるのではないかと思わせるエピソードです。

一方、多くの女性は「バッグを手に持っていないと落ち着かない」と語ります。職場からランチに出かけるときなども、絶対に財布しか使わないと分かっていても、ついバッグごと持ち歩きたくなる。

「使わないかもしれないけど、念のため」に持っておきたいものがたくさんあって、結果として一つにまとまらないので小さいバッグを持つことになる。それが女たちならではの心理です。

キャバラク嬢がバッグをねだる理由

男は自由を阻害するものとして忌み嫌い、女は安心を担保してくれるものとして大事にする。

と、こう考えてみると、結局、カバン・バッグというのは、家庭や結婚のメタファーなのかもしれません。男は縛られずに自由でいたいし、女はたくさんのものを詰め込む。

ちなみにキャバクラのお姉さんが男に貢がせるものの定番と言えばバッグですが、あれなども、まさに、高価な値段といい、見せびらかすためのブランド性といい、男と女の関係をよく表しているエピソードです(この場合は、結婚や家庭よりも、換金可能な愛、という別の意味も付加されてきますが)。

男のポケットにはロマンが詰まっている

そのようにして、カバンを毛嫌いする男たちですが、ポケットのことは大好きです。

スーツの内ポケット、デニムの尻ポケット、カーゴパンツのポケット……。ちょっとした荷物を収納できるのに、カバンを持つ煩わしさから解放してくれるなんて、実にすばらしい。男たちはポケットとはとても仲良しなのです。

ファッションにおいても、ポケットのクールな機能性に男たちはついつい魅了され、その究極形が「軍服」であり(まさに男たちの戦いのアイテム)であり、さらにその上を行くのが「釣り用のベスト」(これもある意味戦いのアイテム)でしょう。

おじさんたちが、ふだんから釣り用のベストを愛好するのは、少年時代、学校の帰り道に小石やら毛虫やらをズボンのポケットに収集してはお母さんたちを呆れさせていたノスタルジーとつながっています。つまり、男のポケットにはロマンが詰まっているのです。

逆に、女性の服のポケットは装飾であることが多く、飾りじゃないとしても洋服のラインを崩してしまうため、なんでもかんでも入れるわけにはいきません。

そのことも、ちょっとしたバッグが必需品になる理由。幼稚園の女の子は、すぐに自分のバッグを持ちたがりますが、彼女たちの幼い目から見ても、きちんとした自分のバッグを持つことこそが、大人の女性の象徴なのでしょう。

カバン=結婚の象徴

さて、これまで長々と考察してきましたが、結論は下記のようにまとめられます。

結論1:男にとってカバンはツール。仕事で使わない限りはなるべく持ちたくない。女にとってバッグはファッション。多種多様にそろえたいし、バッグを持たないのは服を着てないのと同じ。

結論2:男にとってカバンは自由を束縛するわずらわしいもの。常に解放された状態でいたいので、手ぶら(あるいはポケット)を好む。だが、いい大人がそれを言うと恥ずかしい。女にとってバッグは安心を担保してくれるもの。夢や安定などいろいろなモノを詰め込んで大事にする。そう、つまり、カバンは家庭の象徴。

いかがでしょう? 男と女の間に横たわる溝は、徐々に埋まってきているようでいて存外深い。そのことが、こんなところからも見て取れます。

(五百田 達成=「察しない男 説明しない女」著者 作家・心理カウンセラー)

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作家・心理カウンセラー

著書累計120万部:「超雑談力」「不機嫌な妻 無関心な夫」「察しない男 説明しない女」「不機嫌な長男・長女 無責任な末っ子たち」「話し方で損する人 得する人」など。角川書店、博報堂を経て独立。コミュニケーション×心理を出発点に、「男女のコミュニケーション」「生まれ順性格分析」「伝え方とSNS」「恋愛・結婚・ジェンダー」などをテーマに執筆。米国CCE,Inc.認定 GCDFキャリアカウンセラー。

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