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ポール・マッカートニーとルノア・ダークシルクに見るライブ写真撮影可能問題

いしたにまさきブロガー/ライター/アドバイザー
ルノア・ダークシルクの舞台写真

先週、私のソーシャルメディアで、一層目立った話題がポール・マッカートニーのライブのことでした。11年ぶりのライブですし、ポール自身も71歳だったりとかで、たしかに私も行きたかったライブでした。ただ、このポール・マッカートニーのライブ、普段の大物海外アーティストのライブとは、違う盛り上がりを見せている部分がありまして、それはなんとライブ中の撮影が可能になっていたため、みんな写真付きで投稿しているのです。

この写真撮影解禁の動きは、実は各所であったのですが、ポール・マッカートニーのような目立つ人が解禁としたのは、ひとつエポックになることだと思います。もちろん撮影解禁といっても、三脚持ち込んだりとか、プロ機材は禁止で、あくまでもスマホぐらいならいいよという感じのものです。

ただ、ポール・マッカートニーのライブでも、ライブ日程が後半になるにつれて、写真解禁をライブ前から知られていたせいでしょうか。写真撮影を巡ってのトラブルも、すでに出ているようです。たしかに、目の前で、ライブ間ずっとスマホをステージに向けて、撮影しまくっていたら、ちっともライブに集中できませんからね。

そして、私自身は、そのポール・マッカートニーのライブとまさに同じ日に「ルノア・ダークシルク」という公演を見に行っていました。このルノアは、ある意味ポール・マッカートニーとは正反対で「1m先のステージ」というキャッチフレーズがついているほどに、観客とステージ&演者が近いのが特徴です。

ルノア・ダークシルクのカーテンコール
ルノア・ダークシルクのカーテンコール

この距離感がわかるでしょうか。ホントに近いんです。行ったことがある人にしか使わらないかもしれませんが、相撲でいうとまさに砂かぶりの席。パフォーマーの息遣いや汗まで感じ取れる距離なんです。

で、なぜそのルノアの公演の写真を私が撮影できているのでしょうか?。それには理由があって、このルノアの公演、間に一度休憩が入るのですが、その休憩中にこんなアナウンスがあったのです。

「写真撮影はダメよ。でも、カーテンコールだけは撮影してもいいわ」

これは、うまいやり方だと思いました。つまり、ライブ中・公演中、どこでも撮影解禁にするのではなく、撮影可能な時間帯を制限する。しかも、カーテンコールであれば、基本演目はすべて終了しているので、周囲の人達にも、それほど迷惑がかかるということもないでしょう。

そして、すばらしい公演の記憶を長く留めるためには、自分で撮った写真が1枚でもあるとないとでは大違いです。もちろん、ソーシャルメディアなどで、友人・知人に、公演のすごさを伝えるためにも、写真が1枚あると、説得力が段違いに違うのです。

ルノア・ダークシルクのカーテンコールの最後
ルノア・ダークシルクのカーテンコールの最後

ファンのために写真を解禁するのか、ファンを獲得するために写真を解禁するのか、そういう主催者の意図というのは、得てして見透かされるものですが、まずはわざわざ公演に来てくれた人たちに、それも長くファンでいてくれるために、写真撮影をライブ中の演出の一部として、活用する方法は、まだまだ可能性が残されていそうです。

大昔の話になりますが、Matthew Herbert Big Bandというライブでは、ライブ中の1曲だけ、ステージの照明がほとんど消え、観客のフラッシュを照明効果として使うなんてこともありました。「みんなフラッシュ付きの携帯持ってるだろ、それを使ってよ」という感じでした。

この演出があったおかげで(もちろん演奏もすばらしかったわけですが)、私はこのMatthew Herbert Big Bandのステージの話を今でも、自分が経験したベストライブのひとつとして、いろんな人たちに話し続けています。

※ダークシルクとシルク・ドゥ・ソレイユは全く別物ということで修正しております。しかし、これ勘違いしている人、他にもいそうです。申し訳ない。

ブロガー/ライター/アドバイザー

Webサービス・ネット・ガジェットを紹介する考古学的レビューブログ『みたいもん!』管理人。2002年メディア芸術祭特別賞、2007年第5回Webクリエーションアウォード・Web人ユニット賞受賞。「ネットで成功しているのは〈やめない人たち〉である(技術評論社)」「あたらしい書斎(インプレス)」など著書多数。2011年9月より内閣広報室・IT広報アドバイザーに就任。ひらくPCバッグ・かわるビジネスリュックなど、ネット発のカバンプロデュースも好調。 #カゲサポ

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